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「本当に必要なの?」から「あってよかった」へ。子育て家庭の生活を劇的に変えたベビーモニター

子育て家庭の生活に、ひとときの休息を。海外向けに開発されたベビーモニターを国内向けに改良し、新規市場を開拓。別室にいる赤ちゃんを両親に代わって見守ることで、時間に追われる子育て家庭の毎日に“安心”と“ゆとり”の革命を起こしたプロジェクトチームに話を聞きました。

プロフィール

川上 浩介
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社

近藤 譲
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社

中山 智文 
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社

この商品が生まれた背景について教えてください。

川上:家庭のDIYでできるセキュリティ商品のなかで、特に売れていた屋内カメラ。これがどのような用途で使われているのかを分析した時に出てきたのが、「ペットの見守り」と「子どもの見守り」でした。そこから用途を特化したカメラを展開していく取り組みが始まり、2018年にはペットカメラをリリース。さらに、海外で展開していたベビーモニターに着目し、赤ちゃんの見守りに特化した商品として国内展開する検討を開始しました。

私自身が1人目の子育て真っ最中だったこともあり、先行で導入した海外向けの当社ベビーモニターを自宅で試用したところ、別室で寝かせている子どものことを気にせずに生活できる時間をつくることができ、それが私たち夫婦にとって大きなゆとりとなりました。この経験から、ベビーモニターが日本でも子育て家庭のお役立ちになれることを実感しました。

暗い部屋でも、赤ちゃんの様子をしっかり確認できる

近藤:最初にこのベビーモニターを提案された時は、「これ、大丈夫なのかな?」というのが正直な印象でした。私にも子どもがいますが、その頃にはもうベビーの時期は終わっていて、使う実感が沸かなかったこと。さらに、一部の方から「この商品大丈夫か?」「見守る必要なんかあるのか?」という意見が多く出ていたからです。

そんななか、5人のママたちにベビーモニターの体験談を語ってもらう企画を行ったのですが、その時のみなさんが「ベビーモニターがあることでこんな風に生活が変わった!」「この商品があってよかった!」と、とてもキラキラした目で語ってくださり、そこで初めて、この商品は売れるかもしれないと感じることができました。

「自分がもう1人いるような感覚になって気が楽になった」「家事などをしている時に赤ちゃんの泣き声の幻聴が聞こえなくなった」「集中してドラマを見られるようになった」といったママならではのリアルな声は、ユーザーに直接聞かなければ知ることもなかっただろうなと思います。

川上:「親は苦労しなさい」「ずっと子どもを見ていなさい」。昔の日本ではそれが美学のように言われていましたが、今は「楽育(らくいく)」という言葉も生まれて、親側の目線にも配慮することが大事になってきたように思います。

子どもがいちばん大事だけれど、親もちゃんと楽してくださいね、息抜きしてくださいねという新しい文化。そう考えた時に、自分が感じたインサイトというのは、結局、親側の視点だったんです。共働き、核家族世帯は日本でも年々増えています。子育て世帯のユーザーさんにほんの少しでもゆとりを感じてもらいたいという想いから、市場導入を決定しました。

開発やマーケティングで苦労したのはどのようなことですか?

中山:見てわかりやすい、触って感動する、人に教えたくなる、ということが根幹にある商品に育てていこうというのがそもそもの出発点でしたので、無線部分、映像や音声品質といった基本技術はさることながら、この商品に求められる機能の性能を出すことに注力しました。

機械に詳しくない方でも、箱から出したらすぐ直感的に使えるよう、たとえば、音の検知設定や子守歌の設定も、設定メニューからではなく、「SMARTボタン」からすぐに入れるようにしています。また、赤ちゃんの泣き声を検知して子守歌音を鳴らす機能では、赤ちゃんの泣き声以外の音に反応しないよう、泣き声に近い周波数をフィルターして検知するよう調整しました。

中山:赤ちゃんの動作を検知してモニター側に通知する機能は、当初、赤ちゃんとの距離、感度設定の2つを想定していましたが、ユーザーにわかりやすいように、感度設定のレベル数を増やすことで最終的に落ち着きました。

