"YOUR NORMAL" STORY 3.
YOUR NORMALプロジェクトは、心と体のあり方、ジェンダーロール、関係性など 自分らしい人生を生きるために、性の幅広さの理解と考え方のアップデートに取り組むプロジェクトです。性を考えることへの偏見や障壁について考え、誰もが最も自分らしく自然体でいられる個"性"のもと、それぞれが自分の選択へ自信を持ち生きていくことができる社会の実現のため、企業として商品やサービスの選択肢をユーザーと一緒に模索する活動として取り組んでいます。
このインタビューは、人それぞれ異なる“普通”にふれ、「自分らしさ」を見つけるきっかけとなるよう制作した、ショートドキュメンタリームービー出演者に、自分にとっての"普通"をより深く語っていただいたものです。
(ショートムービー再生)
https://youtu.be/nz8_WMKDbRU
心地のいい自分の体や心のあり方を模索する時、すぐに自分らしい姿を見つけるのは難しいかもしれない。それでも自分らしさを探してしまう私たちは、どうやって毎日向き合う鏡の中の自分と、自然体で接していくことができるのか。今回は、日頃からメイクやネイルの練習をすることが楽しい、と話してくれたKaiさんに、自分らしい生き方の選択をするようになるまでのヒントをお聞きしました。
-----プロフィール-----
Kai Miyagi
北海道出身。大学では文学、社会学を専攻。2019年には日韓両国政府主催の国際プロジェクトに参画しジェンダーや日韓問題についてを学ぶ。現在はInstagramで media紡(@tsumugi2690)と感度。(@cancancando_jp)のデザイン、編集を行う。台湾とフィンランドのカルチャーが好き。
ー こんにちは、今日はよろしくお願いします。Kaiさんは、普段から社会課題についてメディアを立ち上げ発信したり、ジェンダーについて学んでいるという話をしていましたが、“普通”という言葉にどんな印象を持っていますか?
Kai: “普通”という言葉に対しては、違和感を抱くことが多くあります。例えば、大学2年生の時から日韓関係について学び始めたのですが。過去に韓国について大学の同級生の間で話題になった際、僕はおかしいと感じたけど、他の子たちはおかしいと思っていないっていう状況があって。「えーでもさ、韓国って普通に反日じゃん。」と言う人がいて、普通ってなんだろう?と思ったんです。「意識高いね〜!」って言われたり。ジェンダーに関しても飲み会で、「男なのに、その飲み物飲むの?」と言われ、逆もあった。「女子なのに日本酒飲むの?」って。そういった会話に、すごくもやもやするんです。僕は、”普通”ってすげー嫌だなって。人それぞれに“普通”ってあるものだから、それはそれでいいと思うのですが、自分の普通を、他人に押し付けるのは、なんか変だなって。
ー Kaiさんがジェンダーに興味を持ち始めたきっかけは?
Kai: おばがフェミニストなのですが、アメリカに住んでいて。彼女が日本に来た時に、チママンダさんの『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』っていう本を置いて行ったんです。その本を読んで、”こういう価値観もあるんだ”って気づいて。高校時代に、数学の先生が「女尊男卑時代になったよね。」って話をしていた時、すごく違和感があったんですよ。当時ジェンダーに強い関心はなかったけれど、そこがこう、点と点が繋がったように感じたんです。大学では社会学を勉強していたのでジェンダーもちょっと触れていて、それをもっと広げたいと思って学び始めました。
ー 何かを学び、知り始めると違和感を抱く瞬間が増えるのかなと感じたのですが、どう向き合っていますか?
Kai: 圧倒的に、増えますよね。テレビのニュースや、ワイドショーが見れなかったりするし、Twitterなどを見ていても一喜一憂が激しくなっているのはすごくあるな、と感じています。知れば知るほど違和感を覚えるようになったな、と。良くも悪くも。その時は、「これっておかしいよね。」と思うことをネットで共有したり、話し合ったり。やっぱり、友達の存在が大きいと思います。今は、SNSメディアをやっている中でslack内でとにかくモヤモヤしていることを話し合うようにしているんです。モヤモヤを、モヤモヤで終わらせないように。そこから、意識が変わったかなと思います。
ー今日のネイル、とっても素敵だと感じたのですが、自分らしさを表現したいなと思う際に、まだハードルだなと感じることってありますか?
