小さいお店で小さい私に注がれたこと
ああこれは、小さい自分のお店を開くことなんや。
お客さんに顔と名前覚えてもろて、信頼してもらわなあかん。
そのためには、お客さんに信頼してもらえる仕事せなあかんな。
春の夕暮れ。仕事帰りの私は、会社から駅までまっすぐの道を歩きながら、ふとそう思った。社会人になって数週間のことだった。
大学卒業後、私は大手予備校の出版部門で働いていた。仕事は予備校で使われる教科書、模擬試験、書店に並ぶ問題集などの編集業務。編集といっても大手出版社のそれとは違い、予備校の先生たちが原稿を書き