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「心が動く」ときに生まれるパワーとは?

いよいよ大阪・関西万博開催まで1年を切りました。「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトにしたパビリオンを出展するパナソニックでは、展示内容とパビリオン建築において“循環”を重要なキーワードに設定。実際に建築では、使用済み家電から回収したリサイクル鉄・銅や工場から出る端材などをパビリオンとして生まれ変わらせる計画を具体化しています。

取組みの一環として、端材に新たな可能性を見出し価値創造に挑戦する大阪大学の“ハザイソン”とコラボレートし、学生たちと端材を活かした商品開発も推進しています。今回の記事では、ハザイソンメンバーの学生とPHD 関西渉外・万博推進担当参与の小川さんとの対話から「これから必要とされるソウゾウ力とは?」について考えます。

・大阪大学 工学部地球総合工学科の西野さん(写真左)
・パナソニックホールディングス(株)
 関西渉外・万博推進担当参与の小川さん(写真中央)
・工学部応用自然科学科の成富さん(写真右)


心のままに感じた「いいな」を、
モノづくりに活かしていくために

―パビリオンは子どもたちに「ソウゾウする力」を解き放ってもらえる場になるよう、計画が進んでいます。「ソウゾウする力」って何でしょうか?

小川
私は2014年からパナソニックのオーディオ製品ブランド・Technicsの責任者を務めていますが、オーディオはスペックを満たしているだけでは「良い製品」とは言えない、と考えています。時にはスペックとは関係なく、不思議と人の心を揺さぶる音を出す製品に出会うこともある。数字や論理だけでは説明できない“何か”があって、私たちを感動させるパワーを持っているのです。
一方で、これまで主流だった大量生産・大量消費のモノづくりでは、数字や論理が何より大切にされてきました。しかし社会課題がより複層化している現在、今までの数字・論理の力だけで解決策を生み出すのが難しくなってきています。そこで光が当たり始めたのが、前述した“心を動かす”力です。つまり人々の感性に訴えかける力(=感性価値)を、これまでの数字・論理ベースのモノづくりと組み合わせることが必要になってきたのです。ソウゾウする力とはつまり、心のままに「いいな」と感じ、それをカタチにしていく力ではないでしょうか。

ソウゾウする楽しさに触れ、
その力を伸ばすパビリオンを目指して

―パビリオンは「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい」がコンセプトになっていますが、その背景についても教えてください。

小川
パナソニックグループの創業者である松下幸之助は、250年計画として「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を宣言しました。25年を1世代とし、その使命を10世代にわたって継承し、追求し続け、実現しようと訴えたのです。とはいえ「理想の社会」は時代によって形を変えるもの。明確にこれだ!と示すのはとても難しいですよね。大切なのは、それぞれの世代の人が自分自身もちゃんと幸せな人生を全うし、その上で次の世代に幸せを継承しながら「理想の社会とは何か」を磨き上げていくーーその積み重ねだと思うのです。
そのためにもパナソニックが出展するパビリオンは、子どもも大人も心を解放して自分と世界、自分と次世代とのつながりを感じながら、思い込みや前例などにとらわれないひらめき体験ができる場になったらいいな、と考えています。そこで得られた「ソウゾウする」きっかけが未来の社会課題につながる種になるかもしれません。

成富さん
なるほど、そういう背景があったのですね!もともとのパナソニックの企業理念と大阪・関西万博のテーマ“いのち”とのつながりも理解できました。自分の心を解放するってとても大切だと思います。私も自分の感覚を大切にしてモノづくりに挑戦したいと改めて感じました。

西野さん
自分はソウゾウの実験室にも参加したことがあり、そこでは子どもたちの発想力の豊かさに圧倒されました。社会人や大学生の想像をはるかに超えるイノベーティブなアイディアが、「こんな世界ならもっと楽しいはず!」「あんなモノもあると面白いな〜」とワクワクと一緒に次々に出て来るのです。パビリオンが子どもたちのクリエイティビティを刺激する場になってほしいのはもちろんですが、その姿に大人たちも刺激を受けられる場になり、共創が生まれたら素敵だなと思います。

小川
実はソウゾウする力を楽しみながら体験してもらえる場として、パナソニックセンター東京の「AkeruE(アケルエ)」を2021年にオープンしています。AkeruEは「ひらめき」をカタチにするミュージアムで、いろいろな材料や道具を使って自由に「あったらいいな」をつくったり、「なぜだろう?」「どうなっているんだろう?」と自分で問いを見つけて解を見つけ出したり。「できた!わかった!」と心を動かす体験がソウゾウする力を刺激する場になっているんですよ。

五感をきちんと使い、感度を上げる。
その積み重ねでソウゾウする力は鍛えられる

―子どもが持っているソウゾウする力、大人が身につけるにはどうすればいいですか?

