Home IoT技術で、お客さまのくらしに寄り添う新しい価値をつくりたい。
大学院時代は、情報知能工学の研究と部活のオーケストラに没頭する毎日だった。夏休みには、日中はチェロを弾き、夜はプログラミングをし、また起きたらチェロを弾くという生活を続けた。肉体的にとてもハードであったが、彼女にとって、研究だけ、部活だけという大学生活はあり得なかった。「いろんなことをやりたい」という欲求が、子どもの頃から彼女を突き動かしてきた。大学や就職先を探す時も、それが彼女のものさしとなった。
パナソニックを選んだのは、人のくらしに密接に関わる住空間を、自社製品ですべてまかなえるほどの幅広い事業領域に魅力を感じたから。「いろんな事業があるから、いろんなモノづくりができるだろう」。単純にそう思った。技術者として長く働いていくことを考えた時、いろいろなことにチャレンジできるパナソニックが輝いて見えた。
配属されたのは、住宅の電設資材を開発する部署だった。彼女はそこで、Home IoT関連機器の開発を担当。上司にやりたいことを聞かれて、希望した仕事だった。入社3年目の頃、使用電力の計測ができる住宅分電盤「スマートコスモ」の開発メンバーに選ばれた。彼女にとってはじめての大規模プロジェクトで、全体のシステム設計と電力計測ユニットのソフトウェア開発を担当した。さまざまな部署からたくさんの人が集められた。関わる部署や人が増えるほど、コミュニケーションが難しくなった。何よりも大変だったのは、通信でつながるシステム機器のソフトづくりのプロセスだった。電力計測ユニットとつながる機器の各担当者と何度も話し合って課題を検討し、意見を摺り合わせながら仕様を決めなければならなかった。通信テストでエラーが出れば、相手の機器の開発も止まってしまう。エラーの原因が見つからない時は、チームのメンバーを巻き込み、みんなの知識と力を合わせて解決した。そんな苦労を重ねた末に「スマートコスモ」は完成した。「この仕事から学んだのは、コミュニケーションの大切さです。開発プロジェクトは、ひとつの絵をみんなで描くようなもの。みんなで話し合ってゴールを決め、役割を分担し、連携し、力を合わせてこそ、美しく大きな絵が描けるのだと思います」。そう語る彼女に、意見が衝突したらどうするか尋ねてみた。「まず、相手がなぜそう言っているのか、その背景を考えますね。それを知ることで相手の思いが分かり、納得できることがあれば、歩み寄れる余地が生まれたりもします。良いものをつくりたいという思いは、みんな一緒なので、話せばきっと分かり合えると思います」と彼女は微笑んだ。
現在、引き続きHome IoT関連機器の開発に従事している。今、取り組んでいるのは、省エネをはじめ、時短や防犯などくらしをトータルにサポートする「AiSEG2」の次期展開に向けた開発だ。この仕事のたのしさを尋ねると「開発した製品がお客さまのくらしにどのように役立つか、ワーキングマザー目線で捉えられるので、モチベーションにつながります。私も、入社以来、結婚や出産を経験し、ライフステージの変化とともに住空間に求めるものが変わることを実感しました。ひとりの時は、自由に過ごせる快適さや娯楽のあるたのしさを。結婚したあとは、共同生活の快適さやパートナーの健康など。さらに子どもが生まれると、家事を効率良く済ませてくれる家電に投資してでも、時間が欲しくなります。Home IoTの技術で、そうしたお客さまのくらしに寄り添った新しい価値をつくっていきたいと思います」。
ワーキングマザーの彼女の1日は、朝7時半に保育園に子どもを預けると、9時15分に出社。働いたあと、午後4時45分に会社を出て、子どもをお迎えに行く。「必要に応じて在宅勤務もできますし、場所と時間に縛られずに仕事ができるのが心強いですね。また、時短勤務もさせていただいていますし、子どもが熱を出したりなど、急な予定変更にも笑顔で『大丈夫ですよ』って言っていただいたり、周りの人の温かいサポートにも感謝しています」。入社して10年。技術者としてものをつくり、妻として家庭を守り、母として子どもを育てる。気が付けば、「いろんなことをやっている」自分がいた。彼女は、そんな忙しい毎日をたのしんでいるように見えた。
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*所属・内容等は取材当時のものです。