スマートファクトリーの進化を支える〜FAサーボ MINAS A6ファミリー〜
ロボットや工作機械、搬送装置などさまざまな設備に搭載されるFA(Factory Automation)サーボモータ。インダストリー4.0とIoT化が加速する産業分野、工場のスマート化でコアとなるFAサーボモータには、ますますニーズが高まっています。MINAS A6ファミリーは小型・軽量でパワフルなモータに800万分解能の制御を備え、無線通信ネットワークにも対応。世界各地の生産ラインで活躍しています。
小型・軽量ボディに宿る、800万分解能。
トルクとスピードを追求したA6は、高効率と小型化を両立させた設計。革新の跡は、モータの心臓部に現れます。従来は回転する部分であるロータの外側に貼り付けていたリング形や弓形の磁石を板状に変更してロータ内部に埋め込み、遠心力による剥離や割れを構造的に消し去りました。板状にしたことで磁石の曲面加工が不要になり、低コスト化にも貢献。また、巻線コイルの発熱対策は、液状のワニスにコイルを浸す方式から、コイルを収めたステータ部に高熱伝導樹脂を充填する方式に変更。廃液の削減でエコなモノづくりを実現しています。いずれも大きな変化でしたが、開発陣と製造担当が密に連携して量産体制を構築しました。
800万分解能とは、モータの周囲360度を800万という超高精度で刻む回転制御。モータに収まるエンコーダがその担い手です。たとえば、多関節ロボットにおけるモータの重要な役割は、「速く正確な位置決め」。また、エンコーダは微細な信号をもとに角度を検出するため、振動やノイズの影響を排除する設計が求められます。限られたスペースのなかで厳しい条件を満たす、技術者の奮闘が小さなパーツに凝縮されています。
ソフトウェア制御が、瞬時に位置決めを実行。
A6で採用したモータはトルクが大きい半面、回転のバラつきが課題でした。これをカバーしたのが、ソフトウェアによる制御です。サーボモータの価値は、正確に、狙い通りの場所まで回転すること。停止した瞬間に生じる微振動によるオーバーシュートを制してこそ、「高速応答」「高精度位置決め」の特長が実現します。ソフトウェアは、超細分化された位置情報をエンコーダから受け取り、瞬時の制御でオーバーシュートを防ぎます。
6軸多関節ロボットの先端ならば小さな機種を、半導体の製造装置ならば大型をと、お客さまのニーズは多様です。A6は出力50W~22kWをラインアップし、サーボアンプも8タイプを用意。さらに、通信方式は当社独自のRTEXとオープンネットワークのEtherCATの双方に対応しています。この組み合わせにシャフトやケーブルなどの仕様を掛け合わすと、A6ファミリーで3000種を超える膨大なバリエーション。その全てを視野に入れながら、開発チームはお客さまの生産現場で生じるノイズ、A6自身から生じるノイズ、それぞれの評価を積み重ねました。どんな環境下でも速く、正確に。MINAS刷新の期待に応えるべく、大規模なソフト開発が実行されました。
お客さまの製造ラインで役立つ。サーボモータは、幸せな事業。
西山 雅章 [開発責任者]
私はR&Dセンターの責任者として、2017年まで中国・珠海のパナソニック モータ珠海有限会社でA6の立ち上げを担当しました。モノづくりだけでなく、現地のフィールドエンジニアを強化したり、新たにショウルームをつくったり、カタログやウェブによるプロモーションに注力しました。中国は世界最大の市場であり、状況が目に見えて変わるスピード感ある市場。各社が性能を競うモータも、ダイナミックに切り替わっていきます。現地では「A6で、ライバル他社と肩を並べた」という手応えを感じ取りました。
後発の当社は、ややもすると自分たちの実力を低く見るところがありました。しかし、要素技術で勝てる、非常に多くの機種のオペレーションもできている。もう自信を持って取り組むべきだと、日本に帰任後はよくメンバーと話しています。モータはお客さまの製造現場を強くする、とても幸せな商材です。切削やプレス、実装など、あらゆる生産現場をもっと学び、自らの生産性を上げるとともに使っていただいたお客さまのご要望を次につなげてさらに商品を強くする。いい循環を組織的に生み出すことが、これからの目標です。
-あなたの信条は?
課題に対して逃げず、正面から突破する。難しいテーマも、広い視野で捉えて考えれば、ふといいアイディアが出るかもしれない。どんな難題も必ず解決できると信じています。
部品調達から製造ステップまで、A6ファミリーは「挑戦」の連続。
麻生 宜農 [モータ開発](写真左)
一言で表現すると「A6は挑戦の機種」です。樹脂をモータに注入する大幅な工程変更や、マグネットを中に埋め込んだ構成など、A6では技術とモノづくりの両面でたくさんの挑戦をしました。製造や生産技術を担当する中国のメンバーからの要望を受け止めつつ、「ここだけは......」と譲れない部分は、関係部署と調整して仕様を確立しました。多い年で年間180日を現地で過ごし、中国への渡航制限まで残すところあと数日、それくらいにギリギリの調整でした。自分たちが決めた目標を、粘り強い取り組みで達成できたことが誇りです。
-あなたの信条は?
