経済合理性を超え、小さな1歩を踏み出すために。「#地球にやさしく自分にやさしく」の実践に向けて対話した時間──q&d Talk vol.1レポート
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経済合理性を超え、小さな1歩を踏み出すために。「#地球にやさしく自分にやさしく」の実践に向けて対話した時間──q&d Talk vol.1レポート

パナソニック_ソウゾウノート

パナソニックは、くらしにおける問いと対話をテーマにしたメディア『q&d』を運営しています。q&dでは、一人ひとりが自分にあった理想のくらしを見つけるときによりどころとなる「問い」を立て、読者のみなさまと共有しています。

第2回の特集で設定したテーマは、「地球とわたしにやさしい日々の過ごし方(Lifestyle for Planetary Good)」。
「地球へのやさしさ」と「私自身の心地よさ」のバランスがとれたくらしを探求するため、さまざまな方と対話し、記事を公開しました。
今回は特集の締めくくりとして、2月24日に開催した「q&d Talk vol.1」の
レポートをお届けします。

ゲストは、NPO法人グリーンズ共同代表の植原正太郎さんと、パナソニック デザイン本部 FLUX(フラックス)所属 インサイトリサーチャーの藤川恵美さんです。当日は2人が考える「持続可能なわたしのくらしを実践するため」の問いを共有してもらいながら、対話を深めていきました。モデレーターは、q&d編集部の松島茜さんが務めます。

植原正太郎(うえはら・しょうたろう)
NPO法人グリーンズ 共同代表:1988年4月仙台生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。新卒でSNSマーケティング会社に入社。2014年10月より、持続可能な社会をつくる人を応援するWebマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズに参画。2021年4月より共同代表に就任し、健やかな事業と組織づくりに励む。同年5月に熊本県南阿蘇村に移住。暇さえあれば釣りがしたい二児の父。

藤川恵美(ふじかわ・えみ)
パナソニック株式会社 くらし事業本部 デザイン本部 FLUX所属インサイトリサーチャー:イギリスのRoyal College of Art 修士課程修了、同大学院Helen Hamlyn Centre for Designの研究員、オランダのPHILIPS Designで医療関連のインタラクションデザインに従事後、インドのArsha Vidya GurukulamでSwami Dayananda Sarasvati jiに師事しサンスクリット語とヴェーダーンタを学び、慶應義塾大学院メディアデザイン研究科特任講師を経て、2017年にパナソニックに入社。

松島茜(まつしま・あかね)
パナソニック株式会社 q&d編集部:愛知県出身。大学在学中にフリーペーパー制作とドイツ留学を経験。名古屋大学文学部を卒業後パナソニックに入社し、様々なイベント、セミナー企画に携わる。子どもの頃から食分野に興味あり。週末にはパンを焼く。

経済合理性を超える「楽しさ」をどのように見出すか

今回、パネルディスカッションでは、「私たち個人が持続可能な暮らしのために実践できることは?」というテーマを設定。お二人の問いをもとに対話をしていきました。
イベント冒頭、まず植原さんから「環境負荷が低いけど、めんどくさいことをどのように楽しむか。また、その楽しさに気付くきっかけを得るには?」という問いが共有されました。

植原さんが作成したマトリクス図。環境負荷が低く、コストも低い「最高」は技術的なイノベーションが必要なため、個人の努力では到達できない領域と話します

植原さんは、くらしにかかる環境負荷とコストについて、自身で作ったマトリクス図を見せながら説明しました。持続可能な社会への関心は年々高まり、多くの人々は環境負荷が低く、コストが高い「理想」が大切なのは分かっているけれど、なかなか手が届きません。葛藤しつつも、経済合理性の観点から環境負荷が高く、コストが低い「現実」を選択してしまっている人々が多いのではないかと、植原さんは話します。

植原: 私自身も、持続可能な社会をつくる人を応援するWebマガジンを運営したり、個人でも自然豊かな南阿蘇村に移住したりするなど、環境への意識は高いほうですが、どうしてもマトリクス図の「現実」を選んでしまうことは多いです。