Kai: 自分の身の回りの人や、それを許容してくれる人の前だと、こうやって自分のままでいられるけど、コンフォートゾーンから出た時に、ちょっと怖い感じはするかな。上の世代とか。例えば、親戚には絶対なんか言われそうだなとか。意識的に、隠したりとかはしているかもしれないですね。自分の中で、これこそが男、みたいなイメージや、男として生きる、みたいなのは別になくて。ないんですけど、いわゆるマッチョだったり、身長が高かったり、世間の考えるであろう理想の「男性像」と照らし合わされたりとかすると、結構息苦しくなることがありますね。趣味やファッションにおいても、多様性が少ないと感じたりはします。ジェンダーや環境問題についてもそうですが、発信している人たちの中で男性が少ないなと思うこともあります。
ー 最初にメイクをやってみたいなって思ったきっかけは何だったのでしょう?
Kai: もともと自分の肌にコンプレックスがあって、それを覆い隠すじゃないんですけど、どうにかしたいなって思ったんです。最初は肌が荒れていたけれどケアをすることによって治った人もいたことを知って、スキンケアから始めました。 それから、ビューティ系のイベントに色々と参加する中で、こういうことしてもいいんだ、とか、これかわいいな、かっこいいいな、素敵だなって思うようになって、ネイルやメイクもやるようになりました。あとはやっぱり、韓国のメイクの影響はありますね。ジェンダーフリーな広告を見たり、自分の好きなK-POPとか俳優さんがメイクをしているのを見たり。
ー 周囲にやっている人がいると、挑戦しやすくなりますよね。
Kai: そうですね。周囲や、自分の知っている人にやっている人がいないと、やりたくても挑戦できないけれど、ファーストペンギン的な人がいてくれると「この人もやってるからやってみようかな。」っていう気にもなるし。結果的に、こうやってやれるようになっています。家族も変わっているかもしれないのですが、僕、幼稚園の時からネイルしてたんですよね。だから今メイクをすることも、受け入れられているし、妹も「何でお前の手の方が綺麗なんだよ〜。」みたいに話すことができていて、普通に受け入れられているかな、っていう感じです。
ー 周囲から否定されない、受け入れられるってすごく大切なことですよね。
Kai: そうですね、周囲には恵まれていると感じます。最近は、ビューティブランドの店員さんでも男性が増えて入りやすかったり。ただ原宿のコスメのお店で、モヤモヤしたことがありました。女性の友人と、前の女性にも、後ろの人にもクーポンを配ったのに、自分には配られなくて。その友人に、クーポンを見せてもらったら性別に制限とかないんですよ。付き添いだと思われたのか、なぜもらえなかったのかはわかりませんが、びっくりしちゃいました。心臓がグイッと掴まれるような思いがしましたね。
ー そういったモヤモヤに遭遇することもありながら、今の社会で生きていく上で、いわゆる一般的とされる道を歩むほうが安心だと思ってしまうことはないですか?
Kai: 就活の時期には、自分も大企業に就職して下積みをした上で、自分のやりたいことをやるんだっていうのが、頭の中にありました。結局、周りと同じような動きするのかなって。でも、結局はできなかった。早期選考を受けている際に、”あ、なんかこれ違うな”って思いながらやっていると、結局そこには選ばれなかったとか。「もっと勉強したい」という気持ちを持ちながら就活することに、違和感があって。で、選考もそんなにうまくいかない。でも、じゃあ他の企業に行きたいかと言うとそうではなかったんですよね。最終的には、じゃあもっと勉強しようって考えて、今は台湾に行きたいなって気持ちがあります。
ー 大多数の人たちと異なる選択をすることって、勇気がいるじゃないですか。就職活動をしないっていう選択も、メイクをすることもそうかもしれない。怖さを感じることもありそうですよね。
Kai: いや、怖いですね。めちゃくちゃ怖いし、今も実際路頭に迷っているというか、お金を稼ぐっていうところで、本当に、どうしようかなっていう葛藤があります。親に頼ってもいられないし、そこはすごい怖いことではあるんですけど。一方で、自分の今やっているメディアが、ちょっとずつちょっとずつ、うまくいき始めている。もともと天邪鬼で、みんなが「赤が好き」「青が好き」って答えると、「紫が好き」みたいに答えたくなるという面があって。大学時代もそういう選択をしていたから、結局それって今のこの自分に合ってるのかなって思ったりします。
ーそれが、Kaiさんにとっての自分らしさなんですね。その自分らしさを手に入れるために、何かしていることってありますか?