目標を高く。これまでを振り返っても、最初の目標レベルが低いと良い商品はできません。「チャレンジ精神と高い目標で商品を構想する」。この姿勢には、みんなが共感してくれます。
下田 和弘 [エンコーダ開発](写真右)
エンコーダでこだわったのは、高分解能と小型化。分解能の肝は、光の明暗をつくるパターン設計技術です。高分解能に対応するため、内挿処理前の信号波形を正弦波波形に近づける設計を行いました。また、量産間際まで苦労したのが、小型化のために採用したコネクタです。中国の製造部門から、「挿入作業性が悪く、量産性が低すぎる」と声が出て、メーカーに金型の修正を交渉。品質向上につながるとのご判断で標準品として供給いただきましたが、大きなご負担をおかけました。従来比で約30%の小型化が実現できたのは、そうした部品一つひとつのおかげです。
-あなたの信条は?
分からなければ、素直に聞く。樹脂等の材料や成形等のモノづくり条件決めなど、自分に知識が不足している部分は、社内に各分野のエキスパートがいますから、私は恥ずかしがらずに意見を求めます。気軽に何でも相談し合える風土は、私たちの職場のいいところです。
量産直前まで追求した安定性。ソフト・ハードの連携で壁を越えた。
園田 大輔 [ソフト開発]
モータの特性は、設計段階から事前に聞いていたので、「こんな制御で回そう」とイメージ、理論づけはできていました。しかし、実際の開発は2年がかり。ピーク時には約60人が携わった大規模なソフト開発でした。サーボモータは用途が多岐にわたり、A6は無線LAN対応やネットワーク機能の制御も必要です。試験装置で測定してソフトのアルゴリズムを修正、これを何カ月も繰り返しました。リーダーとしてプロジェクトマネジメントを経験し、私自身もこの開発で大きく成長できました。「ものすごく、大変だった」も本音ですが(笑)。
-あなたの信条は?
担当する商品を好きになる。大学でモータを研究し、配属先も希望したぐらいで、制御自体がとにかく楽しい。A6でも新しいことを実現できました。仕事は楽しく、が重要です。
お客さまとの関係は、一本の線。"コンパチ"は死守する。
柴倉 伸幸 [マーケティング企画]
小型・軽量化、高分解能といったA6の特長が、お客さまにどんなメリットを生み出せるのか。マーケティングの私は「使い勝手」をお客さまの立場で見定めます。たとえば、モータの小型化は、ロボット分野では設備そのものを小型化できるメリットがありますが、半導体製造など大型装置に向けての訴求力にはならない。性能ばかりではなく、頭をリセットしてお客さまが求める商品を考え、個別のご要望にスピーディーにお応えできるかが、販売のポイントです。
A6の技術陣に私がお願いしたのは、お客さまが使っている今の設備との互換性です。お客さまとの関係は「点」ではなく「線」であるべき。長年にわたって当社の機器を使ってくださるお客さま、そのお客さまが使用する装置につけられないのであれば、意味がないのです。実は、機器の世代集約は電子部品から始まります。新製品のA6に搭載するのは新しいICやマイコンで、そこに「旧機種との互換性を」と言えば、技術陣は相当に困る。分かっているけれども、妥協せずに主張しました。今後もこの姿勢は崩さず、開発陣とともに、お客さまの満足を追求していきます。
-あなたの信条は?
常に前向きに仕事をし、前進する。ひとつの受注に浮かれてはダメだし、ひとつの失注にくよくよしても仕方がない。トータルの販売を伸ばすために、常に次の策を考えるのです。
冷静な視点で進むべき道を見極める。
吉村 剛 [経営企画]
歴史の長い産業用モータの事業。収益が上がらない厳しい時期もありました。2009年発売のA5から事業は軌道に乗り、A6で大きく市場を切り開きました。成長著しい中国市場の伸びをタイムリーに捉えられた要因は、早くから現地に進出したことに他なりません。製品性能を高めつつ、現地のお客さまにどんなアピールをするか、どうすれば試していただけるか、全員の努力を重ねてようやくA6が花開きました。
A6の性能は、お客さまの設備能力を大きく変革します。設備に組み込まれる産業用モータは他社製からの切り替えが難しいのですが、中国のお客さまは「少しでも性能の良いものを」と、常に新しいスペックに注目されます。営業部門からのフィードバックも得ながら、「お客さまが何を感じ、求めているか」を私は考えます。ライバルの動向を横にらみしつつ、差別化できる機能をニュートラルな目線で見極め、事業の方向性を模索します。企画・開発部門のメンバーには厳しい意見も言いますが、常に競合を意識した仕事をしようと呼び掛けています
-あなたの信条は?
Going My Way。我を通すのではなく、腹落ちを大事にして先に進む。いろいろな意見に流されては自分を無くしてしまいます。常々、部下にも伝えています。
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