見出し画像

電池のソフトウェアを進化させて、もっと安全に世界を動かしたい。

小さな頃から、「おもしろそう」に導かれるように貝野友美は、進むべき道を選んできた。直感的に惹かれたモノゴトは、やってみないと気が済まない。過去や経験にとらわれることなく、今自分が感じている気持ちに素直に向き合う。そうしてたどり着いたのが、電池のソフトウェアを開発する仕事だった。

幼少期を過ごしたのは、京都府福知山市と大阪府堺市。6歳まで過ごした自然豊かな福知山では、木に登って遊んでいたのを覚えている。堺に移り住んでからも、男の子と一緒にサッカーをするようなおてんばだった。昔から、初対面の人ともすぐに打ち解けることができたという。アクティブさも、人見知りしない社交的な性格も、子どもの頃のまま今も変わっていない。中学生の頃から得意科目は数学。その頃から完全に理系脳だった。ただひとつの答えが、スパッと決まる世界が性に合っていた。

当時の数学の先生には、多くの影響を受けたという。とにかく教え方がうまく、夢中で学んだ。難解な数式を解きほぐしてそこにある真理を分かりやすく示していく姿勢は、新入社員や他の技術者たちへの説明をできるだけ丁寧に伝えようとする現在の姿につながっている。

大学では、結び目理論・グラフ理論、音声認識技術を専攻した。結び目理論・グラフ理論は、インターネットの検索アルゴリズムにも応用されるもので、数式に基づいて最短経路を構築する学問。音声認識技術では、首元の肉・皮膚を通して伝わる音声の振動を捉えるデバイス (マイク) を通して、発話様式の異なるささやき声などの音声認識を研究した。数式を通して、世の中の役に立つ。気付けば、「ソフトウェア開発」こそが進むべき道標となっていた。

就職活動ではその知識を武器に、業種に捉われず、ここでも「おもしろそう」だと思う企業をどんどん受けた。そうしてたどり着いたのが、現在の電池を設計開発する仕事だった。

普段、気に留めることは少ないが、日々生活のなかに潜むあらゆる電池には何かしらのソフトウェアが組み込まれている。機器が熱くなりすぎないためであったり、電池を長持ちさせるためであったり、さまざまな制御が行われているのだ。パソコンやスマートフォン、電気自動車のなかで、ソフトウェアによって管理される電池が動いていた。電池とソフトウェア。つながっているとは思っていなかった世界の深さに貝野は魅せられた。

もうひとつ、仕事を選択する上でのキーワードとなったのは「環境」だった。自然豊かな場所で育ってきた貝野にとって、環境問題への関心は高かった。環境とソフトウェアという2つのテーマが、これからの時代になくてはならない電池で結びついた。今や電池の性能こそが、環境問題への対応や世界中のあらゆる製品の進化の鍵を握っていると言っても過言ではない。これからは、電池の時代だ。その予感は現実となり、貝野が扱う電池が活躍する舞台は、IoT機器から動力機器 (電動アシスト自転車、農機・建設機器)にまで広がっている。

たとえば、電子機器などの電池の場合、早く充電しようとすると、より多くの電流を流す必要がある。しかしそこには、いつもトレードオフがあり、電流を多く流せば安全性や劣化に影響が出る。より効率的で、より小型で、絶対に安全な電池を叶えるための最適な制御とは何か。日々突きつけられる難題に、最善の答えを導こうと向き合っている。

現在の職場で働くことができてよかったと貝野は言う。一人ひとりを尊重し、見守り、まずは挑戦させようとする風土があったからだ。右も左も分からなかった入社2年目の時にも、新商品の開発を任せてくれた。海外顧客の製品に不具合が発生した際には、ひとりで出向き、課題解決に尽力して感謝された。そして先輩たちは、分からないことがあれば分かるまで教えてくれた。

「先輩が、電池は生き物だと言ったことがあるのですが、本当にそうだと実感しています。設計通りのソフトウェアを電池に組み込んだとしても、全てが計算通りに動くわけではありません。気候や使用する環境の外的要因によって、結果は変わってきます。難しくもあり、だからこそ、おもしろいと感じています」。

電池のソフトウェア開発の可能性は、どんどん広がっていると貝野は話す。「高性能な電池が必要とされる製品は、これからいっそう増えると思います。電池のソフトウェア開発の仕事について、もっといろんな方に知ってもらいたいですし、電池を頼むならばパナソニックと世界中の人に言ってもらえるよう技術力を高めていきたいです」。

20年来、スキューバダイビングが好きだという貝野は、設計開発に没頭する根っからの理系でありながら、アクティブな一面も持っている。水を得た魚のように、技術者としての貝野の設計開発と可能性は、どこまでも広がっていく。

<プロフィール>

貝野 友美(かいの ともみ)
設計開発
パナソニック エナジー株式会社
2006年入社 情報科学研究科卒

活発な幼少期同様、現在でも休日は家にいないことが多いという。趣味であるスキューバダイビングに出かけることが多く、潜る深さは40mにも達する。脳力と体力、その絶妙なバランスが、日々仕事と向き合うバイタリティを生み出している。

◆パナソニック採用HP
https://recruit.jpn.panasonic.com/

*所属・内容等は取材当時(2022年10月)のものです。