革新的なデザインで口腔洗浄器の新しい価値を提案。〜ジェットウォッシャードルツ〜
歯ブラシでは届きにくい歯間や歯周ポケットの汚れを、独自技術のキャビテーション噴流で洗い流すジェットウォッシャードルツ。EW-DJ71(以下、DJ71)による水流は、約1週間で歯ぐきの健康を推進します※。その効果と斬新な円筒形のデザインは発売直後から各種メディアで注目を浴び、ユーザーの口コミが拡散しました。
人々のオーラルケアへの関心は年々高まりをみせており、近年は歯周病と全身疾患との因果関係が研究で解明されつつあります。しかし、パナソニックの口腔洗浄器は20年以上も旧デザインのまま。開発メンバーは「より高性能で、現代的なデザインで市場拡大を」と、その重い扉を開きました。
※継続使用の効果を第三者機関で実証
<TALK 1>Doltzの世界を描く
円筒形でシンメトリーな口腔洗浄器、サニタリー空間になじむデザインに。
共通のコンセプトは「プロ&クリーン」。
ーDJ71は円筒形で、旧モデルからイメージを大胆に刷新。その狙いはどこにあったのでしょうか。
光安:前のモデルは超ロングランの商品で、特に注意を払われない商品になっていました。四角いタンクが「まるで水槽のようだ」と、やゆされるくらい確かにレトロなデザイン。オーラルケアのラインアップ「Doltz」を展開するため、電動歯ブラシなどと統一した世界観でイメージを合わせる必要がありました。
別所:2010年ポケットドルツのヒットで、当社オーラルケア商品がビューティケア商品の印象が強まりました。それが次第に落ち着いたことが転機です。「われわれの事業目標は、歯周病ケアである」と定め、オーラルケアの本質であるクリニカルな要素を取り入れた、Doltzのコンセプト「プロ&クリーン」へと移行しました。
光安:国内で口腔洗浄器の普及率はわずか1%。店頭では試せない商品なので、まずは認知度を上げ、興味を持ってもらえるようにとデザインの刷新を進めました。
別所:お口に深刻な悩みを抱える方しか使わない。そのイメージを変え、多くのお客さまの生活に溶け込む商品にしたいという思いがデザインに宿っています。シンメトリーな円筒形、そこに機能性が両立しています。たとえば、ハンドルは取り回しが良いマグネット方式で、カールホースも収納式でスッキリ。そうした工夫は、サニタリー商品に欠かせない清潔感につながります。
光安:初めて見た円筒形のモックアップ、その衝撃は忘れられません。私の想定を超えていて、すごく嬉しかった。ただし、「こんなに変わって本当に大丈夫か」といった意見も多かったんです。
別所:企画当初のスケッチを見ると、たくさんのバリエーションがあります。スクエアな形や楕円形など、比較検討をした上でやはり円筒形に決まった。
光安:商品がヒットし、私たちの仮説は間違っていなかったと安心しました。
想定外のレビュー、話題が話題を呼ぶ。
ーYouTubeで配信した動画「FLORAL PLATE」は250万再生を超えて大きな話題に。発売後、どんな反響が印象に残っていますか。
光安:あのムービーは、美しい絵皿から始まる意外な展開。若い世代を狙って仕掛けましたが、世界各地から「イベント用にあの絵皿を貸して」と要望があり、反響は想像以上でした。
別所:世界の主要デザイン賞で4冠(red dot、グッドデザイン、iF賞、中国家電博デザイン賞)を獲得した商品は珍しいと思います。欧州では使いやすさへの配慮が評価され、中国も口腔洗浄ケアへの関心が非常に高い。4冠で口腔洗浄器の知名度が高まりました。
光安:国内の反響もすごかった。DJ71発売直後にタイミング良く、テレビ番組で口腔洗浄器が取り上げられ、たちまち品薄になったこともありました。また口コミサイトのユーザーレビューで「口からザリガニが出てくる臭いがした」と独特の表現が。そこに注目したメディアが、口から飛び出すザリガニのイラストを描いて、話題が話題を呼びました。実際にはジェットウォッシャーを使用しても、口からザリガニは出ませんけどね(笑)。
別所:われわれも「プロ&クリーン」のコンセプトを具現化するために歯科医へのヒアリングを実践しています。器具がどう使われ、清潔に保つ工夫などを情報収集しています。
光安:ここ数年、大人になって歯列矯正を始める方が増えました。私は子供の頃に矯正をしましたが、矯正器具に食べかすが挟まりやすく、ケアが難しい。そんな方を意識して商品紹介ムービーで矯正器具に引っかかった汚れを水流が吹き飛ばすシーンを描きました。
別所:日常使いはポイントですね。さらに使いやすく、日々の生活になじむデザインで口腔ケアを始めるきっかけを生み出したい。ラインアップを広げ、選択肢も増やしたいですね。
<TALK 2>新たな価値を製品に
グローバル市場に、もっと届けたい!DJ71はオーラルケアの新機軸になる。
言わば全てが変更点。ちょっと大変でした。
開発を担当した皆さんは、それぞれどこに思い入れがありますか。
谷口:私の担当はノズルの設計開発で、その形状がいちばんのこだわりです。企画段階からR&D部門とともに考え、目を付けたのが「キャビテーション噴流」。この技術は、ずっと研究されてきましたが、小さなバブルが安定せず商品化できていなかったんです。ファインバブルの業界で情報収集して、少しずつ特性をつかみました。
