「Aug Lab」への期待はパナソニックが手がけるすべての分野をつなぐこと」
(「Aug Lab」特別対談・後編)
※Aug LabのHPより転載
https://tech.panasonic.com/jp/auglab/articles/20210305.html
パナソニックは、ロボティクス技術が自動化(Automation)以外にもたらす新しい価値として、自己拡張(Augmentation)をテーマに、研究開発を行うための組織 「Aug Lab」を2019年4月に開設。
「Aug Lab」の活動は、人はどのようなことにワクワクするのか、どのような状態になるとWell-beingになるかということを工学以外の視点も加えて研究しながら、デザイナー/クリエーターなどとの共創/プロトタイピングを通じて探索していきます。https://tech.panasonic.com/jp/auglab/aboutus.html
「Aug Lab」リーダーの安藤とパノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰・齋藤氏による特別対談。前編では「これからの時代の空間」について思いを語っていただいた。後編では、齋藤氏にとってのWell-being、「Aug Lab」の取り組みやパナソニックに期待することを伺った。
安藤:コロナで人々の生活が変化し、考えが変わる中で、空間のあり方を改めて考えたりしましたか?
齋藤:働き方が変わる中で、人の生活が求める空間レベルもだいぶ変わってきたと実感しています。週に1度しか出勤しないという状況になると、残りの6日は自然に近いところに行きたいと考える人も多いですね。実際に、私の周りにもそういうライフスタイルに切り替える人が増えていて、海の近くに拠点を持つケースも多くあります。「たがが外れる」ことで、自分のあるべき空間を求め始めた、そういう時代に入っていると感じています。自分の判断でさまざまなことを分散化させる、空間も含めてそういう時代に入ったと考えています。
安藤:前編で「実装してから考える」というお話が出ていましたが、例えばパナソニックでいえば、工場の中にロボットを大量に入れて「No People Line」を作ることが一番効率的と考えていた時期が2000年くらいまでありました。でも実際には、全体の効率化を目指した結果、トータルの生産性を失ってしまいました。そこから世の中的にもセル生産や協働ロボットなどの時代のトレンドを乗り越えながら、人間とロボットのバランスを考慮した今の形になっています。さらに、我々が今進めているように自己拡張による幸福度向上を目指す「Aug Lab」を作るまでに至っています。ロボットに自動化、効率化だけではない価値がある、というパナソニックの考え、「Aug Lab」のような取り組みをどう感じていますか?
齋藤:100%ロボットではなく、人の手触りは欲しいと考えています。ワームテック(Warm Tech)と呼んでいるのですが、テクノロジーベースであってもいい意味で人肌感があるのが望ましいですよね。完璧ではなくてもよくて、ロボットが壊れるという事象であってもいいんです。そこにおもしろさを感じます。また、よく「AIと人間の共存」というテーマが話題になりますが、私自身は共存、同居の必要はないと思っています。彼ら(ロボット)とは、そもそも次元が別。つまりユニバースが違うと考えています。
安藤:ユニバースが違うというのは、絶妙な表現ですね。目指しているものが違うというのでしょうか。AIやロボットも含めてテクノロジーによって人が幸せになるということはあり得ると考えていますか?
齋藤:人間がテクノロジーを道具として判断するのは「まだ」だと思っています。人間は、石器時代からいろいろなものを道具として使ってきました。AIはあって然るべきものだと思っています。しかし、意識しないレベルで生活に入ってくる道具として使いこなせるくらいになってからこそ、アウトカム、人間が住む地球という宇宙船の延命に対しても有効に効いてくると思っています。それくらい使いこなすためには、基本的な技術が重要です。
安藤:そうですね。テレビ会議が発達する中で、ロボットの分野ではアバターの話もよくテーマに挙がりますが、1時間も使うと、とても疲れて使いたくなくなってしまうほど。それは、遅延とか臨場感に関するベーシックなファンクションが足りていないことが理由だと思います。ベースの技術がしっかりしないことには、未来を描いてもうまくいかないというのをまさに実感しているところです。
安藤:前編で未来という言葉があまり好きではないとおっしゃっていましたが、でもあえて伺いたいです。これからの「Aug Lab」そしてパナソニックに期待すること、アドバイスがあれば、ぜひお願いします。
齋藤:「Aug Lab」の良いところは、何かのアイデアに対してプロト的なものを作ることです。パナソニックがモノづくりカンパニーである以上は、”モノ”からでしか変えることはできないと考えています。音響、白物、ロボットなど分野横断型でつなぐ役割を果たすのが「Aug Lab」だと思っています。ここからゲームチェンジをしていけるのでは、と期待もしています。生活者が考えている疑問を持ち寄って、必要なものを作る場所こそが「Aug Lab」。Augmentationは、パナソニックそのものの拡張という意味から来たのではないかと思ったくらいです。(笑)
安藤:なるほど。人間が人間らしく生きるために必要なテクノロジーを実現していきたいという意味でしたが、そう言っていただけるのは、すごく嬉しいです。パナソニック自体の存在の拡張ができるようこれからも取り組んで参ります。
本日はありがとうございました。
齋藤精一
パノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー) 主宰
1975年神奈川県生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。03年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのを機に帰国。フリーランスとして活動後、06年株式会社ライゾマティクス(現:株式会社アブストラクトエンジン)を設立。16年から社内の3部門のひとつ「アーキテクチャー部門」を率い、2020年社内組織変更では「パノラマティクス」へと改める。
2018-2020年グッドデザイン賞審査委員副委員長。2020年ドバイ万博 日本館クリエイティブ・アドバイザー。2025年大阪・関西万博People’s Living Labクリエイター。
安藤 健
早大理工、阪大保健の教員経て、パナソニックロボ推進室総括。ヒトと機械の関係、Well-beingに興味有。ホントはロボよりヒトが好き。
AugLabリーダhttps://bit.ly/2YojcP1
DIGITALX連載 https://bit.ly/2BFzx80
note https://note.com/takecando