正解のない世界を生きる。――『未来の教育会議 from AkeruE』オープニングイベント【後編】
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正解のない世界を生きる。――『未来の教育会議 from AkeruE』オープニングイベント【後編】

2021年4月3日にオープンしたパナソニック クリエイティブ ミュージアム 「AkeruE(アケルエ)」。自由なひらめきを育むこの空間では、STEAM教育の手法を取り入れた横断的な学習スタイルを取り入れています。

オープニングイベントでは、「なぜ今STEAM教育が必要とされているのか」をテーマに、その本質と実践について、有識者の方を招いたトークセッションを実施しました。セッションの様子を前後編に分けてお伝えします。

▼【前編】「これからの時代に必要な教育とは?」レポートはこちら

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<セッション②『『STEAM教育の本質と未来の扉をアケル人づくりについて』>
●登壇者

・五十嵐 美樹氏(サイエンスエデュテイナー)
・筧 康明氏(研究者・メディアアーティスト、東京大学准教@授)
・川村 康文氏(東京理科大学 理学部教授)
・安藤 健(パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部 ロボティクス推進室室長)


●ファシリテーター
・井上 祐巳梨(STEAM JAPAN編集長 株式会社Barbara Pool 代表取締役)

自分なりの解決策をアウトプットするための学びとは

トークセッションの冒頭、ファシリテーターの井上祐巳梨さんがSTEAM教育の概要やそれを取り巻く現状について紹介。この新しい教育手法への期待が語られました。

文部科学省ではSTEAM教育を「各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育」と定義しています。教室内にとどまらず、リアルな課題に向き合う人材を育てるこの考え方は2018年から経済省で行われている実証事業「未来の教室」の中でもキーワードとなっています。

文理を問わず知識を組み合わせ、自分なりの解決策をアウトプットする。そんなサイクルを「学びのSTEAM化」と呼んでいます。

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井上:  ⼀般社団法⼈STEAM JAPANでは、STEAM教育を「未来の新しい価値を創る当事者を育む学び」と伝えています。変化の激しい時代に解決策を見つけ実践できる子どもを育てていくことが重要です。

空にかかる虹と、教室の学びがつながった原体験

ダンスと科学を掛け合わせたパフォーマンスで学びの楽しさを伝えているサイエンスエデュテイナーの五十嵐美樹さんは、サイエンスショーを通じてどんなメッセージを届けたいのか想いを語りました。

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五十嵐: 子どもたちに実験を披露すると「YouTubeでみたことある!」と反応してくれます。ですが、実験の結果だけを知っていることが多いので、なぜそうなったのか、という過程まで考える機会があるといいなと思います。

正解のない世界では、自分なりの問いをたて、仮説をもち、実験をしてみるという探求心が必要だと思います。パフォーマンスでも、自分なりの仮説を大切にするということを伝えたいです。

幼い頃は理系分野が得意ではなかったという五十嵐さん。好きになったきっかけは学校の授業の虹の実験でした。「虹が教室で学んだ原理とつながったとき、学びが自分ごと化されて興味を持つようになりました」と笑顔で語ります。

幼い頃の自分のように科学に興味を持っていない子どもたちにとっても、商業施設などではダンスという表現を加えることで立ち止まるきっかけになるのではないか。自身のパフォーマンスにも仮説と検証を続けています。

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「なぜこれを創ったのか」WHYやWHATを自ら考え伝えていく

AkeruEに展示されたインスタレーション作品「Coworo」の作者である筧康明さんは、これからの創り手に求められるマインドを以下のように共有します。

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筧: 「なぜこれを創ったか。これは何なのか」。AkeruEで子どもたちが創った作品には、それぞれコンセプトが添えられていました。ゴールが与えられれば、そこを目指して方法を調べればいいけれど、「あなたは何を創りますか?」と問われたとき、HOWだけではなくWHYやWHATを自ら考え伝えることは、意義深いと思います。

▼筧さんと松信卓也さん(エンジニア)による「Coworo」は、隆起・変形する液体を用いたインスタレーション作品です。

筧さんの創造の源は子ども時代にさかのぼります。
家にゲーム機がなかった筧さんは、友だち達の気をひくために、みんなが知っている遊びのルールを自分たちでリメイクする「昔の遊びクラブ」を立ち上げたそうです。ありもののメディアではなく、自分らしさを加えた新しい手法を誰かと共有し楽しむことは、今の活動の原体験となっていると言います。

筧: 大学時代、自分が研究室で黙々とつくっていたものを展示会に出す機会がありました。会場で、自分の作品にふれた人が笑顔になる瞬間を見てしまったんです。以降、この世界から離れられなくなりました。

「自分もアーティストなんだ」と信じられる場

AkeruE以前の施設、RiSuPia(リスーピア)の立ち上げ時からパナソニックセンター東京の取り組みに尽力いただいている東京理科大学理学部教授の川村康文さん。リニューアルされた施設への期待を、「人を育てたい」という強い想いと共に語りました。

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川村: 歴史を振り返ると、すごい発明家だけが「発明家」と呼ばれています。そうではなく、みんなが発明家になれる環境が必要だと思います。

AkeruEは子どもたちが「理科を勉強している」と思うのではなく、「自分もアーティストなんだ」と信じられる場として、次世代をインスパイアしてほしい。STEAMの”A”は「AkeruE」の”A”かもしれませんね(笑)。

AkeruEのアート作品は、その成り立ちが全て科学技術に基づいています。川村さんは各作品の仕組みを体験する原理展示を監修。不思議なアートへの理解や気づきを深めます。

▼各アート作品には関連展示が隣接しその原理を体験できます。

”Seeing is knowing, but touching is understanding.”

パナソニックでロボティクス関連事業を幅広く取組む安藤健さんは、「STEM」から「STEAM」への変化をこう解釈します。

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安藤: 「ART」の中には、芸術だけではなく歴史や地理など「リベラルアーツ」という意味合いがあると思います。各分野を縦横無尽にいきかう人材がますます求められていく。

ロボットの分野では、スピードや正確性を重視したSTEM発想が基本でしたが、今後は「どんな問題を解決するべきか」「そもそもロボットで解決しなくても良いのではないか」というメタ認知の発想が必要になっていくと思います。AkeruEを通じてそういう感性が育っていくといいなと思います。

実際にAkeruEを見た安藤さんは、想像を超えた展示体験に「百聞は一見にし如かずでした」と感想を続けます。

安藤: ロボット研究でも”Seeing is knowing”という言葉をよく使います。ただ、これには続きがあるんです。

”Seeing is knowing, but touching is understanding."
見て、触る。ときに壊れてしまっても、物理的に体験することが理解を深めると考えています。

AkeruEでひらめきに出会えるのは、子どもたちだけではありません。自然は一生かかっても解き明かせない不思議に溢れ、人間のくらしの中にもいたるところに知識が組み合わさった技が隠れています。

物をみる目線やスケールが変わる。知識や情報がクロスする。

そんなスイッチがちりばめられたAkeruEでの体験は、世界へつながる新しい扉を“アケル”鍵となるでしょう。

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