モニター側から操作するパンチルト機能は、どうしても無線の遅延があるため、モニター側の操作を止めてもカメラが少し動いてしまうという問題があります。そこで、モニター上にカメラがパンチルトのコマンドを実行中であることを示す矢印表示をすることで、違和感のない操作を実現しました。さらに、赤ちゃんが泣いた、動いたなどを表現するアイコンも意外と表現が難しく、決定までに何度も図案を検討しなおしました。

限られたドット数で、最適なアイコンのパターンが検討された

近藤:発売前に議論したのは、箱のパッケージです。パナソニックの商品は茶色い箱に入っているものが多かったのですが、少しかわいらしい感じにして。プレゼントにできるような箱にしたいという話をしました。

また当初は、ターゲットのセグメント分けのようなことはしなかったのですが、途中からどんどん販売が伸びていくなかで、売り上げが頭打ちになった時にやってみたのは、マンションに住む家庭をターゲットにしてみようということでした。一軒家だとリビングが1階で寝室が2階というのもあるのですが、マンション住まいだと「家が狭いからベビーモニターはいらないわ」という意見もあって。そこで、マンションで使うとこんなメリットがありますよというコンテンツを発信しました。

さらに、発売当初の「すべてのママ、パパに」という発信をだんだん尖らせて、パパ向けの発信をしてみたり、ベビーモニターを使ったママたちの生活がどう変わったのかをInstagramライブなどを通じて発信し続けました。

このプロジェクトによって生まれた商品や技術が、今後のくらしや世の中をどう変えていくのか、その展望をお聞かせください。

中山:技術観点というよりも、たとえばこういった単体の商品、これは「ベビーモニター」という名前ですれけど、使い方はお客さまの自由なので、たとえば、赤ちゃんの見守り以外にも、介護の見守り用など、いろんなアイディアで使ってもらえるような仕込みをしていければと考えています。

川上:本商品によって子育て生活のなかに自由な時間や夫婦の時間ができたというお声を数多くいただいておりますが、普及率は約10%に留まっており、9割以上の子育て世帯のお役に立てていないのが実情です。ベビーモニターはまだ市場ができたばかりの商品ですので、もっと多くの方に知っていただき、少しでも多くの方にゆとりのある子育て生活を送っていただけることが最初のステップだと考えております。

多くの方に使っていただきながらお客さまの声をいただき、日本の育児スタイルに合った商品に進化させていくこと。さらに当社のベビーモニターは電子レンジなどの生活家電からも影響を受けない無線を使っているため、将来的にはパナソニック全体として子育て生活をトータルサポートする発信なども検討していきたいと考えています。

MESSAGE

川上:「パナソニックってこういう考え方ですよね」「自分はパナソニックのなかでこうなりたいです」と企業側に考え方を合わせる方が多いですが、企業が求める人、一緒に働きたい人というのは、自分の考えを自分の言葉で言える人だと思うんです自分がどういう風にお客さまのお役に立てるかを自分で考え、自分なりに解釈して、自分なりの発信をしていける人に来てほしいというのが、僕から言えるメッセージです。

近藤:日本でいうとある程度知られている会社なので、目の前のチャンスはすごく広がっていますが、そのチャンスをつかみに行くのはやはり自分自身。「現場、現物、現認」と表現されることもありますが、やはり外に出て行動して、自分で確かめることが大事だと思います。

社内のなかにはお客さまから遠い部門もあるとは思いますが、どの部門に行っても、エンドユーザーを見据えて仕事をしていくという重要性を、この商品を通じて学ばせてもらいました。それを私自身がしっかり意識していくと同時に、今後は、先輩、後輩、上司関係なく、周りのメンバーにもそういった意識を植え付けていけたらいいなと思っています。

中山:仕事として技術者をめざすということであれば、今の世の中の最新の技術に積極的に関心を持って関わってくださいとお伝えしたいですね。

いろんな方面の技術に関心があると、設計面とか技術解析をする時にいろんなアイディアが閃いたり、大きな武器になりますので、いろんなことに関心を持っていただければと思います。また、私個人としては、ひとつの商品をつくり上げる時に、お客さまのことを思いながらつくりこんでいくことがいちばん大事だと思っています。

*記事の内容は取材当時(2021年10月)のものです。


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