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脱炭素社会へ、電池で時代をシフトさせたい。

「環境保護の観点から、クリーンエネルギーで走るEV(電気自動車)は世界中で普及が加速しています。ところが日本はまだまだ。出遅れています」。EVに搭載される「リチウムイオン二次電池」の機構開発を担当する原口は、日本の現状を残念そうに話す。確かにヨーロッパではEVが自動車市場の約8%を占め、アメリカや中国でも拡大の一途だが、日本の市場シェアは1%以下だ(「CleanTechnica」参照)。「普及の遅れは、電池性能も要因のひとつ。クリーンなEVの普及へ、どこの国の電池メーカーにも負けない高容量、急速充電性、低コストを実現させたい」。原口は夢を熱く語った。

原口は、入社から一貫してリチウムイオン二次電池の業務に就いている。生産技術部門から始まり、本社R&Dに異動して電池の新規材料開発を担当。そして現在の部署に配属されてからは、テスラ社向け「円筒型リチウムイオン二次電池」の機構開発に携わっている。テスラ社は世界のEV市場におけるリーディングカンパニー。たとえば2020年5月の販売台数は2万4,607台で、シェア約18%の1位(「EV Sales」2020年6月発表)。2位に倍の差をつけている。このテスラ社とパナソニックが共同運営でアメリカ・ネバダ州に建設したギガファクトリーの立ち上げに、原口も技術支援メンバーとして参画した。「現地メンバーやサプライヤーと連日のミーティング。言葉や文化の壁を痛感しつつも、世界トップクラスのリチウムイオン電池工場を立ち上げることができたことは生涯忘れられない出来事です」。総敷地面積13㎢は東京ドーム約280個分。生産能力はパナソニック以外の全メーカーがつくる合計量とほぼ同じというケタ外れのスケールだ。

リチウムイオン二次電池には、高容量化が求められる。EVの課題である航続距離向上のためだ。しかしエネルギー量が増えれば、安全性が問われる。年々高まるテスラ社の要望にどう応えていくか...。安全性に大きく影響するのは、外装缶や封口体だ。原口は材料力学や熱力学などを駆使しながら機構部材の材料や寸法、強度設計に向き合うことで、電池の高容量化と安全性の両立を徹底追求。大学で学んだ知識が活きた。

さかのぼれば、原口は大学で機械科を専攻。研究室では太陽光パネルの薄膜導電材料や、リチウムイオン電池で使用されるアルミ薄板の加工特性を研究していた。基礎加工研究をしていくうち「実際に電池製品をつくりたい」という思いが高まり、就職活動の指針へつながっていった。原口は電池業界を調べ尽くした。その中でエナジー事業に注力する方針を掲げ、意気込みを感じたのがパナソニックだった。

現在の仕事の魅力を聞いてみた。「部品設計から量産開始まで一貫して担当できるので、やりがいが大きいです」。たとえば、新たな開発が始まると機構部品として顧客要望や性能改善もふまえ、自分で部品形状を設計。次に部品サプライヤーと試作。そして電池サンプルをつくって顧客に提出し、承認を得た後に量産移行につなげる。それらすべてのプロセスを原口が主導して進める。「責任は重いですが、量産移行できた達成感はかけがえのないものです」。さらに、技術者ならではの喜びを話してくれた。「テスラ社はチャレンジングな社風。既存技術の継続ではなく、常に技術革新が求められます。自分も現状に留まっていられません。スキルアップしながら製品開発にチャレンジできるのです」。

原口には、心にとめていることがある。「社内の知見だけに留まるな。技術者として社外に視野を広げろ」。入社以来、先輩たちに叩き込まれた教えだ。「世界一の電池」をつくるには自社だけで完成させるのは困難で、国内外の材料メーカーや部品加工メーカー、設備メーカーの協力が不可欠となる。原口は、時間を惜しむことなく出向く。「現場を見ながら話を進めます。電話やメールでは難しい話もできますし、信頼関係も深まります」。幸いパナソニックはさまざまなメーカーとつながりがあり、知見も広めながら業務を推進できる環境が整っている。「製品開発しながら新たなスキルを身につけられる。限界なく自分を高められる。そんな会社、そうはないですよ」。脱炭素社会へ、原口のチャレンジがきっと時代を加速させる。

<プロフィール>

原口 心(はらぐち しん)
研究開発
パナソニック エナジー株式会社
2010年入社 機械科卒
「工学部を選んだのは、モノづくりがたのしそうだったから」。「『電子』より『機械』を専攻したのは、目に見える方が実感があっておもしろそうだったから」。いつも原口の選択の基準は、明快だ。たのしいか、どうか。今の仕事はと尋ねると「もちろん、たのしいです。」と笑顔になった。

◆パナソニック採用HP
https://recruit.jpn.panasonic.com/

*所属・内容等は取材当時のものです。