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僕はシスで、ヘテロで、ふつうじゃない。|#思い込みが変わったこと

こんにちは、ソウゾウノート編集部です。
3月25日(金)からnoteコンテスト「#思い込みが変わったこと」が開催されています。

みなさんには、思い込みががらっと変わった経験はありますか? きっかけは意外と何気ない日常の瞬間だったということもあれば、やっぱりとくべつな出来事だったという方もいらっしゃるかもしれません。

今回のnoteコンテスト「#思い込みが変わったこと」では、多様な価値観や生き方・考え方があることを、コンテストを通じてみなさんといっしょに共有しあったり、考えたりしたいと思います。

第一弾は、プランナーやビジネス・デザイナーとして活躍される小島雄一郎さん。小島さんの「#思い込みが変わったこと」は、とあるイベントで参加者からもらった質問をきっかけにはじまったそうです。

小島 雄一郎(こじま・ゆういちろう) 
大手広告会社にて若者研究を起点としたビジネス・デザイナーとして活動し、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、アメリカのOne Show、ドイツのRed dotなどを受賞。プライベートでは、日経COMEMOのキーオピニオンリーダーとして、固定観念や多様性をテーマにしたnoteを運営。
著書は「広告のやりかたで就活をやってみた」

★★★

今日のテーマは #思い込みが変わったこと

それは数年前、とあるイベントに参加した時のこと。
突然、参加者からもらった質問に驚いた。

それは

「小島さんはシスでヘテロですよね?」

というものだ。

話の流れとしては「そうですね」と返す空気だったが、反射的に「違います!」と返したくなった。

と言うのも、僕は当時「シスでヘテロ」の意味がわからず、なんとなく脳内にモンスターのようなものを思い浮かべていた。

ただ、結論として僕は「シスでヘテロ」で合っていた

質問には「そうですね」と返すリアクションで合っていた。

今日はそんな話。

■異世界に迷い込んだ感覚のイベント

その質問をもらったのは「ポリーラウンジ」と呼ばれるイベントだった。

ポリーラウンジとは「ポリアモリー」と呼ばれる恋愛スタイルについて話し合う座談会のこと。

そしてポリアモリーとは、合意を得た上で複数の人と同時に恋人的な関係を持つ恋愛スタイルのこと。

おそらく、ここまでの説明で既に大混乱している人も多いと思う。

当時の僕も同じで「なにそれ?」「そんなのアリ?」と思っていた。
ただ離婚した直後で、これからの恋愛感について悩んでいたこともあり、興味本位でこのイベントに参加してみた。

ちなみに、これまでポリアモリーについて書いたnoteはこちら

イベントでは、冒頭の「シス」、「ヘテロ」以外にも、たくさんの「聞いたこともなかった言葉たち」が飛び交っていた。

実際、ポリアモリーもギリシャ語で「複数」を表すポリーと、ラテン語で「愛」を表すアモリーを組み合わせた造語。日本語でも英語でもないから、最初はその意味すら想像できなかった。

日本人同士が、日本語で話しているのに、まるで異世界に迷い込んだ感覚でイベントを過ごした。

さて、話を冒頭の「シス」と「ヘテロ」に戻そう。

■まさかの化学用語だった「シス」

「小島さんはシスでヘテロですよね?」の、まずは「シス」について。

これは「シスジェンダー」の意味で使われていた。

シスジェンダーとは、性自認(こころの性)と、身体的な性(からだの性)が同じであることで「トランスジェンダーの対義語」と言えば、少しわかり易いだろうか。

ただ、もともと「シス」と「トランス」は高校化学にも出てくるラテン語由来の言葉で、検索をすると、こんな画像が表示される。

ざっくり訳すと、2つのものが同じ場所にある状態が「シス」。だから「こころの性」と「からだの性」の2つが同じ場所にあるシスジェンダーはこうなる。

そして対義語の「トランス」は、2つのものが反対側にある状態。ジェンダーにするとこうなる。

まさか「シス」が、僕が苦手な化学用語だったとは。

どうりで馴染みがないわけだ。

ここで言う「からだの性別」は「出生時に割り当てられた性別」のことを指しています。

■ヘテロはモンスターじゃない

次は「ヘテロ」について。

「小島さんはシスでヘテロですよね?」

のヘテロは「ヘテロセクシャル」の意味で使われていた。やはり英語ではなくギリシャ語由来の言葉だ。

その意味は「ちがう」。
そしてセクシャルは「性的な対象」という意味。

つまりヘテロセクシャルとは「自分の性(自認する性)とちがう性が、性的な対象になること」という意味だった。

ヘテロを漢字一字にすれば「異」となる。

だから僕は「ヘテロですよね?」と聞かれて、反射的に「異世界のモンスター」のような想像をしてしまったのかもしれない。

■シスでヘテロは、ふつうじゃない

ようやく2つの言葉が解明でした。

「小島さんはシスでヘテロですよね?」は、

「小島さんは性自認と身体の性が一致していて、自分と異なる性を性的な対象と捉える人ですよね?」と聞かれていたのだ。

だからやはり返答は「そうですね」で合っていた。

当時、僕は質問の意味を知って「なんだ、普通のことだったのか」と感じた。もしかしたら、ココまで読んで同じ感想を抱いた人もいるかもしれない。

ただ僕は今、当時の自分の感想を恥ずかしく思う

僕の感想は、

「世の中はシスでヘテロであることが普通」

という先入観が前提になっていた。

確かに世の中にシスでヘテロな人は多い。
ただ、シスではない人、ヘテロでない人も普通にいる。それが普通だ。

だが僕は勝手に「シスでヘテロ」だけを「普通のこと」と捉え、質問に対して「普通の話じゃないか」と思ってしまった。

それは「他者の普通」を、一方的に排除した発想だった。
改めて当時の自分を、恥ずかしく思う。

僕はシスでヘテロだ。でもそれは、普通じゃないのだから。