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大学生が今、くらしと仕事のバランスで気になることを対話してみた――q&d Talk Vol.2レポート

パナソニック ホールディングスは、くらしにおける問いと対話をテーマにしたメディア『q&d』を運営しています。q&dでは、一人ひとりが自分にあった理想のくらしを見つけるときによりどころとなる「問い」を立て、読者のみなさまと共有しています。

第3回特集のテーマは、「ポストワークライフバランス」。
新型コロナウイルス感染拡大の影響やテクノロジーの進化もあり、私たちのくらしに「仕事」が急速に溶け込んでいます。「くらし」と「仕事」が融合していく中で、両者の関係性はどう変わるのか。このテーマを探求するため、さまざまな視点から記事を公開してきました。

角度を変えてさまざまな問いを立て考えてきましたが、多くは「働いた経験がある社会人」の視点からのもの。これから社会に出る学生の方々と対話ができたら、「ポストワークライフバランス」について、新たな視点が得られるのではないかと考えました。

そこで、q&d編集部は特集ごとに開催しているトークイベント「q&d Talk」の第2回として、東京・下北沢にある居住型の教育施設「SHIMOKITA COLLEGE(シモキタカレッジ)」でくらす学生たちとのオンライン座談会を開催。学生の目線からみた「ワークライフインテグレーション」について、対話を深めていきました。
 
モデレーターとして、q&d編集部の湊麻理子さんと真貝雄一郎さんが参加しました。

学生プロフィール:
 
川上礼志郎(かわかみ・れいしろう)
東京大学文科一類1年生。秋から米国のSwarthmore Collegeに留学予定。2022年4月からSHIMOKITA COLLEGE在住。高校生のとき2週間の滞在経験がある。
 
小峯愛華(こみね・まなか)
東京理科大学経営学部2年生。仙台育ち、2021年3月からSHIMOKITA COLLEGE在住。
 
原田惇利(はらだ・じゅんり)
青山学院大学2年。この秋から、University of Amsterdam Business Administration(オランダ)に留学予定。2020年12月から、SHIMOKITA COLLEGE在住。

仕事とくらしが混ざりあう場で、日々を過ごす

SHIMOKITA COLLEGE

今回、座談会に参加してくれたのは東京大学文科一類1年生の川上礼志郎さん、東京理科大学経営学部2年生の小峯愛華さん、青山学院大学2年の原田惇利さん。3人が住むSHIMOKITA COLLEGEは、多様な背景を持つ高校生や大学生、若手社会人が互いの経験を持ち寄り、ともに暮らしながら自身の学びを深める居住型の教育施設となっています。
 
イベントの冒頭では、事前に3人に撮影してもらった写真を通して「くらしの中で目にしたワークライフインテグレーション」を共有してもらいました。

実際に撮影してもらった写真

原田さんは、SHIMOKITA COLLEGEで仕事をする社会人の方を撮影した写真を紹介します。社会人と高校生・大学生とが一緒にくらしているSHIMOKITA COLLEGEでは、働いている様子を目にすることが頻繁にあるようです。2台のPCを使いながらリモートワークで働く方(上記写真、右)の様子を見て、「カジュアルな格好をし、かつ裸足でいることが印象的だった」と原田さんは語ります。

原田: 僕のイメージだと、靴下は職場で当たり前に履くものだと思っていました。ただ、家の中で働くようになり、デスクの上で仕事はしているけれど、足元は裸足だったり、明らかに仕事着でないリラックスした格好でいたりするのは、ワークライフインテグレーションといえるのではないでしょうか。

青山学院大学2年の原田惇利さん

川上さんと小峯さんは、SHIMOKITA COLLEGE内にある共有スペースで撮影した写真を紹介しました(上記写真、左)。この写真では、共有スペースに集う多様な人々が、同じ空間でビジネスの相談をしたり、イベントの準備をしたり、大学の授業で使用する資料を作成したりしています。集団の中でくらしと仕事が入り混じる光景に、お二人は「ワークライフインテグレーションを感じた」と語りました。

