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ヘテロシス男性がフェミニストを名乗るワケ|#思い込みが変わったこと

ソウゾウノートでは、2022年3月25 日から「#思い込みが変わったこと」をテーマに投稿コンテストを開催しています。みなさんの「自分の思い込みが変わった」「周りの思い込みを変えた」エピソードをつうじて、さまざまな生き方や価値観をご紹介していきます。

今回お話をうかがうのは、国際基督教大学(ICU)1年生の堀田岳さん。高校1年生のときに「ジェンダーロール」の存在を知り、自らを「フェミニスト」と名乗るように。現在はフェミニズムについて考える団体「imI(イムアイ)」に所属し、イベント企画・運営を担当しています。そんな堀田さんの「#思い込みが変わったこと」に迫ります。

堀田岳(ほった・がく)
2002年、岡山で生まれる。生後間もなくシンガポールに渡り、2007年東京に戻る。国際基督教大学(ICU)の1年生。公共政策・ジェンダーセクシュアリティ研究・生物学などを専攻予定。高校1年生の時に少子化問題や育児におけるジェンダーロールについて興味を持ち、ヘテロシス男性でありながらフェミニストを名乗るように。

「imI(イムアイ)」についてはこちら


高校生の時に知った「ジェンダーロール」に衝撃

―堀田さんが所属されている「imI」の活動内容について簡単に教えてください。

堀田: imIは「I am I. You are you. とらわれない自分でいたい。」をコンセプトに掲げて、フェミニズムから社会を考える活動をしている団体です。私はおもに、イベントの企画・運営をメンバーと楽しく話し合いながら進めています。今回パナソニックさんとタッグを組んで、リアルイベントを開催できることになり、とてもワクワクしています!

―堀田さんはどのようなきっかけでフェミニズムに関心を持ったのですか?

堀田: 発端は、中学生のころだったと思います。当時私は男子校に通っていて、女性との関わりがほとんどない環境にいました。私の恋愛対象は女性なので、どうしたら女性と出会ったときに自分のことを魅力的に思ってもらえるんだろう? と考えるようになっていました。ステレオタイプ的ですが、男子中学生がよく考えそうなことですよね(笑)。

そこからいろいろと考えていく中で、1つの「仮説」にいたりました。それは「いい父親になれば、女性に魅力的に思ってもらえるのではないか」というものです。そのころ、インスタグラムで育児漫画を読んでいたのですが、その中で夫が育児・介護に積極的に参加しない傾向があることや「ジェンダーロール」の存在を知りました。私はもともと歴史が好きで、実は「女性差別」は歴史用語だと思っていたんです。日本では過去に女性差別があり、1945年に男女両方に参政権が与えられ、今は平等な社会になっていると考えていたので、かなり衝撃を受けましたね。

そんなふうにして知的好奇心のおもむくまま、ジェンダーについてインプットを重ねていくうちに「フェミニズム」という言葉に出会いました。フェミニズムの考え方が社会に浸透すれば、少なくともジェンダーという軸の上では平等な社会が実現できるのではと考えたんです。ですが実際、フェミニズムに対して批判的な人や、「危険な思想」といったマイナスな印象を持っている人が多くいることを思い知らされました。

私の周りを見渡してみても、学校内でフェミニズムに関心をもっている人は、圧倒的にマイノリティ。どうしたらみんなに私の考えを分かってもらえるんだろう? と考えたときに、私はみんなを説得できるほどの知識を持ち合わせていないことに気がついたんです。たとえば、みんなが「1+1=3」と言っているなかで、「1+1=2だよ!」とただ言うだけでは納得してもらえません。みんなにフェミニズムの考え方を伝え、納得してもらいたい。その一心で、大学でもジェンダー学を学ぼうと決断しました。

無自覚な「思い込み」に気がつくことは難しい

―堀田さんご自身がヘテロシス男性(身体および性自認が男性で、異性に恋愛感情を抱く)という立場でジェンダー学を学んでいく中で、自分の思い込みに気づいた体験はありましたか?

