仕事も、プライベートも、全力投球して人生を豊かにしたい。
「夢中になって取り組んだソフトボール。特に高校ではプレーだけでなく、挨拶や礼儀、チームワークなど人間力もとことん鍛えてもらいました」。電池の品質管理に携わる横山恵は、ピッチャーとして全国大会をめざし、毎日暗くなるまで白球を投げていた頃を振り返った。「残念ながら全国大会は夢に終わりましたが、タフな精神力と体力は私の自慢です」。何事にも全力で取り組む横山の原点が、そこにある。
高校では理系のクラスに通っていた横山。もともと理科が好きで、大学も理工学部の環境・応用化学科に進学した。基礎化学に始まり高分子や光化学、熱力学や環境科学など幅広く学び、光化学研究室では量子ドットを研究していた。一方、授業が終わればサークルやダンスの練習に励み、週末はアルバイト。片道2時間かけて通学していたことを考えればハードだったが、体力には自信があったし毎日が充実していた。だが卒業後の進路を意識する頃になると、不安が芽生えてきた。「理系というわりに数字に弱いし、学問をゴリゴリ仕事に使うのはちょっと自信がない...」。
不安を抱えたまま就職活動が始まった。技術系職種の面接では専門性が問われたし、研究内容を掘り下げて尋ねられた。そのなかで、一人ひとりの人間性を見てくれていると感じた会社があった。パナソニックだ。交流会でも先輩社員は誠実で優しく、些細な質問にも丁寧に答えてくれた。そして興味が湧いたのは「品質管理」という仕事だ。技術系職種としてのスキルも必要だが、各部門と連携し、コミュニケーションで周りをまとめる力が重要だと知った。「チームプレーなら得意中の得意」。さらに「将来、子どもができても最前線で働きたい」、そんな夢も叶いそうな環境が整っていることも就職の決め手になった。
入社して印象的だったのは、丸1年間研修にあてられていたことだった。導入研修から工場実習、販売実習、海外での工場見学や市場調査など。なかでもパナソニックのお店で行われた販売実習が最も印象的だった。お店の人と一緒にお客さまのお宅へエアコンを付け替えに行ったり、テレビの映りがおかしいからと電話が入ると駆けつけたり。「『いつも、ありがとうね』そんなお客さまの一言。お店との信頼関係を物語る、まさにパナソニックの原点を目の当たりにして、仕事への想いを新たにしました」。さらに1年目の後半は、さまざまな部門の品質管理職種メンバーが集まって研修。「品質管理」の基本が叩き込まれた。この時の同期とは今も情報交換は欠かせないし、それぞれに配属された街へ旅行もする。部門を超えたヒューマンネットワークは横山のかけがえのない財産だ。
約1年の研修を終え、いよいよ配属。横山は、補聴器やタブレットのペンに使われる「ピン型リチウムイオン電池」の工程品質管理を担当することになった。工程トラブル発生時には、製造過程に出る不良品を分解して顕微鏡で解析したり、異常や変化点が無いか製造担当と機械のすみずみまで確認したりしながら原因究明を行い、品質ロス削減をめざす。だが早々、先輩も上司も不在のタイミングで、前例の無い工程トラブルが発生。半ばパニックのなか、研修で習ったことを一生懸命思い出した。「現場・現物・現実」の三現主義。数日間、工場につきっきりで、現物の評価と調査。製造や技術メンバーの助けを借りながら原因を突きとめた。「現場目線に立って対応してくれて、ありがとう」。製造の先輩からかけられた言葉が、横山の胸を熱くした。「これが、仕事の達成感なんだ」。
工場の人とのコミュニケーションの大切さを身にしみて実感した横山。愛着のある「ピン型リチウムイオン電池」に今も携わり、工場への確認データのフィードバックも丁寧さを心掛けている。そのかたわら、デジタルを活用して部門全体の業務革新をめざす「DXプロジェクト」に参画。品質情報を工場内でリアルタイム表示し予兆管理・傾向管理に活用することで、トラブルの未然防止・迅速な原因究明ができるようシステム改善を図っている。
横山の取り組みは専門分野にとどまらない。「社内複業制度」を活用し、営業企画にも携わり始めた。業務は、営業戦略の策定や店頭展示。複業は週に半日、メインの業務をフルコミットした上での挑戦だが横山に気負いはない。「乾電池の展示に私のアイディアが反映されるかも。そう思うとワクワクします」。エンドユーザーに近い仕事で視野が広がり、品質管理への思い入れも強まったという。まさに仕事に全力投球の横山。「将来、結婚してからも子育てと仕事を両立させ、人生を豊かにするのが夢」。もちろん、プライベートにも全力投球を続けていく。
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*所属・内容等は取材当時のものです。