例えば、子育てをする中で紙おむつは安いし簡単に処分できるけれど、
廃棄にコストやエネルギーがかかります。環境負荷が低い布おむつにすればいいという話なのですが、毎回洗わなければいけず、忙しいとその手間をかけるのが難しくなるため、どうしても紙おむつを選択してしまう。

ただ「現実」にとどまっているうちは、「地球にも自分にもやさしい暮らし」は実現できません。いかに経済合理性を超えた「楽しさ」を作れるかということが、重要になるのではないでしょうか。

その一例として、植原さんはgreenz.jpの記事で紹介した、ある夫婦のケースを紹介しました。その夫婦は東日本大震災を機に、自家発電での生活を始めました。必要な機材や施工費にかかったコストは、通常の電気料金にすると約60年分に相当する220万円。経済的合理性があるとはいえませんが、その夫婦は自家発電の暮らしというチャレンジそのものにワクワク・ドキドキしており、経済合理性を超える楽しさを見出していたそうです。

NPO法人グリーンズ 共同代表の植原正太郎さん

植原さんの問いを受け、藤川さんは所属するパナソニックの社内デザイン組織、FLUXで取り組んだ「Immersive Research」の事例を紹介しました。
FLUXではImmersive Researchのテーマに「地球と人を思いやるくらし=エシカルなくらし」を掲げており、エシカルな生活をするうえでのモチベーションや障壁についてリサーチを行っています。その中で見えてきたキーワードの一つが「透明性」だと言います。

藤川: 環境について何か取り組もうとしたとき、その成果や価値が見えなければ、面倒なのに続けようとは思えないですよね。greenz.jpで紹介された夫婦も、取り組みの背景にある価値を実感しているからこそ、続いているのだと感じます。

FLUXでリサーチを進める中で、日頃からエシカルな生活を実践されている方と出会いました。その方は「ひげ剃り」の処分をするとき、環境のためにご自身でプラスチックと金属を分解していました。しかし、ある日ふと「もしかしたら最終的な処分は一緒にされているのではないか」と、疑問に思ったそうです。

 ひげ剃りの分解は面倒なのに、どう処分されているか分からない。
そんな不透明な状態だから、「モチベーションが下がって、疑問を感じた」と、その方は話していました。経済合理性を超えた楽しさを感じるためには、成果や価値が見えること、透明性が担保されていることが大切だと、
この事例から見えたような気がします。

「自分も環境の一部である実感」をつくるために

続いて、藤川さんの問い「環境を意識するにあたって、自分も環境の一部である体験や実感が大切。そういった体験・実感はどうつくっていく?」に議論は移りました。

 FLUXが、Immersive Researchをする中で大事にしたのは「エシカルな生活を自分事として経験することだ」と、藤川さんは語ります。例えば、フェアトレードの商品を買う、ペットボトルの水を買わないなど、身近なことからエシカルな生活に1か月取り組むプロジェクトを実施。また、実践的な体験をするため、千葉県いすみ市にある「パーマカルチャーと平和道場」(以下、平和道場)での修行も行ったそうです。

藤川: パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた言葉です。「永続可能な農業」という意味なのですが、平和道場では文化そのものについて考えさせられました。

 例えば、平和道場にはコンポストトイレがあります。排せつ物は農業において最高の肥料となるので、江戸時代には販売もされていたくらいなんです。でも現代はゴミとして扱い、水で流し、最終的には燃やしていますよね。いかに非効率なことをしているかということを、コンポストトイレを通して体感させてもらいました。

 このように、本来は私たちの日常的な行いが自然環境とつながっているのに、それを忘れてしまっていることに危機感を感じています。特に都会は自然と切り離されているので、平和道場で実感したようなことをいかにつくるかが、私の問いです。

パナソニック インサイトリサーチャーの藤川恵美さん

自分も大きな自然環境の一部であるという認識をどうしたらつくれるか。藤川さんの問いに対して、植原さんは「自然に生かされている感覚を持つこと」の大切さを強調します。

 植原さんが移住した阿蘇地域では、1000年以上続く「野焼き」文化があります。野焼きでは、人の手で山を焼いて草原を保ち、雨水をより浸透させたり、家畜の餌を育てたりします。これにより、生物が暮らしやすくなり、
生態系の維持にもつながっているそうです。

