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菊池雄星さん「夢が人生を決める」|僕らの時代 Vol.8

若き人びとよ。
つくりあげられた今までの世紀のなかで、あなたがたは育ってきたけれど、
こんどはあなたとあなたがたのこどものための世紀を、
みずからの手でつくりあげなければならない時がきているのである。

(出典:『続・道をひらく』PHP研究所)」

自分らしい価値観をたいせつに、志をもって活躍している人とコラボレーションしていく「僕らの時代」。第8回目のゲストは、メジャーリーガーの菊池雄星さんです。

松下幸之助が未来を担う若者へのこしたメッセージに、今を生きる私たちはなんとこたえることができるでしょう。

野球というスポーツを通じ多くの人に夢を与えている菊池雄星さんは、どんな信念を胸に道をひらいてきたのでしょうか――。

菊池雄星(きくち・ゆうせい)
1991年、岩手県盛岡市で生まれる。
2007年花巻東高に進み、09年、3年春の甲子園で準優勝、夏は4強入りを果たした。高校卒業後にメジャーリーグ挑戦の意思もあったが、日米球団との面談を経て断念。同年のプロ野球ドラフト会議で6球団から1位指名を受け競合の末、西武ライオンズに入団。18年シーズンまで9年間プレーし、最多勝、最優秀防御率、ベストナイン(2度)、ゴールデングラブ賞を獲得。
19年、10年の時を経てメジャーリーグに挑戦し、シアトル・マリナーズに入団。数々の苦難を乗り越え、3シーズン目となった21年、オールスターに初選出を果たす。
16年、フリーキャスターの深津瑠美さんと結婚し、19年には第1子となる長男が誕生。
年間300冊を読むなど球界屈指の読書家として知られ、20年からは、地元岩手県で半世紀以上に渡り開催されている「岩手読書感想文コンクール」を全面バックアップ。こどもたちに読書の大切さを伝える活動を展開。また、同年に復刊となった『野球盲導犬チビの告白(井上ひさし・著/実業之日本社・刊)』にて巻末解説文を執筆するなど、新聞を含む数々の媒体に寄稿し、専門家から高い評価を受けている。
21年にはがんの治療研究を支援するNPO法人delete Cの公式アンバサダーに就任した。


note

★★★

「夢が人生を決める」

これが恩師である花巻東高校の佐々木洋監督と最初に会った時に言われた言葉です。
15歳の春、高校入学の日に聞いた言葉が、今日の自分を作ってきました。
監督からは大きな夢を持つことの大切さを教わりました。
それ以降も多くの先輩方から様々なことを吸収し、自分なりに理解を深めてきました。
今ではだいぶ理解できてきたと思います。


「とんでもなく大きな夢を描きなさい。達成の方法さえもわからないような夢を」

「夢はどんどん更新しなさい」

「夢の更新のタイミングは、『この夢は達成出来そうだ』と思った瞬間。達成出来ると思った時、新たに、今の自分では届かなそうな夢を再設定する」


一流の方たちから、このような言葉を数多く聞いてきました。

だから、自分はいつも、自室の壁のど真ん中に貼ってある「目標設定シート」を毎日見つめてイメージし、バックパックの中にも常にシートを忍ばせていました。

挑戦すれば、成長は約束されている。だが成功するとは限らない。実際、成功より失敗の方が多い。

そんな時、我々が最も注意しなければならないのは「周囲の目」だと思います。失敗は悔しいけれど、恥ずかしい事ではないはず。しかし、ネットを見れば、ネガティブなニュースやコメントの嵐。いつしか脳は主語を認識できなくなり、全ての記事やコメントを「私事」だと誤認し始める。
SNSの登場により、得られる恩恵は計り知れないものです。でも、それと同時に、光が強くなれば、影も強くなる。コロナのパンデミックにより、「同調圧力」、「世間」、「空気」がより強固になってしまいました。
ナイフは便利ですが、凶器にもなり得ます。何事も扱い方と付き合い方、そして適切な距離感があるはずです。

野球という職業上、ありがたいことに世界中のトップアスリートやその道のエキスパートと接点を持たせて頂くことも多い自分ですが、彼らと接してきて分かってきたこと、それは彼らは決して生まれつきのスーパーマンなどではなく、そして成功の法則などという規則性もなく、結果の出し方は十人十色だということです。
彼らだって緊張もするし、心も揺らぎます。不安になることもだってあります。しかし、感情や物事の捉え方と扱い方が抜群に上手いという点は共通しているようです。
批判や周囲の声の扱い方も人それぞれで、大方の人は見ないようにしている一方で、エネルギーに変えるために、あえて自身の評価や批判を見に行く人もいる。
あるメジャーリーガーは「みんなお化け屋敷に行くのは躊躇するのに、言葉のお化け屋敷に行くのは躊躇がないんだね」と笑っていました。


話は逸れてしまいましたが、松下幸之助さんが伝えたかったメッセージ、それは「未来は変えられる、自分で作れる」ということだと理解しています。

そして今、本書の中で松下幸之助さんが警鐘を鳴らしていた時代が来ています。

今こそ、会ったこともない「誰かの声」に左右されず、自分の内なる声を信じ、自分が心からしたいことを夢に持ちましょう。とんでもなく大きく、周りから笑われるような夢を。

社員が数人しかいない中、アパートの一室でみかん箱に乗り、壮大な夢を語り、実現させたあの人のように。

一面のオレンジ畑を見て、「ここにシンデレラ城を作ろう」と設計図を作り、世界一の遊園地を作ったあの人のように。

そして、たった2畳の工場からスタートした会社を日本有数の企業に成長させ、経営の神様と言われた松下幸之助さんのように。


「失敗した所で止めるから失敗になる。成功するところまで続ければ成功になる。」

松下幸之助さんが残した言葉。

物事をロングショットで見れば見るほど、失敗とは非常に曖昧なものだと気づきます。
言葉をひっくり返すと、成功も長いスパンで見るほど不確実要素が多くなると気づきます。
今日の結果だけ見れば失敗だとしても、夢に近付いたかどうかという尺度で見れば、全ての出来事は成功だとも言えるはず。

北極星であるべき大きな夢さえ見失わなければ、あらゆる出来事が「必要な経験だった」という捉え方に変わる。


本書のタイトル「道をひらく」
道は大きな夢をもった瞬間にひらけはじめる。
ただし、道に終わりはない。

野球道にも終わりはないが、人間道にも終わりはない。
実は、野球を続ければ続けるほど、「わからないこと」が増えていきます。断言出来ることが減っていきます。
ただ、同時に、断言出来るところは以前よりも確信を持って言い切れるようになっています。

信念や座右の銘なんて毎年のように変わっていく。それは仕方ないし、それで良いと思う。完成形のない、終わりのない道なのだから。

これからも暗中模索と粒粒辛苦を繰り返しながら、My wayを進んでいきたいと思っています。

自分のコンパスは自分自身。
何度でも立ち上がろう、無様が生き様に変わるまで。


菊池雄星


★★★

noteマガジン『僕らの時代』は、様々なフィールドでソウゾウリョクを発揮し、挑戦を続けている方々とコラボレーションしていく連載企画です。
一人ひとりが持つユニークな価値観と生き方を、過去からのメッセージに反響させて“いま”に打ちつけたとき、世界はどのように響くのでしょうか――。

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