「デザイン」「機能」はどう違う? 言葉のズレからレッツノートを再考する
軽さ、頑丈さ、バッテリー駆動時間の長さにこだわってつくられ、モバイルワーカーの仕事道具として支持されてきたPC、「レッツノート」。ブランドメッセージ「いこう、ビジネスの現場へ」を掲げて、社内外に向けた新たな取り組みがはじまっています。マガジン「レッツノート ブランド読本」では、あるべき姿を模索するレッツノートチームの思いをお伝えしていきます。
今回は、レッツノートに関わる人々が一丸となって新たな価値を提供していくためのヒントは「言葉」にあるのではないか、という仮説を検証。異なる職能を持った専門家たちが、円滑なコミュニケーションのきっかけづくりのために実施した、若手社員4名による座談会の様子をレポートします。
コミュニケーションのすれ違いの原因は“言葉のズレ”
高田: 私たちレッツノートブランディングチームでは、“レッツノートの価値”を言語化するために、システムエンジニア、デザイナー、プログラマー、カスタマーサポートセンタースタッフなど、レッツノート事業に関わるさまざまな職能のメンバーにヒアリングをしてきました。
*詳しい経緯については、『「いこう、ビジネスの現場へ」――レッツノートに込める未来へのメッセージ』をぜひお読みください。
ヒアリングを重ねていくうちに、課題として浮かび上がってきたのが、「本当は同じ思いを持っているのにコミュニケーションがすれ違うこと」です。そして、その原因には“言葉のズレ”がある。同じ表現を使っていても、その意味するところが異なるため齟齬が生じているケースがあるのではないか、という仮説が出てきました。
高田: そもそも“言葉のズレ”が生じることをお互いに認識できていれば、組織全体のコミュニケーションがより円滑になって、部署横断の連携もスムーズになるのではないかと考えました。そして、現時点でどのくらい“言葉のズレ”があるのかを可視化するための手法として採用したのが、「ダブリング」です。
ダブリングとは、コンサルタントの細谷功さんが考案した、2つの言葉の関係性をその人がどのように捉えているのかを2つの円で表現し、可視化できるツールです。2つの円の「大きさ」と「重なり方」によって9パターンのベン図で言葉の関係性を分類するので、言葉の使われ方を定量化することができます。
具体的には、下図の9つですべてのパターンを表現しています。
「機能」と「デザイン」は何のためにある?
高田: 今回は、ダブリングを活用して計12問のアンケートを作成。レッツノートに関わる社員100名以上から回答を得ました。 その内容を踏まえつつ、レッツノートの「機能」や「デザイン」、それらがお客さまに提供している「体験」の関係性について、部署をまたいで考えていきたいと思います。 メンバーは、開発の武石さん、デザインの山田さん、開発からデザインへ異動した西住さん、そしてマーケティングの高田の4人です。回答に“正解” はないので、自由に意見を交わしていきましょう!
高田: まずは「機能」と「デザイン」から。それぞれどのパターンを選んだのか、自分の回答にコマを置いていきましょう! せーの!
高田: お、分かれましたね! 僕は2つが同じ大きさで交差しているパターンを選びました。“お客さまにとっての価値”という点では、両方とも同じくらい重要な要素だと思ったからです。
では、この2つの違いは何なのかというと、数字やデータなどの理論に基づいているのが「機能」で、“感性”や“感覚”といった数字には表すことができないものが「デザイン」。この2つが合わさって“レッツノートの価値”ができているというイメージでした。
西住: 私も同じ。実は最初に回答したときは、「機能」のほうが大きく、2つの円が交差しているパターンを選びました。それは当時、ソフト開発の部署にいて、「機能に関わる絶対的なルール」に従って開発に携わっていたから。たとえば、無線通信ひとつにしても、国の定める周波数を守らなければいけない。さまざまな制約のなかで開発するたいへんさや難しさを知っていたから、「より重要なのは“機能”」という意識がはたらいていたと思うんです。
デザインの部署に異動して、「デザイン」も「機能」も同じぐらい重要な要素だと認識が変わりました。いま思うと「デザイン」が操作性や売れ行きに大きな影響を与えることを、それまでは深く理解できていなかったんですよね。
武石: 僕はいまアプリ開発を担当していて、やっぱり「機能」が核となると思っているので、機能がデザインを内包しているパターンを選びました。レッツノートを購入いただいたお客さまに対して、“何をもたらせるのか”というのがやはり意識の真ん中にあるんですね。
まず、お客さまのやりたいことを実現するために「機能」がある。そして、その「機能」を快適に使ってもらうために「デザイン」がある。そんな認識です。
たとえばアプリ画面ひとつにしても、どこを操作したらいいのか一目ではわからないようなデザインだと、どんなにいい機能でもなかなか使ってもらえない。反面、パッと見て、直感的に操作や機能がわかれば、使ってもらえる。そう考えると、「デザイン」もまた「機能」の一部なのかなと。
