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EVデバイスを革新し、攻めるパナソニックを世界にアピールしたい。

アリゾナの砂漠を滑走する1機の飛行機が、真っ青な空に舞った。「やった!成功だ!」。口笛と歓声が上がった。両翼約6フィート。米国の航空大学の卒業プロジェクトとして、学生たちが1年がかりで設計・制作した無人飛行機だ。メンバーは7名。メキシコ人のマタセティナ アベルも、そのひとりだった。

「私は、機体の構造と重量バランスを担当しました。機体ができ上がってみると重心がズレていたり、想定外のトラブルが続発して、その対処に苦労しましたが、飛行機が空を飛んだ瞬間は感無量でした。このプロジェクトを通して、チームで取り組むことのたのしさと、エンジニアのおもしろさを実感しました」。アベルは当時を懐かしむように振り返った。

その後、アベルは日本の大学院に進み、修了後、日本の自動車メーカーに就職した。世界中に大きな影響を与える技術や製品を生み出している日本に興味を感じていたからだ。いくつかの自動車メーカーで、車体設計やEV(電気自動車)バッテリーパックの設計を経験。EVバッテリーパックの設計は、電気工学の知識が求められ、アベルには専門外の分野だった。それでも臆することなく専門書を読みあさり、独学で知識を身に付けた。そして、その仕事を通してパナソニックと出会った。

「設計の際、パナソニックの部品に切り替えたら、さまざまな問題が改善されたんです。その製品の素晴らしさに感動し、パナソニックに興味が湧きました。ちょうど転職を考えていた時に求人があり、すぐに応募しました」。

入社後、パナソニック インダストリー株式会社のメカトロニクス事業部に所属。EVバッテリーに使われる電流の遮断デバイスの設計を担当した。「大電流が流れた時、安全のために電流をカットするものなのですが、この部品ははじめてでしたので知識が追いつかずに苦労しましたね。とにかく調べまくって、後はこれまでの経験を活かして何とか仕上げることができました」。

現在は、EVリレー技術部で、EV用バッテリーの電子部品である次世代リレーの開発と設計を担当している。このリレーとは、電子基板上で電気をON/OFFするスイッチのようなもの。すでに量産されているリレーの改良だけではなく、まだ世の中にない技術とコンセプトを考えた上で設計し具現化することがミッションだ。まだ世にないものをつくる難しさ。それは、どれほどのものだろうか。

「たとえば、ガソリン車の時代に、ハイブリッド車や電気自動車をつくるようなものと言ったら分かりやすいでしょうか。とにかく既存のものにとらわれずにゼロからの発想が求められます。考えるベースのない仕事なので、辛いと感じる人もいると思いますが、私はけっこうたのしみながら取り組んでいます。『新しい未来の始まりに、自分が関われたら』。そう思うと大きなモチベーションになります」。

開発チームでは、アベルが構造設計の主力メンバーとして、若手のエンジニア達と日々切磋琢磨しながら進めている。この仕事でいちばん大切にしていることを聞くと、「時間」という言葉が返ってきた。「答えの出ないまま、アイディアを延々と考え続けていてはビジネスになりません。アイディアの方向性の見極めなどもきちんとしようと心掛けています」と真剣な目で語った。

アベルのこれからの目標は、世界の自動車メーカーがEVを開発する際に、「パナソニック インダストリーを選べば間違いない!」と思ってもらえる部品を開発することだ。「世界から見たパナソニックは『安定、安全、信頼』と言ったイメージですが、私はそこに『チャレンジ』を加えるような開発をしていけたらと思います。たとえば、ベンチャー企業のような何かに特化したイノベーティブな技術を開発して、『攻めるパナソニック』を世界にアピールしたいですね」。

複数の会社を経験したアベルに、パナソニックグループの印象を聞いた。「『新しいチャレンジをやりたい』と上司に言って、頭ごなしに『ダメ』と言われたことがないですね。チャレンジしたい理由を聞いてくれて、現実的に可能性があればチャレンジさせてくれます。それと、何と言っても事業領域の広さです。家から、クルマ、街まで、くらしのあらゆる分野で事業を展開していますから、やろうと思えば何だってできます。そこが自動車メーカーとの大きな違いですね」と微笑んだ。

知らないことに興味を持ち、専門外の分野も恐れずに、調べ、学び、活躍の領域を広げてきたアベルは、そのチャレンジスピリットを原動力に、未来を切り拓いていく。

<プロフィール>

マタセティナ アベル
設計開発
パナソニック インダストリー株式会社
2021年キャリア入社 工学研究科卒

出身は、メキシコ南部、陽気な雰囲気が漂うメキシコ湾沿岸の町ベラクルス。日本に来て驚いたのは、全国をつなぐ交通網の便利さだという。趣味はスポーツ観戦で、サッカーやF1をよく観る。休日には妻と大阪各地の観光を楽しんでいるが、まだ大阪弁には苦戦中。

◆パナソニック採用サイト
https://recruit.jpn.panasonic.com/

*所属・内容等は取材当時(2022年10月)のものです。