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魚のおなかに触れてみた | TOUCH〜これからの10年〜

東日本大震災から11年目を迎える2022年。ソウゾウノートでは「TOUCH〜これからの10年〜」というテーマで、人と人をつなげ心にふれるコミュニケーションを届ける連載を実施しています。

第三弾となる今回は福島県在住の高校生、會田もえさんからの寄稿をご紹介します。幼いころに東日本大震災を経験した會田さんは、震災直後から10年間ずっと続けているダンスを通して心を癒し、心を育み、心をつなぐ活動を続けてきました。小学生のころに出会った一人の「偉人」から学んだ“気づき”は、いまも會田さんに大きな影響を与えているようです。そんな會田さんが、未来に向けていま想うこととは。

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エジソンだってもがいていた

私は、今日も水の中を泳いでいる。“手間”という水着を着て、陸からは見えない魚達のイキイキとした姿を見ている。



私は、小学生のころエジソンの伝記を読み込んでいて、読書感想文を書くほど大好きでした。そこには、エジソンが白熱電球を、蓄音機を、映画のもととなったキネトスコープを開発した「偉人」だと書いてありました。本嫌いの私のページをめくる手が止まりませんでした。もっとエジソンを知りたくて、いろんな本やインターネットでエジソンについて調べました。

 すると、エジソンの「スゴイ」だけじゃない一面を見つけました。それは、交流電流を開発したテスラに大人気なく嫉妬をするエジソンです。

 エジソンはテスラの才能にたいへん嫉妬していたようで、エジソンの会社で働いていたテスラに給料を払わなかったり、自分の開発した直流電流の優位性を保つために「交流電流は危険だ」と広める活動を活発にしたりしていたそうです。私はそのことを知って、「エジソンも私と同じ普通の人で、毎日を過ごすために必死にもがいていたのだなあ」と思い、同時に、あらためてそんな普通の日常の中でも、後世に残る発明をしたスゴイ人だな、としみじみと感じました。

新たな魅力を見つけるために。水たまりにダイブ

私たちのまわりには、いつもたくさんの深い深い水たまりがあります。その水たまりは、学問だったり、自然だったり、当たり前に存在するものです。水たまりはそばにたくさんあるけど、そこにダイブしようとする人はなかなかいません。

私は、「偉人」という水たまりの中にいる「エジソン」という魚を、陸から見ているときはその偉業しか見えませんでした。でも、本やインターネットでさらに調べるという“手間”の水着を着てダイブすることで、新たにエジソンの人間らしさにtouchすることができました。

いま、私たちは水たまりにダイブしなければなりません。そう思うのには理由があります。

私は福島県に住む高校生なのですが、思えば、いままで、なかなかない経験をしてきました。東日本大震災では当たり前の価値に気づかされて、コロナ禍では人と触れ合うことの喜びに気づかされて、入試では思考力・判断力・表現力が求められるようになりました。日常では、スマホがなければ自分で考えて、本で調べ、人に聞いて……とするのを、なんでも「スマホで検索」で、済ませてしまっていた自分に気づかされました。

これらのことが、陸にいる私たちに「ダイブしろ」と訴えているような気がしてならないのです。

どんどんどんどん技術や社会が前に進んでいくなかで、後ろを振り返る人がいてもいいのではないでしょうか。

この目まぐるしく変化する世の中で、私たちにいま求められている力は、当たり前にあるものや、もうなくなってしまったものにtouchして、「いいな」を見つけ出す力だと思います。

いままでは、いまあるものの改善点を見つけて改良して、新しい技術を開発して、ついに人間はクローンをつくれるような域まで達しました。でもこれからの社会は、自然から採れたものをそのまま食べて、手間をかけた良いものを使って、と自然と共生するような、ライフラインの整った“進化した原始時代”に戻っていくのではないかなと思いました。

いま私は、当たり前にあるもの、もうなくなってしまったものの新たな魅力を見つけるために、過去の偉人たちが積み上げた学問にtouchしてるんだなと思い、受験勉強の水たまりにダイブしています。

福島の復興の証として「海との対話」をテーマにした、インプロビゼーションダンス作品『海と跳ねる』


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