自分の可能性に挑む人たちの お手伝いをしたい。
就職活動を始めた時は、地元の企業か公務員がいいと思っていた。別にこだわりがあったからじゃない。足に障がいのある自分にとって、安定して働ける環境の方がいいと思ったからだ。義足になって日が浅かったということもあってか、どうしても自信が持てなかった。やりたいことじゃなく、できること。自分がどうしたい、どうなりたいとかは考えない方がいいんじゃないかと思い始めていた。
でも、それでいいんだろうか。それは、あの事故に負けたことになるんじゃないか。心のなかは揺れていた。本当は、家を出てひとりでくらしながら、自分のやりたい仕事がしたい。そんな時に参加したのがパナソニックの説明会だった。障がい者採用の歴史がある会社だから安心かも。最初はそのくらいの気持ちだった。でも、面談員に自分のなかの迷いを素直に話してみたところ、こう言われた。「その迷いも、自分がこうなりたいという想いも、全部ぶつけてみたらどうかな」。
面接が進み、自分のことを話すうちに、だんだんと自分がやりたかったことを思い出してきた。将来は、人の成長を応援するような仕事をしよう。塾のアルバイトをしていた時に、生徒たちの笑顔を見てそう思ったんだった。そうだ、学生時代に勉強のたのしさを教えてくれた、あの塾の先生みたいになりたかったんだ。ひとつの夢が目を覚まそうとしていた。そして最後の面接が終わった時に、彼女の心は決まった。
配属は彼女の希望通り、人事だった。そして始まった研修。新しいことにワクワクする反面、気がかりなことも少なくなかった。同期と一緒の研修に本当についていけるのだろうか。しかしそれは次第に安心に変わった。立ち上がりにくい原因だったイスのひじ掛けは、何も言っていなかったのに職場の先輩が気付いて外してくれた。仕事の上で不便なことを相談したら、すぐに対応してもらえた。そして、何より仲間たちが支えてくれた。それでも販売実習の前は、やはり不安が募った。地元の販売店で実際に働き、現場を体験するこの研修は、移動も多いと聞いて、足のことを思うと体力的に心配だった。
「無理だったら無理って言ってね」。店長がそう言いながら、現場を体験させようとしてくれたことは、ありがたかった。販売店の仕事はものを売るだけでなく、お客さまの家に行ってエアコンの取り付けなどの作業を行うこともある。それが移動のきつい2階の部屋の時もあった。しかし彼女は、それを見ているだけでは気が済まなかった。たとえば持てるものを運ぶとか、自分にできることを見つけてはやり続けた。汗だくになりながら迎えた実習の最終日。最後のエアコンの取り付け作業は、予定よりも1時間早く終わった。気が付くと彼女は手際よくサポートができるようになっていた。そして店長の「明日から、保田さんがおらへんの、どうしよう」という言葉を聞いた時に、胸の奥から熱いものがこみ上げた。
今は、来年入社してくる内定者の入社に向けた準備をするのが彼女の仕事だ。配属についての面談の運営や入社手続きに関する書類管理、入社式の準備など内容はさまざまだ。そして任される仕事が増えてくると、充実感とともに「パナソニックは人をつくる会社」の意味が実感として分かるようになってきた。時折、サポートをした学生から「あの時はありがとうございました」と言われることがある。その言葉を聞く度に、自分はちゃんと夢に近づけていると感じながら、こんなことを思う。「もし障がいがあることで、何かを諦めなきゃいけないと思っている人がいたら、パナソニックに来て欲しいって言いたい。不安や心配事には会社が一緒に向き合ってくれるから、安心してやりたいことにチャレンジして欲しいって」。
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*所属・内容等は取材当時のものです。