コロナ禍で急速に変わる、くらしと働き方の当たり前

続いて、q&d編集部の湊麻里子さんからは、「ポストワークライフバランス」の特集で掲載した記事の内容や背景にある問題意識、メンバーの実体験をもとに、ワークライフインテグレーションに関連するいくつかのトピックについて共有しました。

q&d編集部の湊麻理子さん

SHIMOKITA COLLEGEの皆さんと共有したトピックスの一例をご紹介します。
 
【働ける環境があれば、どこでもオフィスになる】
例えば、ヤフー株式会社では、安定したインターネット環境があれば、通勤しなくてもそこを職場とみなす「どこでもオフィス」制度を2022年1月に発表。働く環境を整備するための手当などの形で社員をサポートし、居住地にかかわらず優秀な人材を採用することを目指す企業が現れ始めています。
 
【Life Based Working】
企業のリモートワーク導入が加速してきたことで、働く場所や時間を自由に選ぶ働き方「ABW(Activity Based Working)」が普及。今後は、より働く人の人生(Life)を起点とした仕事の位置づけに変わるのではないかといわれています。
 
【オフィスの役割の再定義】
コロナ禍によって大きく役割が変わったのは「オフィス」です。米国Dropbox社は、2020年10月に「バーチャルファースト企業」を宣言しました。オフィスを毎日通う場ではなく、コラボ―レーションやチームワーク向上を目的として、必要に応じて集まる「スタジオ」へと変化させています。
 
【リモートワークネイティブのワークとライフの関係性】
コロナ禍が長く続くことで、「そもそも毎日出勤する生活をしたことがない社会人」も増えてきました。入社時からリモートワークが当たり前だった人は、仕事とくらしの境界をどのようにとらえているのか、というのも新しい論点です。

▲当事者でもあるパナソニックの社員がリモートワークネイティブにとって仕事とくらしの関係を考えてみた企画はこちら

【テクノロジーの発展と働き方】
メタバースやAIといったテクノロジーで、働き方は確実に変化すると思われます。

▲AIに「人生の選択」を任せられたら、仕事やくらしがどうなるのか、SF作家の長谷敏司さんに伺った記事はこちら

【家庭の中にある労働】
企業における働き方だけでなく、家庭の中にも「仕事」は存在します。家庭内の仕事は時に賃労働以上に荷重がかかりやすく、どう負担を減らしていくか、家庭の外の仕事とどのようにバランスさせていくかも大きな課題のひとつです。

▲家庭内労働の負荷を社会でどう負担するかについて、訪問型病児保育事業を展開する高亜希さんと一緒に考えた記事はこちら 

国内だけでなく、海外でも仕事とくらしの関係の変化は生じています。実際に、米国の働き方はどのようになっているのでしょうか。パナソニック未来創造研究所に所属し、シリコンバレーに拠点を置く新規サービス開発部門に長期出張したq&d編集部の真貝雄一郎さんは、自身が体験するワークライフインテグレーションの取り組みを紹介しました。

q&d編集部の真貝雄一郎さん

コロナ禍でリモートワークが中心となった中で、現地メンバーとの共創を進めた真貝さん。働き方という観点では、それぞれが「Be Scrappy(完璧でなくていい)」「Psychological Safety(心理的安全性)」「Autonomy(自律性)」を大切にしていることに気付きました。

「完璧でなくていい」の観点では、リアルの接点が少なくなっている中でもプロジェクトを円滑に進行するため、資料や進捗を途中だったとしてもメンバーに共有し、課題の把握や軌道修正を早めているとします。
 
国内でもよく聞くようになった「心理的安全性」の文脈では、Slack上で盛んにプライベートを共有する文化があるようです。投稿される内容は、飼っているペットや旅行先のオススメスポットを質問してみるなど、人によってさまざま。自分のプライベートをさらけ出す勇気を持つこと、他人のプライベートを受け入れる雰囲気をつくることで信頼関係が生まれ、良いチームになることを目指しています。
 
真貝: 自分をコントロールすることの大切さを意味するのが、3つ目の「自律性」です。くらしと仕事が融合すると、ずっと仕事をしたり、仕事について考えたりしてしまい、くらしとのバランスをとることが難しくなりがちです。
 
私たちのチームでは、16時ピッタリに仕事を切り上げるメンバーがいますし、旅行先からでも「出るべき」と感じた会議に参加するメンバーもいます。「諦めたくないもの」を大切にしながら、どのように自分をコントロールしていくかという点も、ポストワークライフバランスにおいて大切な要素だと考えています。

