10年後のプロミス | パナソニック株式会社 熊沢ほしみ
この10年を振り返ってみました。
2011年3月の震災直後、私の担当している映像制作プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース」の参加校に安否確認をするも、学校の電話は不通。最後に安否確認ができた学校は半年もあとの事でした。
被災地の学校からは「子ども達の心のケア―をしてほしい」「復興授業をしてほしい」と多くの方々から要請を受け映像制作のノウハウを活用し、復興支援プログラム「きっと わらえる 2021」は 被災地の子ども達の笑顔と元気を取り戻す為にスタートさせました。
プログラムでは、子どもたちが「今、つたえたいこと」と「未来へのメッセージ」の2つのテーマで映像制作にチャレンジしています。「今、つたえたいこと」は制作した子どもたち、先生方、ご父兄、地域の方たちと共に、撮影当日に編集を行い、学校で上映会を開いて鑑賞しています。また、「未来へのメッセージ」は映像タイムカプセルに作品を封入し学校へ進呈しています。10年後この地に再び戻り、仲間たちとこの映像を見て欲しい・・その時には きっとみんなで笑えるといいね・・という思いを込めて「きっと わらえる 2021」と名付けました。10年をつなげるプログラムがスタートしました。
カメラの力
プログラムは2011年6月から始動。2011年〜2012年にかけては東北地区沿岸部の交通は不通。バスもありません。学校との打ち合わせは新幹線の最寄り駅からレンタカーで3時間以上かけて沿岸部へ移動するのが一般的で、スタッフと現場へ移動するのは本当に大変でした。でも映像制作には思いがけない化学反応がありました。
非日常の体験が奇跡を起こす
うまく話せない児童
震災から吃音になり、人前できちんと話せなくなった児童がいました。カメラを担当して相手にきちんと指示を出しているではありませんか。症状がなくなっていたのです。将来の夢は「カメラマンになりたい!」と言っていましたが、夢は叶ったのかな?
不登校の児童
教室には一歩も入れず毎日廊下に机を置き一人で勉強している児童がいました。楽しそうに撮影をする仲間を遠くからしばらく覗いていた児童。その後先生と一緒に教室に入り、自ら進んで音響を担当。仲間と一緒にメッセージ制作にチャレンジしてくれました。
この日から教室仲間と勉強ができるようになったそうです。
4017・・・・・これはこの10年間で映像メッセージを制作するために出逢った被災地の子ども達の人数です。
震災から10年の春・・・被災地の子ども達との10年後のプロミス。
卒業生が集まりやすいよう「成人式」などの機会を選び、映像タイムカプセルの開封&上映会を2019年からスタートしました。
久しぶりに再会する卒業生たちはなんか恥ずかしそう・・・
改めて10年の流れを感じます。
2012年1月 「きっと わらえる 2021」に参加した
福島県大熊町熊町小学校・大野小学校の子ども達
2020年成人式で 映像タイムカプセル上映会
福島県大熊町熊町小学校・大野小学校の子ども達
2012年9月「きっと わらえる 2021」に参加した
宮城県気仙沼市立九条小学校の子ども達
2020年成人式翌日 映像タイムカプセル上映会で
宮城県気仙沼市立九条小学校の子ども達
幼く可愛らしい自分に再会・・。みんな唯々笑顔です。
そして・・・ 昨年1月 1通のメールが届きました。
映像でのタイムカプセルとても素敵でした。
映像は当時を蘇らせてくれました。
今の自分になげき、もがいている子にとって
8年前の自分が今の自分に話しかけ
背中を押しているようで涙している子もいました。
小学校の教師は、同窓会に呼ばれる機会はなかなかありません。
とても貴重なそしてすてきな機会をいただき感謝しかありません。
いろいろと心配事が多い子どもたちだっただけに
みんな大きな声で笑っている姿が見られてうれしかったです。
前日。全員で当日の明け方まで飲んで朝の6時頃に解散し、時間になっても全然集まらないときは、やってしまったかあと謝る覚悟までしました。(笑)
この日の映像も撮っていただきまた会えるねと笑顔で再会を約束して分かれました。
熊沢さんをはじめたくさんの方々のお世話になりました。ありがとうございました。
これは2011年9月に復興支援プログラム「きっと わらえる 2021」を初めて開催した岩手県久慈市立久喜小学校の生徒が、2020年1月成人式後8年振りにみんなで集まり、映像タイムカプセル開封&上映会に参加された当時担任の先生から頂いたメールです。
10年間 私たちの願ったすべてがこのメールにありました。
この笑顔を見るためにスタッフと共に頑張れた・・改めてそう思えた一瞬でした。
プログラムに今日までご協力をいただいたすべての関係者に深く感謝いたします。
またいつか みんな笑顔で再会ができますように・・・
to be continued・・・
「きっと わらえる 2021」10年間活動ダイジェスト版
〜東日本大震災から10年この春〜
3月中は引き続き、関係者から寄せられた「#それぞれの10年」を綴った記事をご紹介させていただきます。