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心と体を健康にする空間づくりのモノサシWELL認証でSDGsに貢献し、サステナブルなビジネスを切り拓く。

ヒトの心と体に影響を与える空間の機能を評価し、※ウェルビーイングにつながる空間づくりをめざした米国発の認証システム「WELL認証」。パナソニックでは、パナソニック株式会社 ライフソリューションズ社(以下 LS社) システムソリューション開発センターでゴールド認証を取得し、2021年度はWELL認証の取得支援ビジネスに本格的に乗り出します。

今回、システムソリューション開発センターでのWELL認証取得を推進した三舩 達雄と小林 絵美の2人に話を聞いてみると、WELL認証はパナソニックの持つ多彩な技術や組織としての特徴を最大限に活かせるツールとなる可能性が浮かび上がってきました。

※ 身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること

プロフィール

三舩 達雄 パナソニック株式会社

小林 絵美 パナソニック株式会社

環境だけでなく、心も体も健康に コロナ対策とも両立する空間づくり

WELL認証とは

WELL認証は米国のDelos社が開発したもので、2014年にスタートしました。「空気」「水」「光」など空間環境に関わるものから、「栄養」「心」「コミュニティ」といったヒトの健康に作用するものまで10の評価軸に基づく115の審査項目があり、世界で5,200余のプロジェクトがWELL認証を取得しています(2021年1月現在)。日本では61件の拠点が登録、内19件が認証取得済みで、パナソニックのシステムソリューション開発センターは関西初、電機メーカー初の認証取得となりました。

システムソリューション開発センター全景

WELL認証を運営している国際ウェルビルディング協会(IWBI)は、最上のビジネスや職場環境をめざす企業に対して、WELL認証に先立って2010年にスタートした建物の環境性能を評価するLEED認証との同時取得を勧めています。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受けて、2020年7月には感染症対策に特化したWELL Health-Safety Ratingも新たに設けられました。パナソニックでは、LS社空間ソリューション事業推進室「worXlab」で取得しました。

worXlabの様子

WELL認証は、ヒトの心身のウェルビーイングにつながる空間環境の実現を後押しするとともに、WELL Health-Safety Ratingを設けたことで感染症対策とも両立できることになりました。これにより、SDGsの多くの目標達成にも貢献できるしくみとなったのです。

空間の満足度も仕事への集中度もアップ!

パナソニックがWELL認証を取得、認証取得支援を始めることになったきっかけは、WELL認証を開発した米国Delos社が運営する研究所「WELL Living Lab」に設立メンバーとして2017年から参画していたことでした。LS社オフィスソリューション開発部の三舩 達雄は、当時をこう振り返ります。

「パナソニックでも元々、照明や換気など人と建物の快適性を健康につなげることを目指した事業を展開してきましたが、本当に健康に良いことを証明できるエビデンスが欲しかったというのがWELL Living Labへの参画動機でした。しかし、より抜本的にDelos社との協業成果をビジネスにつなげていくべきではないかという命題を与えられたのです」

これを受けて、WELL認証について勉強し始めた三舩。その過程で、国内の企業で築50年のオフィスで取得を目指していることが分かりました。

「パナソニックのシステムソリューション開発センターも築35年ですので、さほど変わらない。それなら取得できるのではないかと思えてさらに調べていくと、取れそうなことが分かりました。そこで、まずはWELL認証をパナソニックで取得した上でビジネスへとして展開すべきだと上司を説得し、取得に向けたプロセスを始めることができました」

コロナ禍で審査員が入国できずに実地検査が遅れた影響もあり、書類のみの予備認証を経て、2021年1月に晴れてゴールド認証を取得することができました。

システムソリューション開発センターでのWELL認証取得証書

ーWELL認証を取得したことで、実際に空間を利用する社員のみなさんにはどのような変化があったのでしょうか。

システムソリューション開発センターのフロアには131席ありますが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けた在宅勤務の推進もあり、最近の1日の利用率は20~30%程度となっています。こうした中でも、WELL認証取得後に全員にアンケートを取った結果、認証項目のうち実際にリノベーションを行った空気、光、水、温熱、音に関わる部分の満足度はいずれも上昇しました。