西住: その気持ち、わかります。やっぱり開発に携わっていると、どうしても「機能」への思い入れが強くなりますよね。「デザイン」より「機能」が大きい1~3のパターンを選んだ人は、全体で約半数もいる。
開発に携わってきた先輩たちが、知恵や技術力を組み合わせて積み上げてきたものだから、「必要な機能を実現する“技術”がレッツノートの土台になっている」という感覚はすごく理解できます。
山田: 僕は少数派かも。2つの円がぴったり重なるものを選びました。それは、「“機能”と“デザイン”が何のためにある?」って考えたときに、両方とも「コミュニケーション」のためにあるものだと思ったから。
結局、機能もデザインも、お客さまの「体験価値」という視点でいえば、同質で不可分なものだと思うんですね。たとえば、“キーボードの押し心地”には、どちらの要素も含まれています。レッツノートが頑丈で、端子がいっぱいついているのも「機能」であり、「デザイン」でもある。
そして、そのデザインや機能のひとつひとつには、僕らがどんな人に、どんなふうに使ってもらいたいかというメッセージを込めている。そのメッセージを受けとって、「いいな」と思った人が買って、使ってくれる。
お客さまとの「コミュニケーション」がたしかにそこにあって、それは、「機能」と「デザイン」の両方がそろって成立しているものだから、決して分割できるものではないと僕は思っています。
西住: たしかに、機能を決める段階で、ちゃんと「体験」を考えることは必要ですよね。
山田: そう、たとえば、「のんびり楽しく掃除ができる」というコンセプトの掃除機を開発するとして、吸引力や音といった機能も大きく関わってくるので、デザイナーだけでは作れないんですよね。
武石: そうですね。これまではまず「機能」があって、「その機能の“価値”や“世界観”を伝えるのがデザイナーの仕事」という感じだったけど、もっとうまく連携できれば、さらに統一感のあるものを作れるんじゃないかと思いました。
ユーザーの「体験」を生み出すものとは?
高田: 次に「機能」と「体験」について。武石さんの回答が気になりますね。
武石: 私は「体験」が大きく、2つの円が交差しているパターンを選びました。理由は、「機能」と「デザイン」と同じで、「お客さまのやりたいこと=体験価値」を提供するために「機能」があると思っているから、体験のほうが大きくなるイメージです。
山田: 僕はここでも「機能」=「体験」のパターンを選びました。たとえば、電化製品を使っていて、「なんかこっちのほうがいいな」と感じることありませんか? 理由はわからないけど、なんとなく手になじむ、使っていて気持ちいい、なんか色味がいい、とか。
自分自身もそうですけど、「機能」「デザイン」などなど、いろんな要素が融合した総体として「レッツノートがいい」と感じてくれているはず。やっぱり「機能」も「体験」も僕は不可分のものなんじゃないかと。
西住: 私が選んだのは「体験」が大きく、「機能」を内包しているパターンです。すべての機能が必ず何かの体験につながっていると思うから。
山田さんは「デザイン」「機能」「体験」がすべてぴったり重なっているけど、私は「体験」のなかに「デザイン」と「機能」がすっぽり収まっているイメージ。これらのほかにもさまざまな要素が絡み合って、「体験」につながっているという感じかな。
高田: ちょっと話は変わるけど、レッツノートが、「お客さまに提供できる最高の体験」ってなんだと思う?
山田: うーん。僕は、たとえるなら「着物」のような体験かな。昔は日常的に着られていて、ちょっと破れたり、傷んだりしたら、継ぎはぎする。自分が着なくなったら、次の世代に受け渡す。着物は生活と仕事にすごく密接したもので、たいせつにされてきた。ものづくりに携わる一人として、そういった永続性に憧れます。レッツノートを“世代を超えた相棒”にしたいと、個人的には夢見ています。
高田: なるほど。その体験を提供しようとしたら、「デザイン」だけでなく、「機能」「カスタマーサポート」「マーケティング」などのいろんな要素が融合した総体として、レッツノートをどう知覚してほしいかを考えることが必要そう。
今回のブランディングプロジェクトでは、「いこう、ビジネスの現場へ」という言葉を発信しているんだよね。これには、たとえばレッツノートユーザーが朝起きたときに、「よし! 仕事にいこう!」と前向きな気持ちになれる体験を提供したい、という想いが込められているんです。
そのためには、関係者全員がお客さまに提供したい「体験」や「世界観」の共通のイメージを持って、レッツノートを作るプロセス全体にそれを落とし込むことが重要なんじゃないかなとあらためて思いました。
武石: たしかに。部署や職種の垣根を超えて、レッツノートの「ブランド」を共有するために、レッツノートを作り上げていくときはもちろん、日々のコミュニケーションをたいせつにしていきたいですね。
山田: そうですね!
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