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障がいがある人もない人も、自分らしく働ける職場に

こんにちは、「ソウゾウノート」編集部です。今回は、編集部メンバーが所属するパナソニックセンター東京のプロモーション課を舞台に、「アンコンシャスバイアス」について考えます。新入社員の池田優里さんと、同じ部署に所属する串田未来さん、金田悠佑さんにインタビューを行いました。

2021年4月に入社した池田さんは、聴覚に障がいがあります。働く中で、池田さん自身や、チームのメンバーが気づいたアンコンシャスバイアスとは、どのようなものだったのでしょうか。

アンコンシャスバイアスとは?
「無意識の偏ったものの見方」のこと。人は、ものごとを早く、楽に判断しようとするために、一部の情報からすべてを理解しようとする傾向があります。過去の経験から「きっと○○にちがいない」「たぶん○○だろう」といった思い込みは、偏見のようにネガティブなことだけでなく、良かれと思って行うことにも隠れていることがあります。

配慮を伝えたら迷惑?思い込みが変わった日

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3人の職場であるパナソニックセンター東京は、江東区有明にあるコーポレートショールーム。パナソニックの認知度やブランドイメージの向上、変化を目的に、リアルスペースを活用した展示の他、イベントなどのアクティビティを通じて、さまざまなコミュニケーション活動を展開しています。

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―まずは、池田さんの仕事内容を教えてください。

池田: 若年層コミュニケーション担当として、これからを担う若い世代の方と社会の課題を共有し共創していくようなイベントやプロモーションを企画しています。7月1日には多様性理解促進のため、ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)イベントを実施し、その企画をしました。

また、ユニバーサルデザイン名刺のプロジェクトも推進しています。入社時に、名刺の中に障がいに対する配慮事項を書きたいと思ったのですが、名刺の作成システムにはそのような想定がされていないと知りました。入社前、パナソニックには聴覚障がいのある方が多いと聞いていたため正直なところ驚きましたが、改善できればと思い活動を始めました。

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池田: このプロジェクトは社内にある「全社UD(ユニバーサルデザイン)事務局」と連携しながら推進しています。障がいのある他の社員へのヒアリング会を調整してもらったり、つくりたい名刺のイメージを制作してもらったり。このような事務局が会社にあることに意義を感じます。

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―学生から社会人になって、気づいた変化はありますか?

池田: 学生時代は、「自分の配慮事項を相手に伝えることで、周りに迷惑をかける」という思い込みがありました。しかし社会人になって、「配慮事項を伝えないと迷惑をかける」という逆の考えに変わりました。

きっかけは、新入社員でのグループワークの時です。会場がにぎやかな場所だと、声が聞き取りづらくなることを心配していましたが、何とか自分の力で頑張ろうと思っていました。しかしグループワークが始まるとやはり聞き取りづらく、困ってしまいました。そんな私の様子を見て講師の方が声をかけてくださり、静かな場所に移動できることになったんです。

後から講師の方に「困ったことがあれば絶対に言ってね」と声を掛けていただき、伝えないと逆に迷惑がかかり、先に進まないということを学びました。

分かったつもりはNG!必要な配慮は人それぞれ

―チームの皆さんは、池田さんを迎えるに当たって、どんな準備をしましたか?

金田: 私達にとって、聴覚障がいのある方をチームに招き入れるのは初めてのことです。池田さんの配属初日に課のメンバーで集まり、どういった配慮が必要か、どんなところに注意したら良いかを率直に話し合う場を設けました。
その中で、池田さんは右側からの方が聞き取りやすいと知りました。当初、池田さんのデスクは右端に配置しており、みんなが左側から話しかける席順でしたが、右側から話しかけられる席順に変更。ご本人から話を聞いてみないと分からないことがあるなと思いましたね。

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串田: このほか、チームでのテレビ会議の際はカメラをオフにして会話することが多かったのですが、口の動きが見えるよう顔を表示することにしました。

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―お二人が気づいたアンコンシャスバイアスにはどんなものがありますか?