同じ環境下で働く人が等しく快適性を感じるわけではないというWELL認証の考え方に基づき、ゾーニングして働く場所を選べるようになっている。

暖色系照明のリラックスゾーン
白色系照明のフォーカスゾーン
パターン照明(サーカディアン照明)のナチュラルゾーン

システムソリューション開発センター オフィスソリューション開発部の小林 絵美によると、WELL認証では空間での快適性を向上させるために非常に細かい部分にまで評価項目が及んでいます。

「水での具体的な取り組みとして、ウォーターサーバーを導入しました。水質はWELL認証が定める20項目をクリアしていることを定期的にデータとして提出できるメーカーのものに限られます。これに加えて、パナソニックのほうでも3カ月に1回銅や鉛の含有分析も別途行っています」

「WELL認証では2時間おきにコップ1杯の水を飲むようにも推奨しています。こうした内容を社内で啓発することも認証項目として含まれているので、掲示板や社内ネットワークサイトで情報発信しています。オフィスに置く軽食に含まれる成分も、認証の対象になっているんですよ」

システムソリューション開発センター内に置かれたウォーターサーバー。その横には「水は2時間おきにコップ1杯を」とのメッセージも。「水が美味しい」と飲む人が増え、マイボトルも持参が増えるといった副次的な効果もあった。

WELL認証を取得する取り組みによって、実際に仕事で使うオフィス空間に対する満足度だけでなく、メンバーの仕事への集中度も高まっているようです。さらに三舩は、こう語ります。

「システムソリューション開発センターのマイクロブレイクスペース(小休憩スペース)では、単にソファーを置いて休憩してもらうだけでなく、気持ちをリラックスから覚醒に切り替える映像・音響のコンテンツを楽しんでいただけるようにしています。そうすることで、気持ちも新たに仕事に取り組んでもらうことを意識しました。実際どれぐらい効果があるか定量的にデータを取ったところ、マイクロブレイクスペースでの5分間の休憩が集中度を1.4倍高めていることが分かりました」

マイクロブレイクスペース

イノベーティブな取り組みでWELL認証の更なるレベルアップと普及を

WELL認証を取得する取り組みは、パナソニックの製品や技術力を使った新たなイノベーションの促進にもつながっています。

WELL認証では、本体認証(v2)とWELL Health-Safety Ratingのいずれにも「イノベーション」という項目があります。認証取得時の取り組みが新たな認証項目にふさわしいと認められると、将来的に認証項目として正式に反映される可能性が出てくるのです。三舩は「取り組みの意義を論文のような形で証明することを求められるのですが、パナソニックではこのイノベーションの項目を非常に重要なものと捉えていて、力を入れて取り組みました」と言います。

具体的には、システムソリューション開発センターのオフィスで空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の配置シミュレーションを行い、どのように配置すれば人が集まる場所でより効果的に次亜塩素酸を拡散できるかなどを調べました。また、worXlabは空気を上から下に流すダウンフローを作り出すことで、清浄度の高い空間を実現しました。

WELL認証におけるパナソニックのイノベーション提案の一例

認証取得時にイノベーション項目にチャレンジした意図を、三舩はこう話します。

「イノベーションに力点を置くことは、単にパナソニック製品を使えばWELL認証を取得できるとアピールすることにとどまらず、WELL認証を普及させるためにも認証そのものの内容をより良くするために必要だと考えて取り組んでいます」

先述したマイクロブレイクスペースでの映像・音響コンテンツも、WELL認証そのものの質の向上を意図したイノベーティブな取り組みでもあります。

「WELL認証をより良くするという点で言えば、『マインド』の部分は充実できる余地のあるテーマです。WELL認証発祥の米国では、精神疾患の増加という課題から生まれたテーマであるためか、マインドの認証項目は言ってみればマイナスの状態をゼロに戻す取り組みがほとんどです。でも、ゼロに戻すだけでなく、ゼロからプラスにできる。もっと言うと、リラックスできるだけでなく幸福度もアップするような取り組みがあってもいいのではないかと思ったからやってみたんですよ」