星野:ひとつ挙げるなら、私は底面に収めたポンプブロックです。丸いデザインはデッドスペースができるし、使えるモータのサイズも高さが制限される。圧力が出るポンプをそこに押し込むのに苦労しました。
桑山:私が担当する回路は、そのポンプをいかに安定して動かすか。天面に水圧のボタンがあるので、2つの基板をT字型に配置しました。ポイントはグローバル対応。各国の電圧に応じて切り替わる回路を小型で実現しました。
山崎:DJ71の製造拠点は、中国の「パナソニック 万宝APビューティ・リビング広州(有)」です。初めてづくしの設計、それを安定して組み上げ、いかに全数品質保証するかが工場側の悩ましいところ。たとえば、曲がったノズルには金属の管が入っています。その精度が水流の安定に直結する。また、円筒形で防水もすごく複雑。水流はノズルの全数検査で、防水は4段階の全数検査設備をつくり、厳重なチェック体制を確立しました。
星野:製造側に迷惑を掛けたのが、タンク周辺の設計でした。モノづくり上、狙いの形状を維持することが難しく、本体との間にすき間ができてしまう。樹脂を成形する温度やスピードの管理幅が狭く、コントロールできない。
山崎:現場はケンカ腰で星野さんに迫っていた。金型を見直し、いろいろな方向から手を打つことで、バラツキ補正には1カ月ほどかかったけども、何とか改善できました。
桑山:開発期間の後半では、日本で星野さんの姿を見かけなくなりましたよね(笑)。テレビ会議ではいつも中国工場側から参加していた記憶があります。
お客さまの高評価が、プロ魂を突き動かす。
ー開発途中から現在、これからにつながる思いを聞かせてください。
谷口:私が見ても古臭かった旧型、それがこうも変わる。キャビテーション噴流で他社と差別化もできる。やりがいのある開発でした。前の機種と比べるとマイルドに感じますが、「これはこれでいい水流だ」とお客さまの評価をいただき、嬉しかったですね。
山崎:工場側も、その良さをお客さまが実感してくれることがいちばんです。製造現場が一段落したのは量産開始半年後でしたが、その間も「市場ですごく話題になっている」と耳に入りますし、頑張りがいがありましたね。
桑山:私は今回の商品開発以前から家で、旧型を使っていたんですけど、デザインが古くていつも棚に隠して使ってました。だから今回のデザインは、お客さま目線で「これは早く家で使いたい!」と思いました。
星野:この形にこだわった理由が海外市場。国外の他社製は角形が一般的で、売り場にずらりと並んでいます。海外で弱者のわれわれが、そこに角形デザインを並べても勝ち目がない。市場調査を繰り返し実施し、やはり円筒形だと。また水タンクが食洗機で洗えるように樹脂材料を選定したのも、何でも食洗機で洗う傾向が強い海外市場に目を向けていたからです。
山崎:私たち製造も、商品企画に説得力があったから頑張れた。グローバル市場で通用する仕様、その全てに説得力がありました。「そんなん、どっちでもええやん!」って話だったら応じないですよ(笑)。
桑山:展示会での反応も印象に残っています。特に外国の方。まず、円筒形に興味を示す。「これは口を洗う機器です」と説明すると驚いて、そこから話を聞いてくれる。きっと、日本以上に売れる商品に育ってくれると思います。
谷口:そう、海外でもっと売れてほしい。国内では認知度を上げる、海外はライバルに勝つ! ここですね。また、水流の技術には続きがあります。DJ71の次に発売したハンディー型でさらに進化したキャビテーション噴流を実現できました。ここをスタート地点として、技術の蓄積と商品化をうまくつなげたいですね。
<TALK 3>私たちのミッション
罹患率が世界一の病気である歯周病を解決することが事業目標。
私がオーラル商品企画を担当したのは2013年、当社国内の口腔ケア商品うち電動歯ブラシの売上構成比が9割を占めていた頃、口腔洗浄器は日陰の存在でした。DJ71に着手したのが2015年、現在では口腔洗浄器の比率を3割まで高めることができました。数字が物語るように、口腔洗浄器のポテンシャルを事業関係者に意識づけできた意義ある商品です。
特徴である円筒形デザインは当初、賛否両論でした。国内・海外で何度も受容性調査を行い、デザインをブラッシュアップ。9割の方がそのデザインを支持されたので、確証に変わりました。なかでも印象的だったのが、調査の日にいただいた一言。「発売されたら、絶対に買うから!」と、その言葉が忘れられません。パナソニックの口腔洗浄器は、従来機種でも満足度は高く「性能はよく分かっている。あとはデザインを何とかしてほしい」という声が非常に多かったのです。
罹患率が世界一の病気、歯周病を何とかしたい。それが私の根本にある思いであり、事業の目標です。日本でも成人の8割が罹患、それだけ多くの方が困っているのなら歯周病のリスクを軽減するお手伝いをすることがわれわれの使命。まだ口腔洗浄器は普及率が約1%、認知率も10%しかありません。
DJ71では「約1週間で歯ぐきの健康を推進」を達成しましたが、現状に満足せず「約3日で歯ぐきの健康を推進」の検討を進めています。性能向上とともに狙うのは普及率の向上です。新価値提案ができたDJ71を足がかりに、ラインアップをもっと強化していきます。
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