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誰もが輝くパビリオンとは?若手デザイナーがつくる多様性と共創の未来

2025年「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて、パナソニックでもパビリオンの企画・設計を進めています。

私たちが、今回の万博で大切にしていることのひとつはDEIの視点です。DEIとは、Diversity(多様性), Equity(公平性)&Inclusion(包括性)の頭文字で、年齢や性別、国籍、障がいの有無などに関わらず、あらゆる立場の人が公平に、互いを認め合いながら生きるために必要な考え方を表します。万博の企画チームは、DEIの視点をパビリオンに取り入れるため、障がいのある社員や知見を持つ方へのヒアリング会を設計段階から実施しています。

この記事では、2023年2月に行われたヒアリング会の様子と、企画チームから参加したデザイナー2人の想いをお届けします。

2023年2月16日。さまざまな障がいのある方や子育て中の社員、またユニバーサルデザイン(UD)に知見のある方などが集まり、DEIの観点からパビリオンについて意見を交換し合うヒアリング会が行われました。現在検討が進められているパビリオン内の展示やしかけについての説明をうけ 、3つのテーマ(車いす利用者を中心としたUD視点、聞こえない・聞こえにくい方も楽しめるUD視点、室内空間環境におけるUD視点)に分かれて意見交換を行いました。

ヒアリング会では、事前に会議ルールを設定し、さまざまな立場の方が意見を発しやすく、受け取りやすい環境づくりを行いました。

意見の一部
・障がいのある人の中には、不安を払拭するために事前に展示内容を把握したい人もいる。一方でネタバレを好まない人もいる。情報を必要とする人だけが先に取得できるようにしてはどうか。
・車椅子を体験の演出の一部として利用してみたい。
・あらゆる問い合わせに対応するため、筆談や音声認識アプリ、指差しボードなどを準備すると便利。
・パビリオン内で困ったとき、スタッフに声をかけやすい雰囲気づくりが大切。
・感覚過敏の方がパニックになってしまったときのためにカームダウンルームがあると良い。

ヒアリング会に参加した社員からは、「ユニバーサルデザイン基準をクリアするだけでは、満足できる体験ができないことを実感した」「多様な人が1つの目的に向かって取り組むモデルケースになればと期待している」といった感想が寄せられました。

多くの学びとともに、さまざまな課題を再認識した万博の企画チーム。今回は企画チームに所属する、デザイン本部の迫健太郎さん、山越双葉さんに話を聞きました。

(写真左)パナソニック株式会社 デザイン本部 山越双葉
(写真右)同 迫健太郎 

多様な視点を持つことはパナソニックの強み

―今回のヒアリング会を行ってみて、いかがでしたか?

迫: これまでのDEIの取り組みとしてよくあったのは、できたものに対して手すりやスロープをつけるなどの後からアレンジをするパターン。でも、本来は最初からDEIの視点を取り入れるのがベストですよね。詳細を決める前の段階から、障がいのある方の意見を聞けたのは非常に良かったと思っています。

山越: そうですね。この段階で当事者の方と直接ディスカッションができて良かったです。

私は学生時代、個別指導塾のアルバイトで聴覚障がいのある生徒を2人受け持っていました。パビリオンの企画をしていると、こんな体験ができたらあの2人は笑顔になるだろうなとイメージすることがあるんです。

ユニバーサルデザインを考えるとき、当事者の顔が見えていないと「~してはいけない」「~しなければならない」という「条件」になってしまいがち。今回、当事者の方と直接意見交換できたことは、意味があると思っています。

―どんな意見がありましたか?

迫: ミストを使う演出について、杖を利用されている方から「床はどのような素材ですか?」という質問をもらいました。床が少しでも濡れていると、杖が滑って危険だからだそうです。「ミスト」という言葉を聞いたときに杖ユーザーの方はこのような部分が気になるのだと知り、ハッとしました。

また、仮に安全な床材を使用していたとしても「ここは安心して進んでよい場所だ」と分かってもらえなければ怖い思いをさせてしまいます。安全な処理を施すことと、相手の立場を想像して必要とされている情報を伝えること、その両方が必要なのだと気づかされました。

山越: 私は聴覚障がいのある方のチームに参加していたのですが、「子どもたちがこれを触ったら危険だよね」「スタッフが覚えるべき手話10選を作りたい!」など、DEIのチェックというよりも、パビリオンを楽しませる側の意見をいただけたのが印象的でした。パナソニックという一つの会社にいろいろな立場の社員がいることを頼もしく思いました。

迫: 約24万人いますからね!組織の中に多様な視点があることは強み。さまざまなバックグラウンドの方からどんどん意見を聞いて社会に役立てていくことを、これからも実践していきたいですね。

マイナスをゼロにするのではなく、プラスにするDEI

―ヒアリング会での学びを、今後どう活かしていきたいですか?

迫: ある車椅子ユーザーの方から、「車椅子を演出の一部にしてはどうか」という意見が出ました。当事者ではない私たちからは気を遣ってしまってなかなか出せないアイデアで驚きましたが、健常者の方が「あのエリアは車椅子で体験したい」と思うような演出ができたら面白いですよね。

このように、「車椅子だからこそおもしろい体験ができる」というプラスのアイデアにつなげていきたいと思っています。

当日は実際に車椅子に試乗し移動の課題についても議論がなされた

山越: 今回のヒアリング会で、私は普段の生活とは逆転したマイノリティの立場を経験しました。参加したチームのみなさんは、聴覚障がいのある方々。チャットでのやり取りも慣れていて、私が反応するのを待っていてくれました。マイノリティの自分がみなさんの積極性や配慮に助けられたこの感覚を、パビリオンにも活かしていきたいと思います。

―万博に向けての意気込みをお願いします。

山越: 今回のパビリオンのテーマは、子どもたちをさまざまな常識や思いこみから解き放ち、可能性を引き出すこと。これは、DEIの取り組みとも近しいなと感じています。

子どもたちに解き放ってもらうために、まずは私たち社員が解き放たれる必要があります。来てくださる方も、社員も元気になれる万博にしていきたいです!

迫: 実は私も山越さんも万博を体験したことがなく、今回はじめて正面から経験します。だからこそ、良い意味でこれまでの万博らしさにはとらわれず、世界に向けて、万博自体も、パナソニックとしても素敵な記憶を世の中に残したいと思っています。また、パビリオンの企画やデザインは、びっくりするぐらい我々20~30代のメンバーが活躍できる機会を与えてもらっています。まだまだみなさんの考えを活かせる段階ですので、アイデアのある方はぜひ一緒にやりましょう!と言いたいです。「万博をつくれるって、面白い」ということに気づいていただけたら嬉しいです。

若い世代が中心となって企画、推進をしている今回のパビリオン。パナソニックグループは従来的なパビリオンの発想を超えた、多様な価値が輝く場の実現を目指しています。ソウゾウノートでは引き続き、万博での取り組みを発信していきます。お楽しみに!

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