小林もこう続けます。

「例えば、WELL認証が定めたオフィスチェアの背もたれの傾き度合いでは、日本のメーカーのオフィスチェアはそもそも採用できません。米国発の認証なので、日本ではどうしても合わせにくい項目もあり、日本のメーカーとしてパナソニックが積極的に提案することで、日本の他の企業での認証取得がさらに広がることにつながればと思っています」

性能診断から認証までトータルにサポートできる強みを活かす

worXlabでWELL Health-Safety Ratingを取得した際には、三舩と小林がworXlab側に取得に関するコンサルティング、認証機関との交渉の橋渡しなどを行い、認証取得支援の事業化に備えました。4月から営業活動をスタートさせ、現在はオフィス空間を改善したいというお客さまに対してアプローチしているほか、ホテル等の新規のお客さまに対してご紹介したりしています。

WELL認証取得支援に乗り出す中でお客さまの新たなニーズも見えてきたと、三舩は言います。

「WELL認証とLEED認証では、空気と水に関しては認証対象項目として重なる要素があります。一方、LEED認証にはエネルギーという項目がありますが、WELL認証にはありません。カーボンフリーへの意識が高まる中で、WELL認証とともにエネルギーマネジメントもセットでやりたいという声がお客さまから出てきています」

もうひとつ、パナソニックだからこそできたことをサービス化することで、認証取得時のお客さまニーズに対応できることが分かってきました。それは、WELL認証取得に必要な機器に対する性能診断です。三舩はこう続けます。

「私たちは、実地検査に来た認証検査機関からお聞きして、WELL認証の実地検査時に必要な設備を揃えました。このため、それらの設備を用いて機器の性能診断をパナソニックで行わせていただけるので、お客さまには模擬検査を済ませた上で実地検査に臨んでいただけます。空間の性能診断から認証取得支援サービスを提供している企業は現状では日本国内になく、パナソニックだけがご提案できるのです」

「WELL認証を取得した時は外部の認証取得コンサルタントに入ってもらいましたが、空間の性能診断まではしてもらえませんでした。でも、よく考えてみるとぶっつけ本番のように実地検査に臨むのは不安ですよね...。幸い、パナソニックは総合電機メーカーとして色々な分野で専門知識を持った人材がたくさんいましたので、例えばエアコンや音のことを調べていただいたり、社内さまざまな部署の方々に協力してもらいながらすべて自前で性能診断を行った上で実地検査に臨むことができました。まさにパナソニックだからできたことだと思いますので、そこをビジネスとしてご支援できればと思います」

環境と心身の健康 2つのサステナビリティを広げたい

小林「WELL認証取得ビジネスを進めていくに当たっては、再び皆さんのご協力を仰ぐ場面があるかもしれませんので、どうぞよろしくお願いします!」三舩「WELL認証を取るまでには至らなくても、認証に準拠する形でのオフィス改革のお手伝いもできますので、どうぞご相談ください」

いよいよ事業化フェーズに入ったWELL認証。1年間の育児休業を経て再びWELL認証に関わることになった小林は、今こんな思いで日々業務に取り組んでいると言います。

「WELL認証のおかげで育休から復帰後に快適な環境下で仕事ができていることを実感しており、その思いを他社のお客さまにも届けていきたいです。日本のオフィスは省エネをはじめ環境での取り組みは多いですが、それに加えて空間内の快適性を上げることで心身の健康につなげていきたい。WELL認証を通じて、環境と心身の健康という2つのサステナビリティを広げていきたいですね」

三舩も、WELL認証取得ビジネスを軌道に乗せようと意気込んでいます。

「パナソニックは、空気、温熱、光、音というWELL認証を取得する上で設備が必要な4つの分野をいずれも手掛けています。こうした点からも、WELL認証はパナソニックにマッチしていると改めて感じます。認証取得までの2年間でけっこう資金も使いましたので(苦笑)、マーケティング本部とも連携しながら自分たちでも営業してビジネスとして軌道に乗せて会社に恩返ししたいです」

総合電機メーカーとして地球環境と人の健康とのサステナビリティの両輪を回しながらSDGsへの貢献を成し遂げるために、WELL認証は今後、パナソニックにとって強力な武器になる可能性がありそうです。

*記事の内容は取材当時のものです。


◆パナソニックグループ採用サイト

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