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次世代の乗り物に搭載されるこれまでにない電池をつくりたい。

自分が電池をつくることになるなんて、転職するまでは考えもしなかった。大学院での専攻は化学で、電池はまったくの専門外。しかし、それでも渡邊公士が電池の開発に携わってみようと思ったのは、当時、EVの普及を促進する政策に大きな可能性を感じたことと、パナソニックグループであれば、なにかスケールの大きいことができると思ったからだった。

面談の時の採用担当者が話しやすく、自分のスキルや仕事内容、めざしたいキャリアなどを、しっかり会話できたことも大きかった。「おかげで働くイメージが明確にできましたし、自分の身体的な状況についても安心して伝えられました。私は目に障がいがあり、暗いところが見えにくいため、研究室などに少し不安があったのですが、入社が決まったら、すぐに上司やチームの人たちがいっしょにオフィスや、作業場のなかをまわってくれて。暗くて危険な場所を洗い出して、すべて明るい照明に変えてくれたんです。その対応が、とても嬉しかったですね」。

配属されたのは、パナソニック エナジー株式会社の研究開発部門。そこで、リチウムイオン電池の性能向上のための、材料の選定と評価を担当することになった。「電池は『電解液』、『負極』、『正極』、『セパレーター』で構成されていて、それぞれチームに分かれて研究をしています。私は『負極』の開発チームに入って、負極部品の材料を変えたり、添加するものの割合を変えたりしながら、それが電池の全体性能にどんな影響を与えるのかを分析していました」。しかし、電池についての知識がほとんどなかった渡邊にとって、はじめは分からないことばかりだった。そこでまず先輩から薦められた本で、基礎的な知識を学んだ。疑問が出てくると、職場の人たちに声をかけ理解できるまで聞いた。仕事中でも、みんな手を止めて丁寧に教えてくれたことがありがたかった。そうやって、一つひとつ電池の知識を吸収していった。

現在、渡邊は、近い将来に市場導入される次世代電池の開発に向けて、革新的な要素技術の探索を行っている。最新の技術や材料を調査し、試作・評価を通じてその可能性を検証し続ける毎日だ。「求める性能がなかなか出なくて頭を悩ませることが多いですが、原因を突き止め、チームのみんなで解決策を考え、なんとか想定通りの性能を出すことができた時、データを見るのが本当にたのしいです。たとえば寿命評価をしている時は、毎週電池の状態に変化があるのかを確認するのですが、いつも今日は調子どうかなーと思いながら見にいくんです。もう生き物を飼っている感覚ですね」。

また渡邊は、研究開発において「アイデア検討会」が大事だと言う。これは持ち回りで自分たちが取り組んでいるテーマに関連しそうな新しい技術を探し、チームのみんなに共有する会で、ここから生まれたアイデアも多数ある。「2カ月に1回、自分の担当が回ってくるので、論文を調べるなどして準備をするのですが、研究の忙しい時期と重なってしまい、合間で時間を見つけながら準備を進めていたことがあって。帰宅しても、お風呂に入りながらなんとなく考えていたのですが、突然、突拍子もないアイデアが浮かんだんです」。それは、社内にあったある技術の派生技術で、電池材料の組み立て方を変える、これまでにないアイデアだった。早速みんなに発表したところ、上司や他部門からも高い評価を受け、すぐに検証に向けて具体的なプロジェクトが動き出した。「いまは試作段階に入っているのですが、こんな風に自分のアイデアが形になるなんて、本当に嬉しいですね。大変ですが、毎日ワクワクしながら仕事しています」。

いまや電気を使うあらゆる製品に搭載されている電池。その進化は、便利で快適なこれからのくらしには欠かせない。「私の夢は、リチウムイオン電池のスペシャリストとして自分が開発した技術を社会のすみずみまで行き渡らせて、人々のよりよいくらしを支えること。たとえば私が携わった電池が、空飛ぶ車みたいな、次世代の乗り物を動かすようになる。そんなことが実現できたら最高だなって思っています」。

<プロフィール>

渡邊 公士(わたなべ たかし)
材料開発
パナソニック エナジー株式会社
2018年キャリア入社 総合理工学研究科卒

障がい種別:視覚障がい
*両目とも増殖性硝子体網膜症発症し、片目失明、他方も重度の視野狭窄。
混雑した場所および暗所作業が困難。

休みの日に2人の娘と遊ぶことが癒しの時間。上の子がどんどん言葉を覚えていくことや、下の子が日に日に歩けるようになっていくことに感動の日々。最近気がかりなことは、娘たちがママ派になりつつあること。

未来のくらしを支える電池で、
幸せの、チカラに。

◆パナソニックグループ採用HP
https://recruit.jpn.panasonic.com/

*所属・内容等は取材当時(2024年9月)のものです。