Kai:実は自分らしさを探しに、高校生の頃から京都に行ってたんですけど全然見つからなかった。周囲と馬が合わなくて、自分の居場所がなくなったみたいに感じる時に、五限をサボってバスで京都に向かったり。他に居場所があるんじゃないかっていうのもあったし、自分自身に対してギクシャクしている中で、どうやって生きていこうというか、どういう大学生活送りたいんだろうってう気持ちがありました。でも、キャンパスを一人で動くようになって、外の社会人や学生が主催しているイベントに飛び込んで、そこで関係を作るようになってから、その状況を脱しました。
ー 自分らしくいるための場所や、こういう話がしたいという仲間を自分で作りに行くことで意識が変わっていったんですね。
Kai: めちゃくちゃ変わりました。やっぱり大学の中だと話や経験が限られていましたが、外に出てみると、理系の大学生の人の理科学研究所と共同研究で人工精子を作っていますとか、昨日までカンボジアにいましたという人もいて。社会に出た人たちと出会って、自分の中の価値感がごちゃ混ぜにされたところもありました。その経験は、大きかったかなと思います。
ー少しずつ自分の範囲を広げていくことで自分らしさを見つけていっているのかなと感じたのですが、不安になったり迷った時、どうやってその気持ちを消化していますか?
Kai:友達や、自分が信頼できる人、この人の話なら聞きたいなと思う人たちに話を聞くっていうのがまず1つで。同じ世代の人だったら同じ不安を抱えているかもしれないし、上の世代だったらその不安を抱えていたけど、その不安を越境した上で今生きているかもしれないって考えたら、話をして色々教えてもらうことで、それが自分の不安の取り除き方になるかもしれないから。あとは、メモするとか。なんでこれが不安なんだろうとか、そもそもこの不安ってどこからきたんだろうとかを書いて、分析することは、よくやっていました。自分の現在地を確認することでかなり色々整理できるので、次のアクションはこれかなとか。人から聞いた話を自分の体験にそれを一回結びつけてみる、ということはあって。以前、ディスカッションイベントに参加した際に、「見た目が男性だから、彼女いるの?」っていう質問が嫌だという意見を聞いて、自分の中では衝撃的だったんです。自分も、これしてたなって気付くことができて。
ー 自分の中にある無意識のバイアスに気づいた時、落ち込むこともありそうですよね。そんな中で、メディアなどを立ち上げて発信していくことはとても勇気のいることだと思います。
Kai: そうですね。ジェンダーに関して自分が発信しているにもかかわらず、友達と喋っててそういった発言をしちゃう時もあって。気をつけるしかないのですが、友達に気づいた時は「教えて」って、お願いしています。自分がこうやってジェンダーに関して発信しだしてから、関心なかった友達とも話するようになったり。その中で、男性と女性で街を歩いている人たちに「あのカップル」って僕が言っちゃって、「え、でもさ、カップルとは限らなくない?」みたいな会話になることもあって。まずは、自分が特に仲のいい人たちと、ジェンダーに関心がある人たちにアプローチできたらいいなって考えていて。ゆくゆくは、まだ知らない人たちにも届けられたり、リアクションが生まれるような発信ができたらいいなって思っています。怖いですけどね。でも、ちょっとずつ高校時代の友達が、ジェンダーやsexについて発信しているアカウントをフォローしてくれたり、性の話をしてみる、ということができるようになったんです。タネを撒いてるようなイメージです。
ー 最後に、Kaiさんにとっての”普通”って何でしょう?
Kai: 自分にとっての”普通”…難しいですよね…でも、あんまり意識していないから、ありのままでいることが”普通”なのかなって思います。例えばメイクをやりたくない時はやらなければいいし、やりたければやればいいし、みたいな。本当にラフというか、等身大でいること自体が、自分にとっての”普通”になっていくのかなぁって思います。
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