 植原: 人が手を加えて自然の恵みを維持しているのが、すごいことだと思ったんです。人間のくらしは自然を搾取することばかりですが、そういうものだけでないことを体感し、自分が自然環境の一部であるという感覚が得られた気がします。

 この感覚を得るには、私のような自然豊かな地域で暮らしてみるのはもちろん、藤川さんのように平和道場に参加することも良い機会です。ただ、必ずしも自然豊かな場所でないと体感できないというわけでなく、都会にいてもできることは多くあるでしょう。例えば、コンポストに取り組んだり、生き物を飼ってみたりすることも、自分が生態系の一部であることを感じられるきっかけになると思います。

▲環境問題をどうしたらもっと自分ごととして捉え、配慮した行動ができるようになるのか、生態学者の伊勢武史さんと一緒に考えた記事はこちら

藤川さんが整理した「持続可能なくらし」を実践するためのポイント

正しさだけだと「地球とわたしにやさしく」は難しい

ディスカッションの後半では、食についての対話も行われました。藤川さんは自身がベジタリアンであることから、人間が持つ「何を食べるか選べる」自由さについて話します。

 藤川: 私たちは生態系の一部でありながら、何を食べるかを自由に選択できる特権を持った生き物だと思っています。これは好き嫌いで食べるものを選ぶという話ではなく、自然との調和を考えて何を食べるべきかという大きな視点から、口に入れるものを選べる自由があるということです。その食べ物はお腹を満たすだけでなく、心も満たしてくれるのか、口に入れる前にぜひ考えてみてほしいです。

 植原: 南阿蘇村では、道の駅に行けば地域の農家の方がつくった安くて美味しい野菜が買えます。私の家では肉も魚も食べますが、野菜だけでも食事が楽しくなるということを移住してから実感しました。誰がつくったのかまで分かるサイズ感で暮らすのも、持続可能な食を実現するうえで大切なポイントだと思います。

 ここでモデレーターの松島さんは、「心の余裕がなくなると、どうしても手軽なものや安いものなど、食は経済合理性で選んでしまうことが多い」と、日々の生活を振り返ります。お二人の話を受けて、「自分がくらしの中で大切にしたいことを意識できれば、経済合理性から一歩進んだ小さなアクションを始めることができそう」と、今後の意気込みを語りました。

▲食の魅力を存分に堪能しながら地球にもやさしく暮らすためのヒントを、持続可能な食の探究者で、株式会社fog代表取締役の大山貴子さんと共に考えた記事はこちら

q&d編集部の松島茜さん

イベントの最後、お二人からディスカッション全体の感想を話していただき、1回目のq&d Talkは幕を閉じました。

 植原: 最近、サステナブルに関するトピックは、メディアから発信されることも多くなっています。ただ、メディアからの情報は「正しさ」を前提としたものが多く、それだけだと地球にやさしい取り組みを続けることは難しいと考えています。自分が信じられるもの、体感したもの、楽しいと思えることで、小さなことから始めることが大切だと、今日あらためて思いましたね。

 藤川: 知人のビーガンの方を見ても、環境負荷が低いという「正しさ」から始めた人はほとんどいません。最初のきっかけは、動物がかわいそうとか、自身の健康のためであることが多いです。自分の原体験や問題意識からスタートし、結果的に「環境にも良い」ということから始められると良いなと思います。

 今回のレポートを読んでいただき、「持続可能なわたしのくらし」を実現するために取り組もうと思ったこと、植原さんと藤川さんの対話に対する感想があれば、ぜひTwitterで聞かせてもらえると嬉しいです。
ハッシュタグは #地球にやさしく自分にやさしく です。

 q&dでは第3回特集「ポストワークライフバランス(Work Life Integration)」の記事公開が3月16日から始まっています。そちらもあわせて、ご覧になってもらえると嬉しいです。

▲特集「地球とわたしにやさしい日々の過ごし方」はこちら

▲特集「ポストワークライフバランス」はこちら



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