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アドレスホッパーのZ世代と考える、「未来の定番」のつくり方 〜ADDress×Panasonic FUTURE LIFE FACTORY 共同プロジェクト〜(後編)

「未来の定番づくり」に取り組むパナソニックのデザインスタジオ、FUTURE LIFE FACTORY(以下:FLF)は、定額制の多拠点生活プラットフォーム「ADDress」を運営する株式会社アドレス(以下、ADDress)との合同プロジェクトをスタート。ADDressを利用するアドレスホッパーのZ世代と一緒に「未来の定番」となる家電づくりに取り組んでいます。

カフェオーナーや未踏ジュニアスーパークリエータ、起業家など、バックグラウンドの異なる若者たちは「未来の定番づくり」をどう捉えているのか。プロジェクトへの参画を通じて感じた本音を探りました。

(前編はこちら)

つくるだけでは、未来の定番は生まれない

ー今回、未来の定番となる新しい家電を考えてきましたが、パナソニックが未来の定番をつくり続けていくためには、どうしたら良いと思いますか。

高木:パナソニックだけで未来の定番をつくるのではなく、誰もが未来の定番をつくれるように開発基盤を整えたり、すでに未来の定番となりそうなくらしをしている人をスポンサードする、といったことを是非して欲しいです。
 
例えば、Appleは、プログラミング言語としてSwiftをつくっていたり、macOSやiOSの開発者向けにWWDCというカンファレンスを開いていたり、OSSにコントリビュートしていたりと、開発基盤づくりや開発者コミュニティへの貢献をしてますよね。その結果、開発者はAppleは自分たちのことを応援してくれている、という認識となり、結果としてAppleの商品がより使われるようになって、定番となる、といったことが起きている。そうした何らかのコミュニティに対する貢献をすることが大事だと思います。

井上:Appleの例に乗っかると、AppleはOSSにコントリビュートするだけではなく、自分たちのソースコードの公開もしています。そうすると、いろんな開発者がそのソースコードにコントリビュートできるようになり、自社だけではできなかったことができるようになり、アプリがどんどん改善されていく。

ー開発者に対してオープンになったり、サポートすることが、結果的に自社の目的の達成につながるということですね。

高木:ただ、大きい会社であるほど、この意思決定って難しいですよね。経済合理性が短期的にはないので。だからそれができているAppleやGoogleは企業として頭一つ抜けてる。
 
井野:そもそも「定番」という言葉を捉え直さないといけないのかもしれませんね。今までの定番は、誰もが簡単に使えることで、パナソニックはそれをつくり続けてきた。つくり手と使い手が分かれている状態です。でも、今は誰もがものづくりに携われて、もっとこうしたらよくなるんじゃないか、というアイデアがユーザーからどんどん出るはず。この先もその傾向は変わらないでしょう。
 
そうなった時に、ソースコードがブラックボックスになっているというのは、みんなのような若い人たちにとってはストレスであり、もう古い定番なのかもしれない。ハードウェアの世界におけるオープンソースのあり方がどうあるべきかはわかりませんが、そういうことはしていきたいですし、FLFでもD+IO(ドゥーイング アイオー)というプロジェクトでそれに近いことのチャレンジを始めています。

パナソニック FUTURE LIFE FACTORY 井野

小川:未来に向け面白いことを実践している人に対する支援は、結果的に企業の方向性や取り組みへの本気度を伝える大事な手段です。未来を考えていく上でそういう人たちへの支援は欠かせないですし、支援の仕方も考えていかなければならないなと思いました。

思想の流通が、「未来の定番」への参加者を増やす

ー前田さんは、いかがでしょう。

前田:そうですね、開発者ではなく、ユーザーの立場だと、生活者目線という視点は未来の定番をつくる上でこれからも大事にして欲しいなと思いました。生活者にとって良いものをつくり続けて、パナソニックだと気づかぬうちに、パナソニックの製品を使っている状態だと、定番になっていると言えるのではないかなと。実際、今の時点ですでにくらしに馴染むものをつくっていますよね。僕も自分の実家で使っている家電がパナソニックでしたし。
 
高木:今泊まっているAirbnbのドライヤーもパナソニックです(笑)

井上:最初に井野さんが、「Z世代とつながれていない」とおっしゃっていましたが、そんなことないと思うんですよね。多分、気づかないうちにパナソニックの商品を使っていると思います。
 
だから、普段のFLFやパナソニックの活動にもっと触れる機会があったら良いなと思ってます。FLFがこれまでつくってきたプロダクトって、未来の定番となり得るものじゃないですか。それに普段から触れられる場所があるとか。
 
前田:ソースコードや普段の活動を公開する時に、思想を伝えるというのも大事だと思いました。パナソニックって家電のイメージが強いので、家電に興味がない人は、「未来の定番づくり」の活動に参加してくれないと思うんです。
 
でも、思想が伝わっていれば、家電に興味がない人でも、そこに賛同する人が現れるはず。なぜ、ソースコードを公開するのか。なぜ、新しい家電をつくるのか。それは、今抱えている「悩み」でも良いと思うんです。そういった感情や思考への訴えかけとセットに活動していくと、パナソニックならではの、「未来の定番づくり」に近づくのではないかと思います。
 
鈴木:最近パナソニックが新しくブランドコンセプトとして掲げた「Make New」をテーマにしたプロモーションムービーを公開したり、コンセプトにそったメディアを立ち上げたりしています。

この辺りをもっと頑張らないといけないですね。例えば、スタートアップの人がそれを見て、その姿勢に共感するから一緒にやってみよう、と思う機会が増えると、未来の定番づくりのあり方も変わるかもしれない。

僕らがどこに向かっているのか、どんな姿勢で取り組んでいるのか、それをもっと外に伝えながら、「未来の定番づくり」をしていきたいと思います。

※ 本プロジェクトで提案するプロダクトコンセプトは、世界最大級のデザインコンペRed Dot Design Awardのコンセプト部門に応募しています。また、プロトタイプは9月に東京ビッグサイトで行われる、Maker Faire Tokyo 2022にて発表予定です。

執筆:イノウ マサヒロ
写真:鶴本正秀

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