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大澤正彦さん「むちゅう」|僕らの時代 Vol. 4

自分らしい価値観をたいせつに、志をもって活躍している人とコラボレーションしていく「僕らの時代」。第4回目のゲストは日本大学文理学部次世代社会研究センター(RINGS)長・大澤正彦さんです。

若き人びとよ。
つくりあげられた今までの世紀のなかで、あなたがたは育ってきたけれど、
こんどはあなたとあなたがたのこどものための世紀を、
みずからの手でつくりあげなければならない時がきているのである。
(出典:『続・道をひらく』PHP研究所)」

松下幸之助が未来を担う若者へのこしたメッセージに、今を生きる私たちはなんとこたえることができるでしょう。

幼少期に抱いた夢を現実にしようと想像と創造を続ける大澤さんの決意とは――。

★★★

二十二世紀への展望は、ずっと人びとの関心をひき続けている。あと九十一年のことである。

あと九十一年で、ソウゾウの歴史の大きなフシを迎えて、新たな時代の幕がひらかれるだろうか。
二十二世紀はある日、突然やってくるかもしれないし、いつまでもやってこないかもしれない。それに至る歳月は、今日すでにただいまから始まっているし、その時代をどうつくりあげていくかは、今日ただいまのお互いの思い一つ、努力一つにかかっている。

誰かが、どうかするであろうという問題ではない。何とかなっていくであろうという話でもなければ、自分には無縁の遠い先の話でもない。

先人よ。つくりあげられた今までの世紀のなかで、僕らは育ってきたけれど、今も今までもこれからも僕と僕らのこどものための世紀を、みずからの手でつくりあげなければならない時だと思うのです。世界をどう変えるのか。日本をどんな国にしていくのか。そのなかで、自分はどんな役割を果たしていこうとするのか。二十二世紀は、もう始まっている。


あとがき

二二世紀は、二一〇一年にくるのだろうか。僕はそうは思っていない。二二世紀からきた有名すぎる猫型ロボットに、僕は二二世紀という言葉の意味すらも書き換えられてしまった。一九六九年に想像された彼は、さらなる想像を創造した。こんなこといいな。できたらいいな。と。彼の誕生日は、二一一二年九月三日。今日から数えてあと九十一年のことである。

二二世紀は、僕にとって未来である。希望である。幸福である。テクノロジーによって誰もが幸福に暮らす世界であり、そして僕の夢が叶った後の世界である。そしてソウゾウの最前線であり、ソウゾウの歴史の大きなフシでもある。

僕にとっての二二世紀は明日来るかもしれないし、千年たってもこないかもしれない。

こんな出来事があった。
二〇一五年六月、僕は人工知能(AI)学会が年に一回開催する全国大会に参加していた。
目玉イベントは、囲碁AIと女流棋士との公開対戦。結果は棋士の圧勝だった。
「囲碁でAIが人間に勝てるのは、十年以上は先だろう」
それが、日本中のAI研究者が集まって議論をした上での見解だった。

しかしある日、創造が想像を超えた。
あの見解からたった四ヶ月後、囲碁AIはヨーロッパチャンピオンを下した。

今まで、想像は創造の原動力だった。
しかし二一世紀の今、創造が加速している。創造は次なる創造を加速させる。
そして、たびたび創造が想像をも追い抜くようになった。

二二世紀を想像して、創造を続けても、
他の誰かが創造した二二世紀がある日、突然やってくるかもしれない。
もしかすると二二世紀は、いつまでもやってこないかもしれない。
時々、不安でソウゾウすることをやめてしまいそうになる。
それでも、ソウゾウの本質は、先人たちの時代からずっと変わらない。

― それに至る歳月は、今日すでにただいまから始まっているし、その時代をどうつくりあげていくかは、今日ただいまのお互いの思い一つ、努力一つにかかっている。

では、いつ、だれが、ソウゾウするのだろうか。

僕はよく、大学生のころを思い出す。
およそ三十年後の二〇四五年に起こるとされる、シンギュラリティが頻繁に取り上げられていたころだ。
外に出れば、いつも僕は聴衆だった。
勉強会、講演会、研究会、ニュース、本、雑誌、、、
どこででも先人たちは、創造が加速した三十年後の未来を語り、若き人びとを啓蒙した。
僕はそれをただ、聴いていた。

僕はその啓蒙に違和感を持ち始めた。
「今は、若き人びとが世紀をつくる時じゃない。だからあなたは聴衆なのだ。」
「三十年後の未来では、先人たちが世紀をつくる時じゃない。だから若き人びとに託すのだ。」
みずからの手で世紀をつくりあげなければならない時は、いつ始まり、いつ終わるのだろうか。
生まれた瞬間から、死ぬ瞬間まで、僕らは世紀のつくり手にはなれないだろうか。
三十年後の未来を語るなら、三十年後を生きる若き人びとは聴衆ではなく、
今、世紀のつくり手にならなければならないのではないか。
先人と若き人びとが、ともに世紀をつくり続けられないだろうか。

二〇一四年、僕は三十年というフシとともに、二二世紀への誓いを立てた。

三十年続くチームをいま結成する。
ともに二二世紀をつくり続ける。

あれから七年が経った。
あと、二三年の残り時間を目の前に、僕の志が揺らいだことはない。

『新たな時代』は、二三年後の二一世紀に思いを寄せた。
僕は今、同じ二三年後に向けて二二世紀への決意をここに残す。
ドラえもんをつくる。

大澤さん幼少期


大澤正彦(おおさわ・まさひこ)
1993年生まれ。日本大学文理学部次世代社会研究センター(RINGS)長。博士(工学)。物心がついた頃からドラえもんをつくることが夢。「世紀」という言葉を覚える前に「22世紀」という言葉を覚えたため、ずっと22世紀とはドラえもんがいる世界のことだと思っていた。
神経科学や認知科学の知見を応用した人工知能研究に取り組みつつ、一人でつくるドラえもんはドラえもんではないという思いから、コミュニティ活動にも注力。2014年に「30年続くチームを」と全脳アーキテクチャ若手の会を設立・2,600人規模にまで成長。2020年4月日本大学文理学部助教着任、同年12月 次世代社会研究センター(RINGS)を設立・「コミュニティとして開く新しい大学」をコンセプトに、大学・企業・自治体・個人を調和させながら、新しい未来のソウゾウに取り組む。著書に『ドラえもんを本気でつくる(PHP新書)』。

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noteマガジン『僕らの時代』は、様々なフィールドでソウゾウリョクを発揮し、挑戦を続けている方々とコラボレーションしていく連載企画です。
一人ひとりが持つユニークな価値観と生き方を、過去からのメッセージに反響させて“いま”に打ちつけたとき、世界はどのように響くのでしょうか――。

▼「新たな時代」全文はこちらから


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