開発・製造・販売・顧客のデータ連携で、お客さまに寄り添うパナソニックをつくりたい。
入社2年目の春、菅原滉平は関係会社に1年間の修行に出された。彼が所属する部署は、それまではパナソニックの工場のIoT化を推進する活動を行っていたが、新たに製品IoT分野の仕事に取り組むことになり、データ分析など、そのノウハウを学ぶためだった。「家から職場まで徒歩30秒という恵まれた環境から、電車で2時間かけて通勤しなければならなくなり、最初は朝が眠くてしんどかったですね」と彼は笑った。
修行先は、パナソニックグループのIT化を支える情報サービス会社だ。家電がネットにつながるしくみも、ネットにつながることで何ができ、そこからどんなデータが取得できるかも分からなかった彼は、与えられたタスクをこなしながら一から学んでいった。また、パナソニックのさまざまな部門と直接やりとりをする場に同席し、人間関係も築いていった。
彼にデータ分析のイロハを教えてくれたのは、新入社員研修で講師を務めた人だった。「まわりの誰からも一目置かれる優秀な方で、その方から何でも貪欲に吸収してやろうと思っていました。そして、修行から戻ったら、自分が主体となって各部門とやりとりし、パナソニック内でデータ分析の活用を広めていかなければ。という使命感を感じながら日々を送っていました」。
現在は修行を終えて、パナソニックでIoT家電の使用状況のデータ分析の仕事を担当している。IoT家電は、ネット接続することでさまざまなサービスが利用できる。たとえば、外出先からスマートフォンで家のエアコンをコントロールしたり、エアコンを付けたまま外出してしまった時に、スマートフォンに切り忘れの通知が届いたり。そして、お客さまのIoT家電がいつネット接続し、いつ、どんな機能を使用したか、などのデータを取得し分析することで、今までのアンケートでは見えていなかったお客さまの使用状況を把握することが可能となる。その結果は、商品開発やマーケティングに活かされ、お客さまのライフスタイルにマッチしたより良い製品づくりの指標となる。
彼に、この仕事の魅力を聞いてみた。「就職活動で家電メーカーを選んだ理由も同じなのですが、この仕事は商品開発のベースになるため、家電量販店に並んだ新商品やPOPなどを通して、自分のやった仕事の成果が見えるところです。この仕事を始めてから、家電売り場に行くことがたのしみになりました。また、IoTというライフスタイルを一変させる技術に携わることは、新しい時代をつくっているような高揚感があります」。
彼には、もうひとつ取り組んでいる仕事がある。IoT家電を動かすスマートフォンアプリの開発と運用の効率化を社内に働きかける活動だ。スマートフォンアプリは、エアコン、洗濯機、電子レンジなどそれぞれの家電ごとに開発され、その運用も別々に行われ、それぞれに人材が充てられている。その開発と運用を、一カ所に集約することで、重複業務の削減と運用に割く工数の削減、さらにはスマートフォンでできるサービスレベルの向上につなげるという狙いがある。「この仕事は、今年始めたばかりで、成果が出るまでにはもう少し時間がかかると思っています。家電の担当者からすれば、『今までのやり方で上手くいっているのになぜ?』と感じると思うので。やはり、これをやれば、これだけのメリットがあるという実績を示すことが大事になるので、まず、ひとつ確かな実績をつくることを目標に取り組んでいます」。
パナソニックに入社して4年目。彼は、今、どんな想いで仕事と向き合っているのだろうか。「世の中も社内も、どんどんIoT化が進むなかで、情報システム部門の私たちに社内のあちこちから声がかかり、今は引っ張りだこの状態です。そのため、入社して早い段階から独り立ちし、責任ある仕事を任せていただいています。正直、苦労はありますが、現場でしか得られない経験値を沢山積むことができ、自分の成長を実感できるとともに、その分野での専門性を高められるので、とてもやりがいを感じます」。そう語る彼に、将来の夢を聞いてみた。
「私が製品の利用状況データを集めているように、開発や、製造、販売などさまざまな部門でデータが集められています。ただ、現在はそれぞれのデータの連携は行われておらず、それぞれの部門でしか活用されていません。今後、開発から、製造、販売、お客さままで全てのデータを繋げることで、お客さまのニーズにきめ細かく対応した製品やサービスをお届けし、製品が故障した場合でも、即座に修理体制を整えることが可能となります。データ連携と、データ分析で、パナソニックをお客さま一人ひとりに寄り添える家電メーカーにしていきたいと思っています」。今日も、彼はIoT家電のデータ分析をしながら、その向こうにいるお客さまを見つめている。
<プロフィール>
*記事の内容は取材当時(2021年10月)のものです。