小川
私は幼い頃からピアノを続けていて、今もジャズを演奏します。ジャズの醍醐味はやっぱり即興。楽譜通りに音を奏でるのではなく、その瞬間に感じたままを演奏し、表現するのです。といっても、何もないところから新しい音楽は生まれません。これまで聞いた音楽、弾いた曲、日常生活で耳に入ってきた音、自然の中で聞いた美しい音色などの蓄積から、瞬時に自分が意図せずに組み合わされて、表現として出てくるわけです。
人間は本来、自由な創造性を持っている生物。子どもだけでなく大人にも備わっているのです。大切なのは、自由な創造性を発揮する“右脳”と、論理的に物事を考える“左脳”との「融合」ではないでしょうか。つい日常生活では“左脳”に頼って仕事をしてしまいがちですが、もっと“右脳”を活用する意識が必要では。そのためにも、良い音を聞いて耳を鍛える、アートなどに触れて目を鍛えるーーそういった「感度を上げる」習慣を身につけると良いかもしれませんね。
今は何でも手元のスマホで手に入る時代だからこそ、フィジカルを使う機会がどんどん減っているのも問題かもしれませんね。これは感度の低下につながると思うのです。ピアノも鍵盤に触れる時間が減ると、感覚は鈍ってしまいます。ですから、日常的にフィジカルの活用を意識して感度を磨く、そしてそれにより右脳を刺激することでソウゾウする力は大人も鍛えられるはずです。

成富さん
右脳と左脳の融合、が大切なのですね。大学生が学ぶ上でも「融合」がキーワードになるのではと強く感じました。これまでは学校の授業とプライベートの習い事は別物だと切り離して考えていましたが、両者を融合して捉えれば新たな気づきや発想につながるかも!授業という閉じられた場だけでなく、企業や自治体などと交流しながらもっと学びたいと思いました。

西野さん
確かに大学では大学生以外と話す機会ってほとんどないですよね。その中で「ハザイソン」のように、企業やクリエイターといった日常では接点があまりない人とコラボレーションしながらモノづくりに挑戦できる場は、本当に刺激的!活動を通して、学生にしか見えない部分、社会人にしか見えない部分があると発見し、さらにお互いの視点・アイディアを共有するーーその積み重ねが、開発中の商品のブラッシュアップに良い影響を与えていると実感しています。人と人の「融合」も、より良い社会を実現する一歩になるのではないでしょうか。

―最後に、大阪・関西万博のパビリオンについて、それぞれの思いをお聞かせください。

小川
パナソニックのパビリオン名称は「ノモの国」。「モノとこころは写し鏡のような存在であるという考え方から、“モノ”を逆さにした言葉になっています。同じモノであっても、心の持ちようで捉え方は変わります。先ほど西野さんが「学生と社会人とでモノの見え方が異なる」と話してくれましたが、まさに一人ひとりの見え方・感じ方・捉え方の違いを体感して、発見したり驚いたりしてもらえる場になれば良いなと考えています。感性と感性のぶつかり合いがパビリオンの展示などに作用し、その時々で姿を変えていくような仕掛けを考えているんです。2度と同じ姿を見られない、そんなワクワク感を味わってもらえたらうれしいですね。

西野さん
私は建築を学んでいるので、各国のパビリオンがどのような空間の使い方をして、人の動きをどのように生み出すのかなどにも注目したいと思っています。

成富さん
どんな新技術が各国のパビリオンで見られるのかも楽しみですね。

小川
そうですね!建築においては、建築技法の素晴らしさだけでなく各国のパビリオンが万博のテーマである「いのち」をどう捉えているかを知る機会にもなるのではないでしょうか。20世紀の万博では各国が科学技術の粋を集めた展示がメインだったように思いますが、21世紀に入ってからは世界規模の社会課題をいかに解決するかといった「人の幸せ」にフォーカスされつつあります。人々の幸せを各国がどう実現していこうとしているのか、そこにどのような技術が使われるのか、私自身も楽しみにしています。

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