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世界規模のモノづくりとブランドを、“法律”で守り続けたい。

母が法学部出身、叔母は現役の弁護士。そんな2人が近くにいたからだろうか、山澤奏子が大学の法学部に入るのも自然な流れだった。「法」の道に進むことを決めた山澤 は、大学を卒業後、ロースクールへとコマを進め弁護士資格を取得する。「昔、叔母が法的なアドバイスで母を助けていたことがありました。それと同じように、私も法律で困っている方を助けたいと思ったのです。ロースクール時代は朝から晩まで勉強漬けでした」。

司法試験に合格した山澤は東京の法律事務所で企業法務の経験を積む。高度な仕事を担う刺激的な日々であったが、自分にできる事は何かを自問自答する日々でもあった。「クライアントから法律に関する相談を受けたとしても、法律事務所の立場では課題の一部だけにしか関与できませんでした」。提案した法的な解決策が、実を結びクライアントに有益な結果をもたらしたかを直接知る機会がないことに歯がゆさを感じていたからだ。

入所して2年を迎えた頃、結婚を機に大阪へ生活の拠点を移すことになった山澤は、同時に大手製薬メーカーに転職、法務部のメンバーとして活躍する道を選択する。新天地の製薬メーカーでは企業法務の醍醐味を現場の最前線で体験した。「クライアントとの契約上の取り決め、コンプライアンスに関与するもの、M&Aなどの経営全体を動かすもの。ありとあらゆる分野に参加しました。法律分野の担当者として、多くの人に頼られることが、とても嬉しかったです」。法律がビジネスを動かすパーツとして機能する瞬間に立ち会えることは代えがたい経験だったと山澤は言う。

2人目の子供を授かった7年目に山澤は大手製薬メーカーを去る決断をする。「産休から職場復帰する時にとても迷いました。この会社で一通りのことは経験してきましたが、自分自身の成長のためには、より専門的な知識の習得や語学力の向上が欠かせない。今の環境から飛び出して、もっと広い世界を見ることも必要なのではないか?と」。ビジネスの多様化、グローバル化が進むなか、企業法務も法律知識のみでは成立しなくなることは想像するに難くなかったと山澤は言葉を繋ぐ。

「これから先、海外のマーケットも視野にいれる企業も増え、海外との交渉も当たり前になりますから英語力は避けられません。また、ビジネスは多様化し、決断や変化のスピードも速い。これからの企業法務では、資格だけでなく、実際の現場でさまざまな課題解決の経験を積んできた人がますます求められ、活躍の場を手にすることができます。そうした現実にプレッシャーも感じましたが、それ以上にまだまだ成長できる期待感の方が大きかったです。パナソニックへの入社を決めたのも、グローバルなビジネスフィールドで、さまざまな分野の法務経験を積み、モノづくりにこだわるたくさんの人々と一緒に事業に貢献できると思ったからです」。

今、山澤はパナソニック製品に使用される部品・材料の調達に関わる部門を法的にサポートしている。パナソニックがサプライチェーンに対して企業としての社会的責任を果たすためのさまざまな取り組みを、社内の関係部門と協力して企画・立案しながら推進している。

「持続可能なサプライチェーンを築くためには、パナソニックの製品づくりを支える全世界の購入先さまとの協力関係が不可欠です。言語、企業体質、国民性等が違いますから、日本で定めたルールやコンプライアンスを理解いただくことはもとより各国の工場や現場に丁寧に落とし込むことは一筋縄ではいきません。とてつもない熱量が必要ですが、だからこそ達成感がありますね」。

転職後1年目には、情報収集・視察などを目的にアジア4カ国の海外出張を経験している。1年目だからと手加減はなかった。マレーシアでは100人を超える人の前で、英語によるプレゼンテーションの大役も果たす。「グローバル会議にも参加しました。改めてパナソニックのスケール感を肌で感じました。現在もオンラインセミナーを通じて、世界中の方とつながっています」。

法の仕事についても手ごたえがあると山澤は語る。「材料調達でトラブルがあった場合の法的対処方法から、それを防ぐための手立てまで、関わる分野はひとつではありません。モノづくりの企業として、正しくルールが守られ、良い製品をしっかりお届けする。そのプロセスを法律でサポートする縁の下の力持ちのような仕事ですね。パナソニックのブランドを法的に守っていくことにも意義を感じています」。

スケールの大きさと歴史の深さ、パナソニックは山澤にとってまだまだ知らない人との出会いや無限の可能性に満ちた場所だった。

<プロフィール>

山澤 奏子(やまざわ かなこ)
法務
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
2019年キャリア入社 大学院法務研究科卒

埼玉県で生まれ育ち、結婚を機に大阪へ。家事と仕事をきっちりと分けて子育てにも全力投球。休日は夫と2人の子どもと公園へ。この時だけが仕事と距離をとれる憩いのひととき。元気な子どもたちからエネルギーをもらうことで、日々の仕事も頑張ることができるという。

*所属・内容等は取材当時(2022年10月)のものです。