くらしの中に考えを広げる機会があると、「夢」の捉え方も変化する

 次に、自分らしいワークライフインテグレーションを探求するため、共有したトピックの中で気になったテーマについて対話する時間をつくりました。学生全員の興味関心が一致したのは、キャリアと結びつけられがちな「夢」というテーマです。

 q&dの特集では、株式会社サクアバウト代表で『世界は夢組と叶え組でできている』の著者である桜林直子さんに、自分らしい夢の描き方について話を聞きました。

 この取材では、桜林さんが「夢とは『旗を立てること』。旗を立てることは得意な人と苦手な人がいるのは当たり前」「自分らしい夢に気づくには、日々のちょっとした『やりたいこと=欲』に気づくことが第一歩」「夢は仕事につながるものでなくても良い、仕事は時間の使い方の一つの要素であり手段」と語っています。

 ▲桜林直子さんを取材した記事はこちら

受験や面接の場でよく聞かれる「あなたの夢はなんですか?」という質問。今回参加した学生3人も、この質問をされるたびに悩み、考え込むことが多かったと語ります。

川上: 高校生のころは部活動と受験ばかりだったので、自由な時間がまったくなくて。「夢はなんですか?」と聞かれても、なんとなく職業の名前を答えていました。将来を想像したとき、自然と仕事と結びつけていたのだと思います。

小峯: 私も大学に入る前までは、夢や目標のことを考えると漠然と不安になることが多かったです。そのせいか、これまでは充実を感じられなかったのですが、大学生になって初めてそう思えたのが印象的でした。


大学生になってから、夢に対する捉え方やくらしは、どのように変わったのか。小峯さんは、桜林さんの「小さな欲に気づけることが、自分の夢を見つける第一歩」という言葉が特に印象に残ったとしながら、自身の変化について話してくれました。 

東京理科大学経営学部2年生の小峯愛華さん

小峯: 卒業後に目指すことは決めつつも、目の前の好きなことや面白そうなことに強くアンテナを張り、一歩踏み出すようになりましたね。また、同じ環境に住む身近な知人に気軽に相談ができたのも、これまでとの違いでした。
 
振り返ると、こうした日々の積み重ねが、人生の充実度につながっていたと思います。これからも自分の小さな欲ややりたいことに忠実でいることを大事にしながら、自分の夢を少しずつ見つけていきたいです。


小峯さんの発言に対し、原田さんは共感を示しながら、今秋からオランダの大学へ留学することになった経緯について説明します。
 
原田: 大学に入って周囲にいる人や環境がガラッと変化したことで、私も夢の方向性や捉え方が変わりました。SHIMOKITA COLLEGEには、海外の大学で学んだ経験のあるメンバーが複数います。
 
地元の名古屋にいたときは、「海外で学ぶこと」を考えたこともなかったです。ただ話を聞くうちに、「自分にも可能性があるのではないか」と思うようになりました。人との出会いによって、自分の当たり前が変わったんです。


夢を聞かれたとき、以前は「職業の名前」を答えていた川上さん。4月から大学生となり、くらしが大きく変化する中で、少しずつ考え方が変わっていったそうです。
 
川上: 大学1年生になって、何を食べるか、どこでアルバイトするのかを自由に選べるなど、選択肢が圧倒的に増えました。多様な人々が集う環境でのくらしも通して、「夢は職業だけでない」と感じるようになったんです。
 
最近は、「“心の世話”をしながら生きていきたい」と思うようになりました。人生に絶対的な正解はないので、自分はその状態で居続けることを目指したい。例えば、読みたい本のタイトルを眺めたり、つくりたい料理にチャレンジしたり、家庭菜園をしたり。そんな“心の世話”をしていられる幸せな状態を夢にしてもいいんだと、桜林さんの記事を読んであらためて気付きました。

東京大学文科一類1年生の川上礼志郎さん

最後に、モデレーターの湊さんが「不安なことや悩みがあったとき、一人で抱え込むと前に進まないですよね。多様なバックグラウンドを持つ人々と対話をすることで、新たな気付きや学びが得られるのだと思います。今日のお話を聞いて、SHIMOKITA COLLEGEではくらしの中にその環境が自然と生まれているため、3人が自分自身と深く向き合っている様子が印象的でした」と語り、q&d Talk Vol.2は幕を閉じました。
 
今回のレポートや第3回特集の記事を読んでいただいた感想があれば、ぜひTwitterで聞かせてください。ハッシュタグは、#ポストワークライフバランスとなります。
 
q&dでは、第4回特集「わたしとあなたの境界線」の記事公開が5月25日から始まっています。そちらもあわせて、ご覧になってもらえると嬉しいです。

 


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