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車載カメラの不良ゼロを達成し、安心・安全なクルマ社会に貢献したい。

横式紗彩は、子どもの頃、父の職場に連れて行ってもらった記憶がある。いつも忙しくあまりかまってもらえなかったが、「ここでみんなのために働いていたんだ」と思うと、父が輝いて見えた。そして、自分も父のように人の役に立つ仕事をしたいと思った。

学生時代、彼女の進んだ道のりは、チャレンジングで起伏に富んでいた。大学では、理工学部の応用生物学科を専攻。微生物であるアグロバクテリウムが持つ感染機構を利用して、より簡単に、低コストで、遺伝子を導入する方法について研究をしていた。意欲的に取り組んではいたが、オープンキャンパスで工学系の研究を見たのがきっかけで、モノづくりの魅力に大きく惹かれた。

「技術が秘める未知の可能性に魅せられ、『自分の手でモノづくりをしてみたい』『モノづくりを通じて人の役に立ちたい』という気持ちが大きくなりました」。そして猛勉強の末、大学院の選考に合格した。大学院では医工学を専攻。高周波数の超音波で体内観察ができるセンシングやイメージング技術を、医療分野や化粧品分野で応用するための研究に取り組んだ。

就職活動は、大学院で学んだ技術を活かし、より多くの人に貢献できる仕事を求めてさまざまな会社を回った。彼女の目に留まったのは、会社説明会で自分の仕事を楽しそうに話すパナソニックの社員だった。「今、こんな仕事をしていて、こんな夢があるといった話を熱心にされていて、とてもイキイキとして見えました。この会社に入ったらたのしそうだなと思ったのが、いちばん大きかったです」と入社の動機を語ってくれた。

入社後は、約1年間にわたりさまざまな研修を受けた。「特に品質管理は、今まで触れてこなかった分野でしたが、その立場から自分がどのように会社に貢献できるのかというイメージが少しずつ湧いてきました。また他職種の仕事についても理解を深めることで、相手目線に立ってものを考えることの重要性を知ることができたように思います」と振り返る。

2年目の4月から、晴れて車載の部門に配属。車載カメラの不具合品の電気解析業務や、生産工程での不良防止対策を担当した。お客さまから返却された不具合の出たカメラを解析し、その原因を特定。報告書をまとめて、原因となった工場や部品の仕入れ先に伝えるまでが主な仕事だ。はじめは先輩社員のOJTのもと、過去に事例のある比較的容易な案件の解析を行いながら知識やノウハウを身に付けていった。

ある日、経験したことのない難しい案件に遭遇した。通常、ひとつの不具合に対してひとつの症状が出ることが多いが、その案件は、その日や時間帯によってコロコロと症状が変わるという厄介なものだった。彼女の知っている方法では解析を進めることはできなかった。上司にアドバイスをもらい、回路図、配線図、仕様書を何度も読み返した。そして、怪しいと思われる要因を一つひとつつぶしていくしかなかった。「このまま解明できなかったら...」。そんな不安と闘いながら何日も検証作業を続けた。そして、電源の起動順序と信号の生成順序を辿るうちに、遂に要因を絞り込むことができた。「達成感?開放感?その両方かな?何とも言えない喜びを感じました」。

現在は、それまでの出荷後の不具合案件に加え、出荷前に見つかった不具合品の解析と報告書の作成、フィードバックを行っている。出荷前に不具合が見つかることは良いことだが、「オーバーキル」という課題があると言う。たとえば、OK/NGの判断基準、検査室の照度など、検査体制が適正でないために、不具合でないものまで不具合品とされてしまうことがあり出荷の遅れにつながる。こうした品質検査のルールづくりまでも彼女は行っている。

彼女に、この仕事でいちばん大切にしていることを尋ねた。「三現主義という言葉があります。"現場"で"現物"を観察し"現実"を認識したうえで問題解決を図るという意味ですが、やはり、カメラをつくっている現場や品質検査をしている現場を自分の目で確かめることが大事だと思っています。実際、日本や中国の工場に足を運びましたが、『ここに異物が入りやすそうだな』とか、『こういうミスが起きるかも』など、行ってはじめて分かることが多いことに驚きました。人の命に関わる可能性のある車載カメラなので、不具合の発生を1件でも減らせるよう、これからも現場に目を向けていきたいと思っています」。

完全自動運転のキーデバイスとなる車載カメラは、年々進化し、高いレベルの品質が要求される。その不具合品の発生防止と流出防止に取り組んでいる彼女には、夢がある。

「車載カメラの不良ゼロを達成することで、安心・安全なクルマ社会に貢献したいです。そのためには、製品の知識と解析のスキルを伸ばし、『この人に聞けば何でも分かる』と頼ってもらえる存在になりたいです。でも、夢が叶って不良がゼロになったら、私の仕事なくなっちゃうかな」と彼女はいたずらっぽく笑った。

<プロフィール>

横式 紗彩(よこしき さあや)
品質管理
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 
2019年入社 医工学専攻卒

出身は北海道。自然豊かな環境の中で子どもの頃はいつも公園で日が暮れるまで遊んでいた。趣味はテニスで、休みの日は仲間と一緒に汗を流している。最近嬉しかったのは、仕事で遅くまで残っていた時に、職場の方がおいしいお菓子を持ってきてくれたことだとか。

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*所属・内容等は取材当時のものです。