働くことを誇りに思える会社が地方にもあることを伝えたい 。
「前職では、大手人材サービス会社で営業をしていました。人の能力を引き出し、事業に貢献するという仕事にやりがいを感じる反面、なかなかプライベートな時間が取れなくて」。
そんななか熊内慎人が転職を決意したのは、子どもが産まれたことがきっかけだった。人材の支援や育成の仕事にこだわりながら、もっと家族と過ごす時間を持てないだろうか。そんな時に知ったのが、当時取引先だったパナソニック インダストリー株式会社の働く環境だった。ワーク&ライフサポートを大切にする社風も申し分なく、デバイス事業という業種にも可能性を感じた。自分の求める職場は、ここにあるのではないか。そう思って調べてみると、妻の実家がある佐賀拠点において、ちょうど人事担当を募集していることを知った。
しかし、これまでとは畑違いの会社。商材のことも、まったく分からない。人事という職種についても、採用活動に関してはこれまでの経験を活かせる自信はあったが、それ以外の業務は一から学ぶことになる。受け入れてもらえなければ、それまでだ。熊内は想いのたけを採用面接で語った。新しい土地で、新しい仕事に挑戦する覚悟も。届いた結果は合格だった。
人事のこと、デバイスのこと。学ぶことが多い日々だったが、入社前に考えていた以上に、家族と過ごす時間を増やせたことは嬉しかった。そして熊内は、さらに新しい一歩を踏み出すことになる。「働き始めて1年が経つ頃、パナソニックの組織体制が事業会社制へと大きく変化しました。それに伴って、人事としての仕事もより裁量の大きい仕事になりました。これまでの採用活動や労務管理、派遣社員管理に加え、人材育成や人材戦略を通して一人ひとりのパフォーマンスを引き出し、『事業の成長』と『働く人の幸せ』に貢献する。つまり人事という立場から、経営のこともより深く考える仕事になったんです」。
まずは一人ひとりが、本当にやりたいことに取り組んでもらうこと。それが、それぞれの力を最大化し、会社の成長にもつながる。そのために、従業員全員から、自分は5年後どうなっていたいのかを聞くことから始めた。「それぞれの希望をもとに、経営者たちと一緒にキャリアプランを考えて、必要な研修を受けていただいたり、希望の部署に異動してもらったりしています。『自分のキャリアは、自分でつくる』。それがテーマですね」。
まだ始まったばかりの活動だが、その成果は確実に出てきている。職場が活気づき、従業員意識調査でも、仕事への意欲や満足度が向上してきているというデータが出ている。「実際にそれぞれの方が成長していっている様子や、希望の部署へ異動し活躍している姿を見ると、少しは力になれているのかなと思って感動します。これが拠点人事の魅力であり、やりがいですね」。
熊内の挑戦は、これだけに止まらない。「地方創生」を自らのテーマに掲げ、この地で働く新しい仲間を集めるため、採用ブランディングにも力を入れた。「県内働きたい企業No.1プロジェクト」を立ち上げ、「大切な人に心から誇れる会社にする」という目的に賛同してくれる人を社内から公募。そうして集まった10名と共に、県や行政と連携しながら会社の魅力を伝えるための活動を次々と展開していった。
県内最大のイベントに会社のブースを出展し、でんき教室やVR体験などを通じてPR活動をしたり、自分たちで会社の紹介動画をつくってSNSで発信したり、県知事と佐賀で働く魅力について対談したり。その活動は注目を集め、佐賀拠点は2022年県内の工業高校2年生が選ぶ企業No.1に選出されただけでなく、これら一連の活動は認められ、佐賀県から「佐賀さいこう企業賞」に選ばれた。
「この他にも、社内複業制度という社内の他部署と兼業できる制度を利用し、DEI(ダイバーシティ/多様性、エクイティ/公平性、インクルージョン/包括性 )の浸透に日々奮闘しています。こうして振り返ってみると、入社2年目の自分が本当やっていいのかと戸惑ってしまうくらい、さまざまな取り組みをさせていただきました。パナソニックに入って分かったのは、部署によって多少の違いはありますが、実はベンチャー企業気質というか、やりたいことやったらいいやん!という文化があって、それがちゃんと評価されることです。やりたいことがあった時は、自ら手を挙げれば、どんどんチャレンジさせてもらえる。そんな成長できる環境が整っています。だからこそ、この魅力をもっとたくさんの人に伝えていくことも、人事としての私の使命のひとつだと思いますね」。
<プロフィール>
*所属・内容等は取材当時(2023年8月)のものです。