【レッツノートの舞台裏】「働く姿を美しく」デザイナーが語る25年目の思い
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【レッツノートの舞台裏】「働く姿を美しく」デザイナーが語る25年目の思い

モバイルワーカーのツールとして長年「どこでも」働く人々をサポートしてきたレッツノートは今年で25周年。「どこでも」だけでなく、「いつでも」「誰とでも」働ける新しいワークスタイル「ハイブリッドワーク」をサポートすることで、これからも日々の仕事を支えます。

これまでこのシリーズでは、レッツノートを愛用して時代を切り開くビジネスパーソンにインタビューをしてきましたが、今回はレッツノートにかかわるデザイナーのおふたりに登場いただきます。現在のレッツノートにつながる「CF-R1」(以降、R1と記述)をデザインした束原崇さんと、現在のレッツノートのデザインを担当されている鈴木創さんに、レッツノートに込めた思いや、25年間の変化を聞きました。

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束原崇(つかはら・たかし)
パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 デザインセンター コンテンツデザイン部 部長。
1991年に松下電器産業株式会社に入社。最初の10年間はコンシューマー向けのオーディオ商品のデザインを担当。その後、異動して2001年からレッツノートを担当し、現在のレッツノートの源流である「CF-R1」を手掛ける。現在は、コンテンツデザイン部に所属。

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鈴木創(すずき・そう)
パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 デザインセンター プロダクトデザイン部 2課 課長
2002年に(パナソニック グループ系列の)三洋電機に入社し、テレビ、プロジェクターを中心に映像メディア関連商品のデザインを手掛ける。2012年にパナソニックに加わり、現在はレッツノートやタブブック、決済端末のプロダクトデザインを担当。


働き方の変化とともに歩んだレッツノートの25年

――レッツノートはビジネスパーソン用のノートPCです。だからこそ、この25年間の人々の「働き方の変化」についても感じる部分があるのではないでしょうか?

束原: いまとなっては、在宅ワークなども増え、1人1台ノートPCを持って働くということは見慣れた風景になりましたが、私がレッツノートを担当しはじめた2001年ごろは、ノートPCを持ってどこでも働くというモバイルワーカー的な働き方は普及していませんでした。当初のレッツノートも、新聞記者さんのような一部の職業の方々から愛されている製品という感じでした。

働き方が変われば、デザインもそれに対応した変化をしていきます。レッツノートでは、表層的なスタイリッシュさを追い求めるのではなく、時代に合わせた「ニーズの本質」を捉えることをたいせつにしてきました。

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――束原さんは現在のレッツノートの源流の機種である「R1」をデザインされたとのことですが、当時デザインにあたって考えたことがあれば教えてください。

束原: 配属された当初、私自身デザイナーとして普段はデスクトップPCで仕事をするのがメインだったので、「パナソニックはノートPCもつくっているんだな」という程度の認識で、ノートPCは使ったこともありませんでした。そんな私が右も左もわからないままノートPCのデザインをすることになったわけです。

それまでやってきたコンシューマー向けのオーディオ商品では、毎年デザインを変え、新しくてカッコいいものが求められましたが、レッツノートの場合は、ユーザーの方々が「新しいもの」を求めるのではなく、「仕事で使いやすいもの」を求めている。そこが、自分のそれまでの仕事とは根本的に違いました。まずはその部分をたいせつにしようと思っていました。

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レッツノートの源流となった「CF-R1」

束原: 私が担当する前はモデルチェンジごとにデザインにも新しい要素が取り入れられ、操作デバイスにはトラックボールが採用されていました。

R1の開発に際して、「重さ1㎏を切る」という新しいコンセプトのもと、これからは、デザインアイデンティティの取れた製品やシリーズにしていこうと考えました。今後、開発していく新しいシリーズでも、商品の大元のコンセプト自体が変わらないのであれば、デザインも大きく変える必要がない。これが現在まで続くレッツノートの源流のデザインとなりました。

「デザインを変えない」という、大きな方向転換でした。

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ずらりと並ぶ歴代のレッツノート

――なるほど。毎回ガラッとデザインを変えてしまうのではなく、シリーズを通してコンセプトからブレないように改良を積み重ねていく方向性に舵を切ったのですね。

束原: はい。また、当時はノートPCと言えばコンシューマー製品が席巻している時代で、もっとも激しかったのは、どれだけ薄いパソコンがつくれるかという「薄さ競争」でした。もちろん、インターネットや動画を楽しんだりする用途ならそれでも問題ありませんが、レッツノートはモバイルワーカーのためのPCなので、働く人々が求めるのは「薄さ」より「軽さ」だろう、と考えていました。

それがお客様に刺さって、「丈夫だけれども軽い」というレッツノートの魅力を支持していただけるようになっていったと思います。

――薄さを求めていくと、そのために犠牲にしてしまう機能がある、ということですね。

束原: そうですね。部材をどんどん薄くしていくと当然強度も弱くなりますし、薄さのために内部の回路を変えていくと、機能が制限される部分も出てきます。また当時のモバイルワーカーの方は、モバイルPC以外にもさまざまなコードや荷物を持ち運んでいたので、PCも軽い方がいいだろう、と考えました。

