見据える先はソリューション、空気清浄機を超える存在に。〜次亜塩素酸 空間除菌脱臭機 商品群〜
コロナ禍でオーダーが殺到し、新規受注を一時停止せざるを得なかったジアイーノ。その構造は空気清浄機の集塵システムとは根本から異なり、次亜塩素酸の化学反応により臭いのもととなる成分や菌を分解・抑制※1し、空間除菌脱臭に力を発揮します。ベースは、水道水と塩を電気分解して、有人空間に適した濃度と性質の次亜塩素酸水溶液を生成する独自技術です。これに加湿機で培ってきた気液接触技術を掛け合わせ、部屋の隅々まで次亜塩素酸を行き渡らせます※2。「空質」への注目が強まる今、全世界で脚光を浴びています。
※1 (一財)北里環境科学センターにおける試験で、浮遊菌の場合、約6畳の試験空間において、約20分で99%以上の除菌・抑制性能を実証。付着菌の場合、約18畳の居室空間で、約12時間後に99%以上の除菌・抑制性能を実証。
※2 本体内の次亜塩素酸水溶液は、(一財)日本食品分析センターの皮膚接触試験により安全性を確認済み。揮発した次亜塩素酸の濃度は0.1ppm未満で、空気中の塩素ガスの環境基準(0.5ppm)を満たす。
水から空気へと対象を変える技術、時代を先取りする故の暗中模索。
次亜塩素酸は、水道水の浄化やプールの除菌、食材の洗浄に用いられる身近な成分です。1987年から、自販機の飲料水やプール水の除菌など、水の浄化技術として研究開発をスタートしました。2000年代に入り、浄化の対象を空気に拡大。そのなかで次亜塩素酸技術がクローズアップされました。
2011年、次亜塩素酸技術を応用した商品開発は、除菌・脱臭に特化した空質改善という新しい切り口に挑みました。菌は、浮遊菌と付着菌に大別されます。浮遊菌を機器に引き寄せて除菌する技術に、回転体の通風気化式加湿技術を応用し、次亜塩素酸を空気中に拡散して、付着菌にも効果を発揮するしくみへと発展させました。除菌と脱臭に尖った性能を生かして、まずプロユースの検討が始まりました。
体感すれば誰もが「GOOD!」。地道ながら、現場で確実に浸透。
2013年、ついに業務用ジアイーノを発売。臭いや菌に困っているプロ向けで、ターゲットとして医療・保育・介護の3業界を想定して開発しました。フィルターやイオンを活用した空気清浄機とは異なり、ジアイーノは化学反応で問題を解決するため、現場の切実な悩みにも効果てきめん。体験していただければ必ず「欲しい!」と絶賛されましたが、普及には時間が掛かりました。目に見えない化学反応は効果の数値化が難しく、価格の高さも相まって訴求が容易ではなかったからです。そこで、一時貸し出しで効果を体感してもらう販売プログラムを設けるなどのアプローチを徹底。BtoB領域で着実に実績を積み重ね、購入者からは絶大な信頼が寄せられるようになりました。
そこで、満を持して取り掛かったのが家庭用の開発です。既存の空気清浄機との違いを感じてもらうために比較実験を繰り返し、2017年、家庭用ジアイーノは発売されました。店舗に設置した体感ボックスでは、その脱臭力で多くのお客さまから支持を受け、「空間除菌脱臭機」の新ジャンルが確立されていきました。
アプライアンス社と組んでプロモーションを突破。BtoBの蓄積で、BtoCがブレーク!
パナソニック エコシステムズ株式会社は業務用の取り扱いがメインで、家庭用の製品を効率よく普及させるノウハウをパナソニック(株)の社内カンパニーの1つであるアプライアンス社に求めました。連携してプロモーションを行い、知名度アップによって家庭用の出荷数は順調に増加しています。なかでも、「プロも使っている、その生の声に後押しされた」という購入者が多く、業務用における積み重ねは家庭用の快進撃につながっていきました。
さらに、19年に中国向け商品を、20年には設備用として水道直結タイプのジアイーノを相次いで発売。グローバル進出と設備化の他にも、研究開発部門のシミュレーション技術を生かして、「空間除菌ソリューション」の展開を構想中です。次亜塩素酸が空間にどう広がっていくかが一目瞭然で、「意思決定者の説得を後押しする」と注目を集めています。家庭用でグッドデザイン賞も受賞し、ユーザビリティの追究にも細かく目配りをするジアイーノ。IAQ(室内空気質)が問われるウィズコロナの時代に、空気清浄機の枠組みを超えて、住宅・非住宅を問わない除菌・脱臭のスタンダードをめざします。
独自の除菌機構 2段構えで浮遊菌と付着菌を抑制
空間のニオイと菌を取り除くのは特許を取得している独自機構、2つの働きです。それが、浮遊菌を捉えて次亜塩素酸の水槽で除菌する「パッシブ効果」と、次亜塩素酸を揮発させて部屋中の付着菌にアプローチする「アクティブ効果」。ジアイーノでは回転体気液接触フィルターによって次亜塩素酸を効率的に揮発させることに成功、アクティブ効果を実現できました。
ジアイーノとよく比較されるのが空気清浄機ですが、一般的に空気清浄機は目の細かいフィルターで花粉やハウスダストなどを集じんするのが目的という商品です。
一方のジアイーノは、除菌と脱臭に特化した商品で、次亜塩素酸水溶液が浸透した除菌フィルターに通すことで、菌やニオイの成分を化学的に分解するというのが特徴となります。 部屋の汚れた空気を吸い込み、きれいにした空気とともに気体状の次亜塩素酸を揮発させるというサイクルを繰り返し、空気を循環させることでお部屋の空気を洗います。
膝を突き合わせて本音で議論、遠慮はいらない、はっきり言おう!
