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【SDGsスペシャル企画 第3弾】ユニバーサルデザインで、誰もが平等に楽しめる世界を

ーパナソニック システムソリューションズジャパン 藤原瑞基
 【メッセージ】一般社団法人fair代表 松岡さん

今やSDGsは世界的に大きな動きとなっており、パナソニックも事業活動を通じてSDGsが目指す2030年の社会づくりに取り組んでいます。しかし、実際にどのようなアクションを起こしたらよいか、自分の業務にどう落とし込んだらよいか、模索している方は多いのではないでしょうか。そこで、社内で環境問題や社会問題に対し熱い想いを持って取り組んでいる方を取材。SDGsを自分事化し、自らの仕事に取り入れるためのヒントをシリーズでご紹介します。第3回目はパナソニック システムソリューションズジャパンでユニバーサルデザインの音声ガイドを担当している藤原瑞基。記事内では、若手活動家の方にもコメントをいただいていますので、若い世代の視点にもご注目ください!

               ABOUT
藤原さんが所属するのは、様々な社会課題に対してアプローチを行う部署。現在、ユニバーサルデザインに対応した音声ガイド「Smart Town Walker」を導入すべく、尽力されています。2019年の12月には、新宿御苑にて実証実験を行いました。

INTERVIEW

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パナソニック システムソリューションズジャパン株式会社
サービスインテグレーション本部 藤原瑞基

―――――Smart Town Walkerはどんな音声ガイドなのでしょうか。

藤原:「Smart Town Walker」は、アバターを使った音声ガイドで、スマートフォンにアプリをインストールして使います。皆さんも美術館等で音声ガイドを使用したことがあると思いますが、その場に行って自分でボタンを押すものや、音声と映像のみ、テキストと映像のみ、といったものが主流です。Smart Town Walkerは、音声、テキスト、映像を組み合わせているため、耳が不自由な方は映像とテキストで、目の不自由な方は音声で楽しむことができます。また、骨伝導イヤホンを使用するため周囲の音を遮断せず、会話をしながらもご利用いただけます。

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各スポットの紹介をアバターが行ってくれる

現在、推進にご協力をいただいている施設に新宿御苑があります。ここは国内外から様々なお客さまが来るため、英語のアナウンスをはじめ、障がいのある方用にも複数のアナウンスを用意しています。例えば、車いすの方は進んで行ったら狭い道に入ってしまった、砂利道になってしまった、ということがあるそうです。そのようなお困りごとを解消するため、見どころの案内に加えて注意喚起も挿入し、それぞれの方が園内での体験価値を高められるガイドを目指しています。

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危険なエリアに入ると、音と振動で知らせてくれる

障がいのある人が、いかに楽しめるか

―――――開発中に苦労したのはどんな点でしょうか。

藤原:このアプリは、歩行中の揺れによって移動を感知する仕組みなのですが、電動車いすでの移動は揺れが少なく、ガイドがうまく作動しないことが分かりました。そこで、開発メンバーと機能改修を行い、車いすの方が使う時は静かな動きでも移動を感知するモードに切り替えられるようにしました。ユニバーサルデザインの仕事は、我々が考えるだけでは分からないことがあり、当事者の方に使ってもらって初めて分かることがたくさんあります。

新宿御苑実証実験の様子

2019年12月、新宿御苑にて実証実験を行いました

―――――もともと社会課題に興味があったのですか?

藤原:恥ずかしながら、これまで取り立てて意識が高かったわけではなく、この仕事を通して学んでいるところです。特に、新宿御苑のユニバーサルデザイン専門官の方には様々なことを教えていただきました。ユニバーサルデザインと言うと、トイレの整備をしたり、階段にスロープをつけたりと、ハード面の話に寄りがちです。しかし、この方は障がいのある方が安心して使えるだけではなく、いかに楽しく過ごせるかを大切にしておられ、このガイドに期待を寄せてくださいます。また、開発の過程で車いすの方から「こんなガイドがあったらいいね」と声をかけていただくこともありました。このような声が「満足してもらえるものを作りたい、社会に貢献したい」という想いを一層強くしてくれました。

音声ガイドでサイクリングを快適に

―――――新宿御苑以外に導入の予定はありますか?

藤原:兵庫県淡路島にある洲本市で、サイクリング客向けの提案を行いました。淡路島に観光で訪れる方の大半は車ですが、車以外で来た方は島内での移動手段が少ないため洲本市ではレンタサイクル事業が推進されています。Smart Town Walkerでは、サイクリング中の道案内や、観光名所の解説、車通りの多い場所の注意喚起を行いました。
現地で検証してみたところ、音声ガイドがない時は「そろそろ着くのだろうか、次はどこで休憩できるのだろうか」と不安になることがありました。しかし、音声ガイドを利用することで、サイクリング自体を楽しめると実感しました。担当者の方も「安心してサイクリングを行うには、こういうしくみが必要だと思っていました」と共感してくださいました。今後、他の地域での展開も目指していきたいと思っています。

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淡路島での検証の様子

17の枠を越えて、目の前の課題と向き合う

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―――――SDGsにつながる取り組みを目指している方へメッセージを        
     お願いします。

藤原:Smart Town Walkerは、サービスを展開する中で結果的にSDGsにつながっていきました。SDGsありきで考えた場合、これで合っているのだろうか、どこに当てはまるのだろうかと立ち止まることがあると思います。しかし、現場の課題は17のゴールのように細かく分かれているわけではなく、複数の課題が入り組んでいることもあります。枠組みにとらわれず、目の前の課題に取り組まれるうちに、SDGsの目指すゴールへ結びつくことがあるのではと思っています。
今後Smart Town Walkerは、あらゆる立場の方に様々な場所と用途で使っていただくことで、今ある体験をさらに楽しんでいただけることを目指していきます。

Comment

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Profile:1994年愛知県名古屋市生まれ、明治大学政治経済学部卒業。
多くの媒体でLGBTに関する記事を執筆する他、メディアへの出演や講演を行う。共著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)

SDGsは「誰一人取り残さない」という理念を掲げていますが、今回の取り組みが“特別な配慮”ではなく、障がいの有無や言語の違いに関わらず、全ての人が同じようにサービスを利用でき楽しめるという視点が素晴らしいと思いました。例えば、骨伝導イヤホンを採用することで、外部の音が聞こえる状態でありながらアプリの音声が聞こえる点のように、テクノロジーの力を多様性の受容や平等な機会確保のために活用する動きは、今後もより広がってほしいと思います。
私は「どんな性のあり方でも、フェアに生きられる社会」を目指し、LGBTQをはじめ多様なジェンダーやセクシャリティに関する情報を発信しています。この課題について、日本では外資系企業がリードする中で、パナソニックさんは早い段階から取り組まれていたことが印象に残っています。従業員やお客様の中には様々なジェンダーやセクシャリティの人がいるという前提に立ち、制度や認識をアップデートされていることは重要だと思います。今後は、マーケティングやPR面でも多様性を反映されることを一層期待しています。




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