みんなの力を引き出し、 結果を出せるリーダーになりたい。
「私、プロジェクトリーダーになりたいんです」。パナソニックの面接で、そう伝えた。何て言われるだろうか。もし無理だと言われたら、他の会社を探すだけだ。「なれますよ。パナソニックには女性のリーダーがたくさんいますから。実際、うちの課のリーダーのひとりは女性ですし」。つまり自分の頑張り次第ということか。それなら望むところだ。堀陽子はこうして、パナソニックへの転職を決めた。
プロジェクトリーダーになりたい。そう思うようになったのは、働き方を見直そうと、それまで10年以上働いてきたプログラマーを辞め、外資系の製薬会社で働いていた時のことだった。彼女の仕事はプロジェクトチームのサポートだった。しかし、いつしかそこでリーダーシップを取るようになっていた。それは最初、あまりにまとまりのないチームを見かねてのことだった。
「チームでリーダーシップをとるようになって分かったんです。自分がみんなの良さをうまく出すことができれば、ひとりでは出せないような結果を出せるって。プログラマーの時は自分がつくるべきものをつくることに必死で、いつも黙々と仕事をしていましたから。メンバーとたくさん会話して一人ひとりの良さを見出していくリーダーっておもしろいなって」。プロジェクトのサポートメンバーをまとめるリーダー職には就けた。しかし、いくらプロジェクトでリーダーシップを取っても、プロジェクトリーダーにはなれなかった。プロジェクト全体をもっとリードしていくために、プロジェクトリーダーになりたい。上司に言ってみたところ、答えは「薬学の専門知識がないとなれない」だった。製薬会社での仕事はたのしかった。会社の人も好きだった。でも、次のステップに進む時だと思った。
パナソニックに入社し最初の半年は、インダストリアルソリューションズ社の商品を掲載するWEBサイトの管理・運営を担当した。その後異動し、現在は商品の販売代行サイトの担当として、マーケティング・販売プロモーションに携わっている。今までに培ったITの知識も活かして、さまざまなWEBデータを分析し、戦略を立て、事業部や販売会社とともに販売施策を実施するのが彼女の仕事だ。「取り扱っている商品は、コンデンサやセンサといった電子デバイス。最初は何がすごいのか、それ以前に何に使われるものなのか全然分からなくて。同じ部署の先輩や技術者に、とにかく聞いて回ることから始めました」。
商品の多さに、関わっている人の多さに圧倒されながら、商品を、仕事を一つひとつ覚えていった。「自分が調査や分析をして提案した改善案が採用された時は嬉しいですし、Webページの閲覧数や検索キーワードのランキングなど結果がデータとして現れると、貢献できたことを実感できます。WEBマーケティングという比較的新しい分野で仕事ができることも刺激的ですね」。今はまだ周りの人の助けを借りながら、必死について行っている状態だが、WEB販売におけるさらなる改善点も見えてきている。事業部や販売会社と協力して解決できれば、多くの社員が携わった電子デバイスをもっと世界に届けることができる。リーダーはまだ先の目標だが、彼女の仕事はだんだんと彼女だからできる仕事になろうとしている。
そしてもうひとつ。彼女には力を入れている仕事がある。働き方改革に取り組むA Better Workstyle事務局と進める、パナソニック内の障がい者ネットワークづくりだ。「パナソニックでは障がいのある人が多く働いていますが、それぞれがまだつながりきれていないんです。私は、もし私の他に義足の人がいるなら話してみたいですし、一緒にできることがたくさんあると思うんです」。たとえば、パナソニックにあるパワードウェアの技術を義足に活かせば、障がいのある人がもう一度全速力で走れるようになれるかもしれない。くらしだって変えていけるかもしれない。「障がいがあるからこそお手伝いできることがたくさんあると思うんです。自分たちの特性を活かした商品開発。そんなことも、私の目標のひとつなんです」。
彼女はいつも、やりたいと思うことに全力で挑んできた。「障がいのある人のなかには何かを遠慮してしまう人も多いと思います。でも、やらないで後悔するより、やって後悔した方が絶対にいい。実際、私がやってきたことに後悔はひとつもありませんから」。
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*所属・内容等は取材当時のものです。