人としての魅力を加えて、パナソニックを FAの「超一流ブランド」にしたい。
「人と接することが、本当に苦手でした」。よく通る声で、よどみなく語る犬山大志郎の仕事は、技術営業。話しぶりから想像するのは難しいが、小学校の頃は恥ずかしがり屋で、授業ではクラスメイトを前にして一言もしゃべれず、かたまってしまったこともあったという。中学校で始めたバスケットは体力が追いつかず断念し、内向的な性格に追い打ちをかけた。必然的に家のなかで遊ぶことが増え、木工や機械いじりにのめり込んでいった。木工では、鳥の巣箱やフラワーラックなどをつくった。ガーデニングが趣味の母のためだ。頼まれたわけではない。母のためになることが嬉しかった。
モノづくりへの興味はそのまま大学への進路につながり、機械工学科で人間工学を専攻した。取り組んだのは、製造現場における「視線操作できる目視検査システム」の構築。視線の移動やまばたきで操作でき、障がいのある方でも手足を使わず扱える、しかも安価なシステムをめざした。視線を読み取る技術は確立しておらず、ゼロベースからの挑戦。自分の考えがカタチになる醍醐味もあったが、誰かのためになる喜びが強かった。
そんな大学時代に転機が訪れた。苦手克服という大それた目的ではなかったが、接客業をアルバイトに選んだのだ。高級レストランのホール担当で、客層は幅広く政財界の重鎮から著名な文化人や芸能人も訪れた。人見知りなどと言っていられなかった。さまざまなお客さまに対応しているうちに、人への接し方も話し方も磨かれていった。さらに居酒屋のアルバイトも掛け持ちした。一転、カジュアルな接客。もはやそこには人見知りの犬山はいなかった。
パナソニックを就職先に選んだのも「人」が関わっている。「ものをつくる前に、人をつくる」という創業者の言葉に惹かれ、この会社なら人を大切に考え、自分も成長させてくれると思った。ただ就職活動当時、「技術」か「営業」か、どちらを選ぶか悩んだ。当時は募集職種に「技術営業」という枠はなかった。モノづくりは好きだが、お客さまの要望をわかっていないと的を得た商品はつくれない。結局「営業」を選んだ。グループ内の各工場へ自社の産業向け制御機器(FA機器)を提案し、困りごとを解決するのが主だった。「お客さまに何度もヒアリングを重ね、ニーズを深掘りして答えを探しました」。お客さまのためになることに手応えを感じ、人と接することが好きになっていった。
「営業」に携わっているなかで新たな扉が開かれた。所属部署に今の「技術営業」の元となる職種が確立され、そこに配属となった。一般の営業とは異なり、技術営業は導入の事前評価や立ち上げ後のフォローも行い、既存品で解決できない時は商品もつくる。「お客さまとの密接度が強くなり、最前線で最先端のモノづくりに携わることも可能なんです」。その成果が、世に出ようとしている。自ら発案、開発した工場監視システムだ。組織の枠を超えた商品のコラボで、かつてない汎用性と従来の1/10以下という導入コストを実現。スーパーやスポーツ会場への展開も期待されている。
技術に関する知識も、市場のトレンドも、人情も欠かせない。人として総合力が試される、技術営業。「人の魅力を加えて、FA市場でパナソニックを"超一流ブランド"にしたい」。それが夢だ。そのためにめざすのは、「犬山なら安心してまかせられる」存在になること。人と向き合いながら、モノづくりとも向き合う。思い描いていた理想の働き方が、目の前にある。
<プロフィール>
犬山 大志郎(いぬやま たいしろう)
技術営業
インダストリアルソリューションズ社
2011年入社 システム理工学部卒
祖父や母は絵画が得意で、兄もイラストレーターになるなど、芸術的な家系のなかで育つ。
インドア派は変わらず、今でもオフの時は自作したパソコンでゲームをたのしんでいる。
◆パナソニック採用HP
https://recruit.jpn.panasonic.com/
*所属・内容等は取材当時のものです。