堀田: はい、あります。私はフェミニズムを学んでいることもあり、周りからステレオタイプがない人間だと思われがちなんですが、はたして私はそんなに立派な人間なのか? という疑問をもつようになりました。そこで女性と食事に行って、女性側がお会計をレジまで持っていっても何も違和感を持たないか? といった検証をしてみることにしたんです。

大学に入ってすぐの夏、実際に女性と食事をし、いざ女性が伝票をレジまで持っていったとき、私はすごくソワソワした感じがしました。というのも、まだ世の中の一般論として、伝票をレジまで持っていく人=奢った人、もしくは割り勘した人と見られ、いっぽう、伝票を持って行かなかった人は、奢られたもしくは割り勘した人という見られ方をしますよね。その場合、私は周りから「あの男性は奢らなかった/奢られている」と認識されてしまうのではないか、と思ってしまったのです。それと同時に、自分の中に無自覚なステレオタイプが存在することに気づきました。

この経験を経て「思い込みを抜くことは相当難しい」と分かりました。私自身の無意識な思い込みにもやっと気づけましたし、完全に自分の思い込みを抜くことは一生かかっても無理なのかもしれないと思いました。

同時に、他人に「それステレオタイプだからやめた方がいいよ」と指摘をすることは、あまり生産的ではないのかもしれないと考えるようになりました。つまり、ステレオタイプだけれども「やめられない」人たちが私を含めて大勢いる、ということに気がついたんです。この体験を機に、ステレオタイプを認識したうえで、納得感をもって行動を変えていくにはどうしたらいいのだろう? という考え方にシフトしていきました。

―思い込みに気がついたり、気づいてもらえるようにするために、堀田さんが意識して行動されていることはありますか?

堀田: 細かい部分ですが、たくさんあります。たとえば、一人称を「私」にしてみたり、言葉づかいを丁寧にしてみたり、お付き合いしている相手のことを「恋人さん」と呼んでみたりしています。

大学入学前、匿名でTwitterをしており大学のクラスメイトともTwitter上でつながりを持っていました。本格的に授業がスタートした後、誰がどのアカウントなのかを知るために、本名を教え合うことにしました。私のアカウントを知ったクラスメイトが、とても驚いた反応をしたんです。「女の子だと思ってた!」と。

理由を聞くと、彼女は「私って言っていたし、言葉遣いが丁寧だから」と答えたんです。このとき、私は彼女の中の「男性像」、たとえば荒っぽい・そっけないなどのイメージを少しくずしていけたような、そんな感覚を覚えましたね。

―堀田さんの行動や考え方は「納得感」が軸になっているように感じます。「納得感」を重視する理由はなんでしょうか?

堀田: 少なくとも、私自身がステレオタイプを捨てるための行動をとっていないと、他の人に指摘をする権利はないと考えているんです。私の気持ちとしても、自分が行動していないのに他の人に指摘するのは納得感がないし、「ちょっと違うな」という感覚があります。

もし、私の行動がきっかけで「考え方が変わった!」と言ってもらえたら、とてもうれしく思います。小さな行動を通じて社会を少しでも良い方向に変容させていきたいと考えているので、目の前の一人の考え方を変えられたのなら、それがどんなにささいなことであっても、5年後、10年後に大きなインパクトになり、未来へつながっていくように感じています。

みんなにとって生きやすい社会」をつくりたい

―堀田さんの将来ビジョンを教えてください。

堀田: 一度、政治の世界に入ってみたいと考えています。今、日本のジェンダーギャップ指数は156か国中120位で、とくに政治分野について順位が低い現状があります。

政治への不信感というのは、政治への期待のなさが原因になっている部分もあると思っていて。期待されることがなかったら、誰も期待に応えようとはしないですよね。社会から期待されるような政治を実現したい、そんな想いを抱いています。

いま思う最終的な人生のゴールは、地域の子ども園の園長になること。男性も女性も働きながら、育児も両立させることはかなり難しいことだと思います。そこで、私が思い描いている地域子ども園を開いて、安心して子どもを預けられる環境をつくれたら、仕事と育児を両立しやすい社会に少しでも近づけるんじゃないかなと思っています。

―すてきなビジョンですね。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

堀田: 私がフェミニストとして、とくに男性に向けてお話しをしているとき、どうしても私がその相手を敵対視していると思われてしまうことが多くあります。たしかにフェミニズムは女性に特化した考え方なので、そう思われることはもっともだと思います。

しかし、少なくとも私はフェミニズムの考え方を通じて、「みんなにとって生きやすい社会」をつくりたいと思っているんです。私が思う「ジェンダー平等」は、世界中の誰もがジェンダーのみを理由に不利益を被らない社会で、「フェミニズム」はあくまで、そんな社会に到達するまでのひとつの手段だと考えています。少し立ち止まって、ジェンダー平等の考え方に耳を傾けてみてください。そうしたらきっと、より自分やまわりが生きやすくなるヒントが得られるかもしれません。

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