鈴木: 現在のレッツノートにさまざまな種類の端子がついていることも、そういった設計思想のひとつです。モバイル環境で働く際に、USBやHDMIなどの変換アダプタをいっしょに持ち歩くと荷物になってしまいます。そこで、各種端子をあらかじめ本体に備えておくことで、移動時の負担を軽く、快適に使っていただけるようにデザインしています。

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束原: ほかにも細かな部分での改良は、常に行っています。たとえば、現在では本体にファンを内蔵してPC本体を冷却していますが、当時のR1はボディ全体で放熱する設計思想でつくられていました。そこで、パームレストに凹凸をつけ、手のひらが接する面積を少なくして、熱さを感じにくくするという工夫をしています。

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操作時に手が触れるパームレスト部分に凹凸をつけたデザイン。

束原: PHSを内蔵するH"IN(エッジイン)の部分は、アンテナを埋め込むためにディスプレイの左右を樹脂パーツにする必要がありました。この部分をお客様の好きな色にカスタマイズできるよう工夫しました。

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――レッツノートの顔のひとつとして知られる円形のホイールパッドも、R1から導入されたものなのですか?

束原: はい。これは円形だけでなく、いろいろな形を検討するなかで出てきたアイデアでした。何人かの方にパッドを操作してもらうと、四角いパッドを使った場合でも、ほとんど真ん中の部分しか使っていないことがわかりました。それなら円形でも良いのではないかと考えたんです。事業部の人にも使い勝手が悪くないかいろいろとトライしていただき、機能的にも使いやすいことがわかったので採用することになりました。

キーボードについても、効果を実験できるような場を設けました。その結果、タイピングのスピードと誤入力率をグラフで出してみると、角がとれたリーフ型キーボードが一番使いやすいということがわかり、採用を決めました。ブラインドタッチをする際、ホームポジションから斜めに指が動くので、角を丸めてあげることで、誤入力の原因になる引っかかりが軽減されるのです。

R1のキーボードはもともと特殊で、横幅が小さく標準よりもキーピッチが狭かったため、なるべくピッチ感が詰まって見えないように立体的なデザインにもこだわっています。

レッツノートに込められた「働く姿を美しく」

――さまざまな計算のもとに、現在のレッツノートの雛型になるデザインが生まれたのですね。

束原: 実は今日、当時のR1のスケッチを持ってきました。重さが「1kgを切る」という新しいコンセプトのノートPCだったからこそ、「それまでのレッツノートからどれだけ離せるか」を考えていました。さまざまなアイデアを出した後、昔のレッツノートに似たタイプ、R1タイプ、正方形タイプの3種類に絞りアンケートを取ったところ、ターゲットユーザーからもっとも人気が高かったのがR1タイプでした。

当時の事業部長が「自分たちと近い40代以上の人の意見ではなく、ターゲットユーザーとなる35歳以下の意見を聞きなさい」と言ってくれたことで、ユーザーの声が着実に反映されたものになりました。

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当時のR1のデザインスケッチ。

鈴木: 私がレッツノートに関わりはじめた2012年ごろ、普段からモバイル環境で働かれている方はどんな働き方をしているんだろうと、大学の教職員の方、新聞記者の方、スポーツカメラマンの方、MR(医療情報担当者)の方など、6名の方の仕事現場の調査に行かせていただきました。するとそれぞれの方によって、使い方がずいぶん違うことがわかりました。

たとえば、お客様と商談するような職業の方ですと、外観をきれいに保つためにとても丁寧に扱われます。一方で、新聞記者の方は、情報を聞き逃さないことが第一優先ですから、地べたに置いて使ったりもしますし、ユーザーの方一人ひとりによって本当にさまざまでした。

私は、束原が創り出したデザインの基盤をもとに、ノイズを削り「より美しいものに仕上げていく」「機能を際立させていく」ことに注力してきました。レッツノートはビジネスPCですから、機能として美しいことを大前提にしつつ、もっと言えば、「働く姿が美しい」ことを目指してデザインしています。

――確かに、モバイル環境で働く方が増えると、「働いている姿がどう見えるか」という部分に意識が向かう人も増えてきますよね。それは25年間の変化のひとつかもしれません。

束原: そうですね。わかりやすい例として、R1ではPCを開いた際、他の人から見ると天板の「Panasonic」のロゴが逆さまに表示されるようになっています。これは、ワープロが主流だった時代、置いた際にユーザー側がきれいに見えるようデザインしていたものの名残です。

レタッチ後

鈴木: その後、時代の変化にあわせて、「働く姿を美しく」という発想で考えた結果、途中からロゴの向きが逆になりました。働いている姿を他の方が見たときに、ロゴがきちんと見えることを重視するようになりました。

