効率的なバッテリーの活用で、環境負荷の軽減に貢献したい。
薄曇りの空が頭上を覆い、砂埃とスモッグに遮られて、目の前の視界がおぼろげになることも。入社3年目にはじめてインド出張を経験した福島みのりは、大気汚染の現状を目の当たりにした。「車の排気ガスなどによる大気汚染問題が深刻なインドでは、社会全体で環境改善に取り組んでおり、電動バイクの発展と普及もその施策のひとつとして位置づけられています。そうした社会背景や市場動向にあわせてパナソニック エナジー株式会社ではバッテリー関連のビジネスに注力しており、私は主にインドの電動二輪市場を開拓する営業として日々仕事に取り組んでいます」。
インドの電動バイク市場はやりがいとチャンスに満ちていると福島はいう。「パナソニック製品への信頼と期待は非常に高く、ビジネスのご相談を受ける機会も多いです。インドを代表する有名バイクメーカーから、新しく市場に参入されたベンチャー企業まで、取引先企業は幅広く、ご要望もさまざまです。私たちは日本から現地の販売会社の方と連携しながら、それらのニーズや課題に対する最適な製品はどれであるか?お客さまに採用してもらうにはどのようなアプローチ方法がいいかなどを検討しながら、お客さまのビジネスを後押しできるように取り組んでいます」。
福島がインド担当になった2021年当時、電動バイク用のバッテリー市場もコロナの影響を受けた。「コロナ禍においても、多くの国々からバッテリーの注文が寄せられていました。部品の供給などの課題で生産できる数量にも限りがあったので、インドに割り当てる製品確保にも限界があり、お客さまにご要望いただいていた数量よりも少ない数量での回答をせざるを得ない状況でした」。
しかし、次第にそうした状況も緩和されていき、生産体制の見直しや今後の市場動向の分析をすることで、インド市場に対して、さらなる商品の安定供給が可能となる道筋が見えてきた。「このタイミングこそ、お客さまにとっても私たちにとっても、またとないチャンスだと考え、当時の上司とともにインドへ向かいました。お客さまに、改めて当社の製品の魅力や有益性をアピール、さらにお客さまのご要望に応えられる数量の商品がご用意できることをお伝えした結果、無事に交渉は成立しました。上司からの助言や多くの方のフォローによって実現したこの商談を通じて、提案方法の検討や市場分析、お客さまとの接し方など、営業の仕事をする上で欠かせないものをたくさん学ぶことができました」。この提案によって、バイクメーカーは前年よりも販売台数を伸ばし、福島が担当するインドの地域の販売実績においても継続的な受注増を実現、営業目標を大きく上回ることになったという。
こうしたインドでの成果を糧に、今後は東南アジアや欧米の市場を開拓したいと福島は語る。「営業職ですが市場分析も重要な仕事です。そのなかで、私が特に意識しているのが、市場分析をする際にはネットやメディアからの情報だけではなく、現場やお客さまの生の声を聞き、そこに隠されている本当の課題やヒントを見つけることです。そのために、お客さまの元に足を運び、積極的にコミュニケーションを図るようにしています」。
バッテリー技術の発展は世界的な課題である環境負荷の軽減を叶える効果的なものだと福島は考えている。「単純にバイクを動かす動力がガソリンから電気になれば、排気ガスは減ります。また、私たちの製品は製造工程で発生するCO2の削減などにも配慮しているため、環境に与える負担は抑えられます。もちろん、私たちの提案によって環境問題のすべてが解決できるとは思っていません。ですが、少しでも状況を改善できたり、地球温暖化を遅らせたりすることはできるはず。エネルギーに関わることで、もっと過ごしやすい世の中をつくっていきたいです」。
そんな福島が電気やエネルギーに関心を寄せ始めたのは化学領域を専攻していた学生時代の頃だった。「学生時代は電気化学の研究室でリチウムイオンキャパシタという分野を深く追求していました。私が取り組んだのは、スマホのバッテリーに採用される大容量の電気を溜められるリチウムイオン電池と、瞬間的に電気エネルギーを取り出せる電気二重層キャパシタの双方の特性を活かした新たなデバイスの性能向上を考える研究でした」。
就職活動では、人々のくらしに寄り添うモノづくりを叶えられる会社に絞って企業研究を行った。「パナソニックグループなら、モノづくりと電池分野の両方に携われることに魅力を感じました。また、パナソニックグループに就職した先輩から、仕事の幅広さや社風などの具体的な話を聞かせていただき、ここならやりがいを持って頑張れると思いました」。学生時代の学びを活かす研究職の道も考えたが、福島は営業職を志望した。もともとコミュニケーションが好きなタイプで、多くの人と関わりながら、課題解決やビジネスそのものを動かすという新しい世界に挑戦したかったからだ。
入社から5年目を迎える今、営業の仕事をしていくなかで、福島は新しい夢を描いている。「海外の販売会社とのやり取りや提案をする時に、製品のことや電池の技術的な知識が必要となる場面も少なくありません。そんな時ほど、学生時代に積み上げてきた電池の知識が理解を深めるのに役立っています。今の目標は技術者的な視点でも提案ができる営業のエキスパートになること。電池の知識と交渉力の両方を兼ね備えているからこそできる提案にチャレンジしたいです」。
<プロフィール>
*所属・内容等は取材当時(2024年9月)のものです。