井浦 嘉和(営業企画):
めざすべき理想に向けて、開発のほとんどの時間をコミュニケーションに使ってきました。心掛けたのは、正直に話すことです。「いいか」「悪いか」をはっきりさせるので、開発陣からするとやっかいだったはず。ただ、これほど特化した商品にごまかしは効きません。ダメなものはダメ。ユーザーのことを考えると、本音で向き合わないとより良いものは生まれません。
類似品も見かけるようになりましたが、現場で積み上げた知見が商品の説得力につながっており、単なる模倣品に対してはあまり脅威とは感じていません。それよりも、現場でお役立ちするように商品を磨き続けることが大切だと思っています。
谷深ければ、山はきっと高い。ジアイーノの挑戦は終わらない。
山田 哲義 (開発):
ジアイーノだと本当に臭いが消えてる――。わが家に設置した翌日、妻から驚いた顔で言われて、私は効果の確かさを確信しました。
ジアイーノは、水道水と食塩を電極が電気分解して次亜塩素酸水溶液を生成しています。しかし、水質によっては電極が摩耗したりと、効果が出にくくなります。日本の水道水でも水質のばらつきが多く苦労しましたが、中国進出の際はさらに大きな課題として立ちはだかりました。各地の水質調査や中国国家標準規格(GB規格)へのアプローチにより、さまざまな条件の模擬水で安定的に動作する電極の技術を深掘りでき、グローバル展開への自信となりました。2020年10月から香港向けを発売、次年度以降も順次拡大を予定しております
とことん現場に通って見えた、セールスの「勝ちパターン」。
上内 茂 (商品企画):
建材を扱うカンパニーのため、医療・保育・介護の業界に対して知見がなく、業務用発売当時は販売方法が手探りでした。私が心掛けていたのは、とにかく現場に通うこと。その業界の人はどのような考えか、業界特有の意思決定のプロセスがあるかなどと研究した結果、さまざまな事実が見えてきました。
中小規模の事業体が多く、購入よりもハードルの低いリースの方が「引き」が強いこと。エビデンスを重視される方も多く、大学との共同研究や学会発表で効果を裏打ちしました。また、何台も導入してくださった施設では、8リットルタンクの注水を毎日行うのは、特に女性が多い業界では重労働になっていました。現場に足を運んでいなかったら、水道直結タイプのアイディアは出てこなかったでしょう。
意思統一が生んだ強いチーム、「枠」を超えたから今がある。
山根 徹 (営業):
アプライアンス社にいた私が今の部署に籍を移したのは、家庭用ジアイーノ発売の1年前のこと。カンパニーが異なれば、向き合うお客さまや流通も違うため、製造や販売の「常識」も同じではありません。お互いの枠組みを超えた連携が求められました。今回はBtoBの商品をBtoCに展開する転地とあって、絶対に伸ばそう!と強い信念でお互いに支え合いました。全員で決めたのは、"価値を守って販売いただける得意先とともに需要創造する"という方針です。
体感すれば多くの方から認めていただける商品ですが、効果が目に見えないため、そこに至るアプローチが重要になります。実演に協力くださり、インフルエンサーのように広げていただける得意先に絞り、粘り強く広げることを決断しました。社内では他の意見もありましたが、あのとき妥協していたら今はなかったと思います。
待ち構えるさらなる多角展開も、対象さえ見据えれば不安なし。
竿山 真毅 (開発):
見た目はどれも似ていますが、業務用と家庭用を比較すると実は細部が全く異なります。例えば、保育園での使用を想定する業務用は、園児が前面パネルを簡単に開けられるようだと事故につながりかねません。そのために、2アクションでしかパネルが開かないように設計して、指が入るような場所を極力排しています※3。
一方で、家庭用では便利さが求められ、1アクションで開けられるのが大前提。「壁ピタで設置したい」という声にお応えして、空気の出入りする風路を前面に設けています※3。これも、業務用ではメンテナンスしやすいように風路を機器側面に設けています。これからもさまざまな展開を予定していますが、スムーズに導入できて、それぞれのニーズに応じた設計を継続する点は変わりません。
※3 小空間向けJML30を除く
自分が使い手になったなら?勘所を教えてくれたジアイーノ。
千葉 伸 (開発):
業務用は排水タンクの水を給水の度に毎回捨てる設計でしたが、家庭用では使い勝手を向上させるために構成部材を変更して、保護エレメントでおおまかな集塵を行うことで次亜塩素酸水溶液の汚れを防ぎ、排水頻度を減らしました。家庭用で設計した塩タブレット自動投入機構も好評で、自信をつかむきっかけになりました。
また、水道直結タイプは自動で給水が行える設備商品ですが、排水は自動ではありません。内部の部品が故障した際に水漏れの被害が大きくなる可能性が考えられたため、機器内に水漏れを検出するセンサーを設置。異常を検知したら最上流部にある電動弁を閉めて、完全に止水する設計を実現、安心してご利用いただける商品にできたと胸をなで下ろしています。
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