――ボンネット型の天板についても、シリーズが続くごとにどんどん洗練されています。

束原: レッツノートはストライプボンネットのデザインを長らく採用していましたが、これは最も負荷が抑えられる緻密なバランスで考えられたもの。そこから技術進化も進み、「働く姿を美しく」という発想から、ボンネットもシンプルなデザインへと磨き上げていきました。

鈴木: これは、技術の方々にもいろいろと検討いただくなかで、実現していったものでした。最新のFVシリーズで言いますと、ヒンジ(蝶番)も「ドロップヒンジ」と呼ばれる切欠き部がないものを採用しています。PCを開いたときに、内側からも外側からもヒンジが見えず、より働く姿が美しく見えるように設計されています。

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最新モデルのFVシリーズ(左)では
ディスプレイ接続部分のヒンジが見えないようになっている。

――最新モデルに当たるFVシリーズについては、どんなふうに製品コンセプトやデザインを考えていったでしょうか?

鈴木: これまでもレッツノートはお客様との商談や外出でPCを持ち運ぶビジネスパーソンのために、機能性と操作性を高めてきました。持ち運びが負担にならない軽さ、安心して持ち運べる頑丈さ、内蔵バッテリーだけで1日中仕事ができる長時間駆動の3点が、技術や企画といっしょになって磨き上げてきた特徴です。

昨今、さまざまな企業でテレワークや在宅勤務が推奨されるようになり、対面でのコミュニケーションはWeb会議やテキストチャットに置き換わり、お客様先に出向く商談や海外出張のありかたも大きく変わりました。こうした働き方の変化や社会動向を踏まえて、ビジネスパーソンが快適に働けるよう進化させたのがFVシリーズです。

Web会議で声が聞き取りやすい新設計のスピーカーを搭載し、サブディスプレイが用意しづらい自宅でも作業しやすいよう14型の大きなディスプレイサイズを採用しました。また、マウスなしでも操作しやすい大口径のホイールパッドで、作業のしやすさや生産性の向上を実現しています。

――「働く場所」が広がったため、レッツノートもそれに応じて変化したのですね。

束原: そうですね。振り返ってみると、レッツノートでは「ユーザーが求める理想の働き方は何か」ということを見つめて、デザインやハードウェアに落とし込んでいくことを25年間変わらずに続けてきたと思います。1日のはじめから終わりまで、働く環境や姿、そのすべてをトータルで見たうえでデザインしていく、ということをたいせつにしています。

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これまでも、これからも、人に寄り添うレッツノート

――おふたりがこれまでレッツノートにかかわってきたなかで、「変わらずにたいせつにしていること」があれば教えてもらえると嬉しいです。

束原: 「自分自身が強く思うこと」ですね。ユーザーの声や現場のさまざまな情報をもとに自分のなかで考えて、「これだ」という強い信念が生まれるぐらい、意思が入ったデザインであることが大事だと思っています。R1が出て、その次に12インチのCF-T1を出すときに、「同じようなデザインだ」と社内で猛反対されたことがありました。レッツノートは多機種展開をしていないので、「せっかくの新作機種が前作のものと同じように見える」と。

もともとこの2つの製品のコンセプトは同じで、使い勝手上、ユーザーの方に小さな画面か大画面かを選んでいただけるように開発したものだったので、デザインを変える必要はありません。そのことが最初はなかなか理解してもらえませんでした。

ですが、あのとき強い意志を持って周囲の人を説得し理解してもらえたことで、現在までのレッツノートの雛型ができたと思っています。自分自身が強く情熱を持って物事にあたっていくことが、いいデザインをする源泉だと思うので、そこは変わらない部分だと思っています。

鈴木: レッツノートは時代時代の働き方に寄り添って適応してきたからこそ、25年間続けてこられたのかな、と思っています。だからこそ、働く人々に寄り添って、人を起点にデザインを生み出すことは、今後も変わらずにやっていこうと思っています。

――最後になりましたが、25周年を機に、これからレッツノートに出会う方々やレッツノートを使い続けてきた方々に向けてのメッセージをお願いします。

鈴木: レッツノートは「働く姿を美しくする」という思いのもとデザインをしています。今まさに、在宅勤務が一般的になったことで、家族など親しい方に見られながら仕事をする社会になっています。ぜひレッツノートを使っていただいて、親しい方に美しく働く姿をみせてもらえたらうれしいな、と思っています。

束原: まずはこれまで使い続けてくれた方々に、感謝をお伝えしたいです。この製品を愛して、手掛けてきたデザイナーとしてとてもうれしいです。そして、これからレッツノートに出会う方がいるなら、最新モデルには25年の積み重ねが色濃く出てきています。「みなさんのやりたいことが実現しやすいツール」として、ぜひ足を踏み入れていただけるとうれしいです。

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ライター/杉山 仁
撮影/佐坂 和也

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・レッツノートについて詳しくはこちらをご覧ください


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