物流の効率化・品質向上の二刀流をめざし、新たなビジネスの可能性を広げたい。
新たな世界で多様な価値観に触れたい。そんな想いを胸に、田島樹は大学時代に交換留学でフランスへ渡った。英語は多少理解できるものの、フランス語の知識がなかった田島は1年間の現地での滞在をこう振り返る。「フランスでは日本の大学で専攻していた経営やマーケティング、簿記などを学びました。授業は英語で、それ以外はすべてフランス語。最初はコミュニケーションに難航しましたが、さまざまな国から来た学生との出会いもあり、多くの刺激をもらった1年でした」。
田島は父の転勤で、タイでくらした経験を持つ。「幼少期の2年半と小学校6年生から中学3年生までの約3年をタイでくらしました。日本にいる時も転校が多かったので、入学式から卒業式までをひとつの場所で過ごしたのは高校がはじめてでした」。タイでは中学校2年生の途中から1年間インターナショナルスクールに通い、進学した日本の大学でも外国人留学生が多い環境で過ごした。言葉の壁に臆せずフランスへと渡った度胸のよさや順応性はそうした経験があったからだ。
タイで過ごした経験は、就職活動にも影響を与えたと田島は言う。「中学時代を過ごした2回目のタイ滞在の時でしょうか。当時は雨が降れば道路はドロドロにぬかるみ、貧困のため路上で生活する人も沢山いて。そんな光景を目にし、子どもながらに何かしてあげられることはないかと漠然と思っていました。そうした経験から就職活動でも、生活や社会に貢献できる道を自然と模索するようになりました」。数ある選択肢のなかでパナソニックグループを選んだのは、革新的な製品や技術を通して人々のくらしをより良いものできることと、安定した経営基盤があるからこそ多様な挑戦ができると考えたからだった。
田島は現在、パナソニックグループの各事業会社と連携しつつ、物流のコスト削減や効率化を図る仕事に取り組んでいる。「スチールコイルのような原材料からエアコンのような家電製品まで、幅広い商品が世界中のお客さまに届けられています。それらの物流をひとつにまとめ、物流業者に対してスケールメリットを活かした交渉を行い、少しでも早くお客さまに商品をお届けできるような物流網を構築し、グループ全体の物流プロセスをより良いものに革新することが私のミッションです」。
田島が日々取り組む海上輸送の領域は、思いがけない出来事に遭遇することも多いという。「日本の物流の常識では一般的に提出の必要がない書面を要求されるなど、さまざまな課題が突如、突きつけられます。その都度、最善の方法を見出し、可能な限り迅速に解決するのも私たちの責務です」。
そうした課題に対して自部門だけでなく、グループ内の各事業会社と一緒に取り組むこともある。「ある事業会社の担当者から、輸送で利用する船会社から提供されたコンテナに穴あきがあるという相談を受け、一緒に改善に向けて取り組んだこともありました。最終的にはコンテナ品質の新たな基準を設け、それを船会社に徹底することで合意を得ました。船会社にしてみれば、面倒なルールがひとつ増えたのかもしれません。しかし粘り強く依頼をし、それが当たり前になっていけば、輸送品質の向上に繋がります」。
各事業会社の担当者や海外の販売会社など、さまざまな人との出会いを通じて、田島の夢はさらに広がっている。「工場への原材料の入荷、製品の製造、そしてお客さまへ商品が渡る一連の流れを可視化して、パナソニックグループのサプライチェーンの更なる強靭化を図りたいです。その実現に向けて挑戦しているのが、各事業会社それぞれに異なる輸送業務関連の業務手順を理解・整理し、より効率的にするしくみづくりです」。
そうした小さな改善の積み重ねこそが未来につながるものだと田島は確信している。「私がいる部署はパナソニックグループ全体のビジネスを俯瞰できるポジションでもあります。いずれはグループ全体の物流網のスケールメリットを活用して、他企業へ物流サービスを提供して収入を得るといった、物流ビジネスの新たなスタンダードモデルを世に送り出したいです」。
<プロフィール>
*所属・内容等は取材当時(2024年9月)のものです。