金田: 池田さんから配慮事項を共有してもらい「聴覚障がいのある方にはここに気をつけたらいいのだ、これで大丈夫」と、完結してしまったところがありました。しかし一緒に仕事をしていくうちに、ゆっくり話すだけではなく、議事録を作成した方が良いかもしれない、など日々気づきもあって。当事者の方と接しながら、その人に合ったベストな配慮の仕方を探っていくことが大切なんですね。

串田: 私は、障がいを開示することは、本人にとって辛いことなのではという思い込みがありました。しかし、池田さんがコミュニケーションの1つとして伝えてくれたことで、必ずしもそういう場面ばかりではないと価値観を変えてもらいました。必要なのは、遠慮ではなく配慮。そのために互いに自己開示しあえる関係性を築くことが大切だと思います。

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串田: ほかにも、池田さんから「聴覚に障がいのあるすべての方が手話を使っているわけではない」と聞いた時は驚きました!これまで、ダイバーシティ関連のイベントでは手話通訳を入れることで配慮ができているつもりでしたが、それだけでは不十分。文字情報を表示できるように挑戦したり、イベントのクオリティを上げる意識ができました。当事者の方が組織にいることは、強みになると感じます。


金田: これは障がいに限った話ではないですよね。例えば、子育て世代の方は朝や定時後は忙しくて予定を入れることが難しいだろうと思われがちです。本当はそうではなくても、話してみないと分かりませんよね。一人一人、何かしら配慮が欲しいこともあり、オープンに共有できる風土ができるといいなと感じています。

対話や経験を積み重ねてバイアスをなくしていく

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―自分のアンコンシャスバイアスに気づくためには、どうすれば良いでしょうか。

池田: 自分から開示することが大事だと思っています。そうすることで相手も自己開示しやすくなり、そこから生まれる会話で自分の気づかなかった思い込みに気づけるのではないでしょうか。
ただ、自分から障がいについて話すのはとても勇気のいることです。仕事の中では、相手の方からも声をかけていただけたら、話しやすいなと思います。

このほか、イベントや講演会に積極的に参加することも有効だと思います。多くの価値観や考え方を知ることで、気づけるアンコンシャスバイアスがあると思っています。


金田: 知ったつもりになっている場合、自分一人でアンコンシャスバイアスに気づくことができません。相手に「こういう配慮をしようと思うけれど、どう思う?」と恐れずに聞くべきだなと思っていて。こちらが誠意を持って話せば、たとえ間違っていても相手に失礼だと思われないのではと思っています。

串田: 完全にアンコンシャスバイアスが外れた状態になるのは、むずかしいこと。でも、知ろうという気持ちを持って価値観を広げていくことで、色々な人に対応できる幅が増えるのではないかと思っています。

池田さんがチームに来ると知った時、YouTubeで手話の動画を観たのですが、出会いの数だけ学びがあるなと。「助けてあげる」という一方向の状態ではありません。私も教えてもらっていることがたくさんあるので、もっとフラットにとらえています。自分の価値観をアップデートするチャンスだと思っています。

★★★

ジェンダー・障がい・国籍など多様な背景を持つ人がそれぞれの立場で生き生きと活躍する――。重要性をます「D&I」ですが、それを考えるとき、どうしても当事者や制度に議論がかたよりがちです。そこだけにフォーカスしても、組織全体の文化を変える力には結びつきにくい。注目すべきは、一人ひとりの言動や考え方のもとになる「ものごとの見方・捉え方」です。

今回話を聞いた3人が所属するチームでは、当事者の池田さんが自己開示をするだけではなく、メンバーも積極的に聞く体勢を整えることで、より良いコミュニケーションを実現しているそうです。障がいのある方と周りの方が遠慮し合っていては互いの理解は進みません。それぞれが歩み寄り、思いを言葉にすることで互いに働きやすい環境が作れるのではないでしょうか。

この記事がみなさんの職場や学校でのコミュニケーションを再考するきっかけになれば幸いです。


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