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前田エマさん「毎日が三日の仕事」|僕らの時代 Vol.12

若き人びとよ。つくりあげられた今までの世紀のなかで、あなたがたは育ってきたけれど、こんどはあなたとあなたがたのこどものための世紀を、みずからの手でつくりあげなければならない時がきているのである。

(出典:『続・道をひらく』PHP研究所)」

自分らしい価値観をたいせつに、志をもって活躍している人とコラボレーションしていく「僕らの時代」。第12回目のゲストはモデルの前田エマさんです。

松下幸之助が未来を担う若者へのこしたメッセージに、今を生きる私たちはなんとこたえることができるでしょう。

幅広い表現領域で活躍するエマさん。幸之助の言葉から「仕事」について改めて感じた想いをつづってくれました。

前田エマ(まえだ・えま)
1992年神奈川県生まれ。東京造形大学卒業。モデル、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティ、キュレーションや勉強会の企画など、活動は多岐にわたり、エッセイやコラムの執筆も行っている。連載中のものに、オズマガジン「とりとめのない、日々のこと。」、みんなのミシマガジン「過去の学生」がある。声のブログ〈Voicy〉にて「エマらじお」を配信中。著書に小説集『動物になる日』(ちいさいミシマ社)がある。

Twitter / Instagram

https://nfbnfb.co.jp/model/emma_maeda/

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「毎日が三日の仕事」


 「三日の手伝い」という言葉があることを、お恥ずかしながらこの本と出会うまで知らなかった。

「たとえ三日間の手伝い仕事であっても、その仕事を生涯やるようなつもりで、刻一刻と精魂を込める、そんな真剣な心根があったなら、三日の期間の手伝いの範囲を越えて、そこから得るものは、はかり知れないものがある」

三日の手伝いだからほどほどに、適当に、それでは仕事に身が入らないし、仕事の喜びもなければ、働くことの感激もない。そして精魂込めて三日の手伝いができる人は、どんな小さな仕事にも打ち込めるというのである。

私は、文章を書いたりモデルの仕事をしたりして、お金を稼いでいる。しかしそれとは別に、この仕事で食べていけるようになってからも、アルバイトをしている。週に数回、飲食店で働き、1年に1度や2度は、少し長い期間、地方で住み込みのアルバイトをする。いろいろな仕事をする理由は、私は働くことがとても好きだし、働けるということに奇跡を感じているからだ。

私は今まで、いろいろなアルバイトを経験してきた。そしてそれを何倍も上回るほど、本当にたくさんのアルバイトに落ちてきた。学生時代はアルバイトをしたくても、びっくりするくらい面接に落ちた。なので、知り合いが紹介してくれたアルバイトを一生懸命にやった。豪雨の中で草むしりをしたり、工事現場に通って壁を塗ったり、住宅展示場で着ぐるみの中に入ったり、よくわからないまま知らない他人に頭を下げて謝ったりもした。どれも短いアルバイトだったけれど、そのどれもに学ぶべき人間の振る舞いや気付きが必ずあり、そういう体験が私を成長させてくれたように思う。

この世界に入ってからも、私はたくさんのオーディションに落ちた。多い時は週に3回くらい受けるのだが、バイト代はオーディションの交通費に消えていった。
仕事がしたくても仕事がないというのは、昔ほどでは無いけれど今でもたまにあることだ。
オーディションでもらえる仕事も、直接オファーが来る仕事も、文章を書く仕事も、毎日が綱渡りのような、考えては工夫しての繰り返しだ。どうしてこの仕事がしたいのか、どうしたらこの仕事を良い状態で作り上げることができるのか。毎日自分の心に耳を傾ける。

労働の感動や喜びが、どんな仕事にもあると私は信じたいし、そういう世界でなくてはならないと思っている。
しかし、そのことを見えなくしてしまうような困難や惰性、社会の仕組みや圧力が、日々の繰り返しには横たわっている。

私は自分の仕事に対して常に疑う視線を持っていたい。週に何度か飲食店で働くと、そこで触れる景色が自分を顧みるきっかけになる。年に何度か住み込みのアルバイトをすると、自分の普段の仕事や生活に対して、少し離れて考えることができる。そんなことを言うと、アルバイトでの仕事を舐めていると思われるかもしれない。そう思われたって構わない。大きな声で他人に自慢しようとは思わないが、「私って三日の手伝い仕事に精魂を込められる人間なんですよ。なぜなら私の人生は、全部が三日の手伝いなのですから」と、胸を張って言えると思うのだ。



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noteマガジン『僕らの時代』は、様々なフィールドでソウゾウリョクを発揮し、挑戦を続けている方々とコラボレーションしていく連載企画です。
一人ひとりが持つユニークな価値観と生き方を、過去からのメッセージに反響させて“いま”に打ちつけたとき、世界はどのように響くのでしょうか――。

▼「新たな時代」全文はこちらから

https://youth-note.jpn.panasonic.com/n/n8690055d07f1